魔王様と遺跡の謎。


「ところで、なんでゲッコウはその遺跡ってのに行ってたんだ? 気になる事があるって言ってたが……」


「いやね、あっしらが以前当時の姫さんと姐さんとで行った時の事を思い出してたんですがね……」


 最初にゲッコウ達が行った時には特に気にして無かったらしいが、当時魔物がかなり溢れてその遺跡に群がっていたらしい。


「あの時なんで魔物達が集まってたのかがちょっと気になってたんでさぁ」


「そりゃアレだろ? 中に有ったっていう妙な玉っころに引き寄せられてたんじゃねぇのか?」


 玉っころ……? その時の状況は俺には分からないが、もしかしたらアーティファクトが安置された遺跡だったのか……?


 だとしたら何故ニポポンに?

 古都の民はこちらまでは来ていないんじゃなかったのか?

 初代ディレクシア王もこちらの大陸までは来なかったみたいだし、確かに違和感はある。



「で、結局その謎は解けたのか?」


「それが……あっしには分からなかったんでおずおずととんぼ返りして来たって訳でさぁ」


「なんだよ蛙使えねぇなぁ」


 サクラコの言いたい事も分かるけど……。


「まぁ責めてやるなよ。ちなみにその遺跡に有ったのはどんな物だったんだ? お前らが見つけて手に入れてるんだろう?」


「それが……」

「うん、まぁ……なぁ?」


 どうにもサクラコとゲッコウの歯切れが悪い。お互い目を合わせて気まずそうにしてる。


「実はあたしらそれ見て無いんだわ」


「どういう事だよ」


「あの時、プリンが何か見つけたって騒いで、あたしが駆け寄る前に……その……」


 サクラコはチラチラと俺の方を見てくる。

 視線は……俺じゃなくて、服……?


「あっ、そういう事か! もしかしてこの服がそこに有った物を食っちまったんじゃないか?」


「そう! よく分かったな。確かにあの時プリン……メアはそう言ってたよ」


 サクラコは未だにメアの事をプリンと呼ぶことがあるが、最初に会ったメアが今の俺の外見だったんだから仕方ないだろうな。


 慣れてもらうしかない。見た目なんて髪の色くらいしか違わないし、問題なのは呼び方だけだ。


 ……と、今はそんな事よりも。


「今ので確信したよ。その時メアが遺跡で見つけたのはアーティファクトだな。ガーディアンとか居たんじゃないか?」


「確かにでっかいのが居やしたぜ。なかなかやっかいな奴でしたな」


「あー、そんな奴居たな。めんどっくせーのが」


 やっぱり……こっちにガーディアンが居たって事はメアが見つけてマリスが食っちまったのがアーティファクトで間違いないだろう。


 そうなってくるとますます違和感があるな……。なんでニポポンにアーティファクトがあったんだ?


 そして、食われちまった以上確認のしようがないがそれはなんのアーティファクトだったんだろうか。


 わざわざガーディアンを配置して守っていたアーティファクトとなると意図的にここに隠されていた物、と考えるのが妥当だろう。


 だとしたらそれは誰が何のために……?

 何か重要な物だったんじゃないか? もったいねぇなぁ……マリスも基本的には俺、その時はメアの魔力を食ってたわけだから無理に食わせる必要は無かっただろうし、今はマリスの中にロザリアも居ないんだからそれは尚更だ。


 しかし今はもう無い物についてあれこれ考えても仕方ない。

 とりあえず他の荒神の力を使えるかどうかを探してみるべきだろう。


「さて、蛙とも合流した事だし今日は一晩休んで明日の朝カミヤシロ捜索の続きでもするか?」


 サクラコの提案に乗る形で今日は休む事になった。

 そして、その晩エッドの町に住む女性陣がわらわらと万事屋に集まってくるのだった。


「まさかショコラの言ってた事が本当になるとはな……」


「本当だったら初日の夜に来てもおかしくなかった。多分団子屋の女が意図的に師匠が帰って来たのを黙ってたんだと思う」


 なんでそんな事を……と聞こうとして辞めた。


 そう言えば思い当たる節があったからだ。ショコラがメイド達の相手をしている頃、夜も更けて俺はサクラコに部屋を宛がわれそこで寝ていたのだが、どこかの部屋が妙に騒がしかった。

 今思えばアレはサクラコの部屋だったのではないか?

 団子屋の娘がサクラコに一人で会いに来ていたのでは……?


 本当にサクラコといいショコラといいろくなもんじゃねぇな。


 俺も自分の身を守らないと。

 サクラコはともかくショコラは気をつけないとほんとにまずい。

 出来る限り二人だけになるような事がないようにしよう。


 蛙はまだ遺跡の事が気になっているようだったが、翌朝は俺達と一緒に行くというので今度はニポポン探索隊フルメンバーでカミヤシロをめぐる事になる。


 ……のだが、ニポポン大陸を縦断して片っ端からカミヤシロを調べて行ったものの、ほぼ成果は無かった。


 エッドから南へ下るように、サクラコが知っている場所を一つ一つ調べていった。


 そして、その都度チャコの顔色が暗くなっていく。


 彼女にとっては当時の仲間がもうこの世にはいないという再確認をして回っているような物だからな。


「もしかして……あだすが最後の一人なんだべか……」


「万が一、お前が最後の一人だったとしても……もう一人じゃないだろ」


「だーりん……あだす、だーりんに会えて幸せだべ」


 苦労はする事になるだろうから素直に喜べないな。

 純粋な好意っていうのは、ちょっと後ろめたくなってくる。


 せめて、もう一人くらい見つけてやれたらいいんだけどな。

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