魔王様とゲコゲコランド。
「しっかしニポポンは平和だなぁ。魔物はともかくとして魔族や古都の民の気配も感じないし」
アーティファクトの件だけは少々気になるけれど。
古都の民からしたらユーフォリア大陸を人間達から取り戻すのが目的だと言っていたしニポポンみたいな辺境の島国は眼中に無いんだろうな。
ニポポンで何かの痕跡を見つける事があってもそれは大抵ロンシャン絡みの事っぽいし、特にニポポンに害を無そうとしているような感じも無い。
ただ単に荒神の痕跡を探しに来ているだけだろう。
このままニポポンは平和な国であってほしいもんだ。
ユーフォリアは今……というかこれからいろいろ大変な事になっていくだろうし、ロンシャンは既に大変な事になっちまってるからな。
そもそもロンシャンはニポポンよりも国土がかなり広い癖に大都市はロンシャン帝国のみというのが不思議でならない。
ロンシャン帝国がどーんとど真ん中にあってあとはそれを取り囲むように小さな集落がある程度。
他は手付かずだったり、鉱山だったり……。
もしかしたらロンシャンを調べた方が荒神の生き残りが居るんじゃねぇのか?
でもよくよく考えたらニポポンまで足を延ばして来ている以上ロンシャン自体は調べ尽くされているんだろうな。
だからこそ望み薄であれニポポンまで来ている訳で……。
「……それにしてもこりゃすげぇな」
ニポポン大陸を北から南へと縦断しながらカミヤシロを調べてきたが、これまでとは桁違いにバカでかいのが視界に入って来た。
「ここはギズモって言ってな。あそこに見えるギズモオオヤシロはニポポン最大のカミヤシロだぜ」
少し離れた所からでも建物が見える。
今までのカミヤシロの何倍もありそうな大きさの建物がそこにあり、編み込まれたようなとてつもない大きさの綱が飾られていた。
「ここは結構綺麗だけど誰かが管理してるのかな?」
目の前まで到着するまでの通路もきちんと手入れをされていて、管理者が居るであろう事は間違いなかった。
「前に来た時はよぼよぼの婆さんが一人で頑張ってたけどな……あの時よりも管理が行き届いてる感じすらあるぞ」
サクラコもあちこちを見回しては感心していた。
「あの……ご参拝の方ですか?」
ふと誰かに声をかけられ、そちらを振り向くと……。
白と赤の巫女服に身を包んだ……。
ピンク色の蛙がいた。
「ゲコッ!? ゲコ美さん!?」
「あぁっ、そんな……まさか貴方は……フロザエモン様ではありませんか……! よくぞ
ご無事で……」
「それはこっちの台詞ですぜ! てっきり……ゲコ美さんはあの崩落と洪水で亡くなってしまったとばかり……」
「私も……フロザエモン様はもう……二度と会えないのだと」
「ゲコ美さんっ!!」
「フロザエモン様っ!!」
ひしっ!!
「おいおいあたしは今何を見せられてるんだ……」
「俺に聞くなよ……」
「おにぃちゃん、蛙と蛙は放っておいてさっさと先に行こうよ」
ショコラが無視して先に進もうとするが、さすがにそれはちょっと待て、と止める。
「……もしかしておにぃちゃんピンク蛙までハーレムに加えたいの……?」
「ちゃうわい! まったく……このゲコ美ってのがここの管理をしてる可能性が高いだろ。だったら話を聞いておいた方がいい」
「……確かに」
何やらゲッコウとゲコ美の二人はかなり昔に死に別れたと思い込んでいたらしい。
それがこんな所で運命的な再会を果たしたとかでお互い涙を流してゲコゲコ共鳴している。
「おい蛙。もしかしてそのピンクのが前少し聞いた例の……」
「へい。ゲコ美さんです。あっしの最愛の人ですぜ……守れずに死んでしまったと思っていやしたがまさか……まさか再び出会えるとは……! 今は敵と言えど神に感謝したくなってしまいやすな」
「フロザエモン様、神が……敵とはどういう事なのでしょうか? まさかフロザエモン様もここを荒らしに……?」
……ん? 何か雲行きが怪しくなってきたぞ
「ゲコ美さんとやら、俺達が敵って言ってる神はニポポンの神様じゃねぇよ。ユーフォリアで暴れてるどうしようもない馬鹿の話さ」
本当に、どうしようもない馬鹿のな。
「そ、そうでしたか……それにしてもフロザエモン様……私が居ない間に随分お綺麗な方々ばかりはべらすようになられたのですね」
「ご、誤解ですぜ! あっしはもうただの浪人。むしろあっしがこの人達のお手伝いをさせて頂いている状況でさぁ」
「フロザエモン様が……浪人? そう、ですか……もうあれから……ゲコゲコランドが崩壊してから随分時が経ちましたものね」
サクラコが額に汗をたらしながら俺の方をじーっと見てくる。
「我慢しろ」
「くっ……!」
サクラコはきっと今にも大声で突っ込みたいんだろう。握りしめた拳が震えている。
いや、俺だって突っ込みたい事はいくつもあるよ?
そもそもゲコゲコランドって何? なんだその蛙の王国みたいなの。しかも話聞く限りゲッコウってそこの偉い人だよね?
「しかしあたしが蛙の取り巻き勘違いされたのが許せん……!」
分かる。それは俺も許せん。
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