魔王様は同じ失敗はしない。
「ふぅ……ふぅ……酷い目にあった……」
「何言ってるの? おにぃちゃんには得しか無かったでしょ? 嬉しかったって正直に言えばいいのに」
俺達はあれから慌てて脱衣所まで逃げ、今はやっと服を纏ったところだった。
ショコラは依然として素っ裸だが。こいつはもう少し恥らいと言う物を知れ。
「お前のせいで私は……私は……」
「アシュリーだって絶対喜んでた筈だよ。おにぃちゃんと距離を縮められて良かったね」
我が妹ながらこいつはかなりヤバい。
何がヤバいって、今こいつが発言していたように俺もアシュリーも喜んでいたと信じて疑わない所だ。
「ばかっ! お前は乙女の純情をなんだと思ってやがるんだ! こういうのはだな、もっと……そう、もっと順序と段階を踏んで……」
「なんで? 自分からモロに見せつけてたくせに」
「ちっ、ちが……っ」
「ショコラ、そのくらいにしてやってくれよ……俺だってかなりいっぱいいっぱいな状態だったんだぞ」
「そうだろうね。何かがいっぱいいっぱい」
「わかったお前もう黙れ」
これ以上こいつの話を聞いているとアシュリーがパンクしてしまう。
「二人とも楽しんでたっていう証拠がある」
……なんだと?
「嘘だっ! 私は、楽しんでなんか……」
「アシュリーは皆に気付かれずにおにぃちゃんに裸を見せつけて露出プレイを楽しんでたし、おにぃちゃんはアシュリーとの特殊なプレイを楽しみつつあわよくば他の女の子の裸を見ようと思って、その企みは成功したんだよ。二人ともおめでとう」
「「いい加減にしろ!」」
俺とアシュリーの言葉がハモった。
……が、その反応を見てショコラはふんぞり返ってドヤ顔。
なんだこいつの自信満々な様子は……。
「じゃあさ、どうして二人とも転移しなかったの?」
「……あ?」
「……あ。」
ゆっくりと、俺とアシュリーが顔を合わせ、お互いの意図を疑い始める。
「お、お前まさか本当に俺に見せつける為に……?」
「馬鹿言うな! アンタこそどさくさに紛れて覗きを楽しんでやがったのか!?」
「まぁまぁ、いいじゃん二人とも楽しかったでしょ? 良い思い出来たやっほーい。って事でここは納得したら?」
べ、別に俺はそれでも構わん。
そう言っていい程いい思いはさせて頂いたので……。
「セスティ……なにニヤニヤしてやがる……やっぱり、お前……」
「違うって言ってるだろ! 信じてくれ」
「いや、信じられるか。お前だって転移で逃げる気になれば私に見つかる前に逃げられた筈だろ! だったら、や、やっぱり私の裸を見たかったのか……? というかどこまで見た!? 返答次第では……」
「おにぃちゃんは至近距離で全部見てるよ。アシュリーだって分ってるでしょ? おにぃちゃんは自分は無害そうな振りして実はド変態でいつだってみんなの身体を狙ってるんだよ」
「頼むからショコラは黙っててくれ!」
こいつが発言する度に面倒が増える!!
確かにアレなトラブルが起きた時は良い思いしたな~とか思う事はあるけどもっ!
だからと言ってそんな年中発情しとらんわこの色ボケ女め!!
「やっぱり……そう、なのか? そんなに見たいなら……そう、言ってくれれば……」
ちょっと待って。アシュリー、そんな微妙な態度取られるとこっちの立場が悪くなる上にどう反応していいか困る!
「……これはどういう状況じゃ?」
今一番聞きたくない声が聞こえてしまった。振り向きたくない振りむきたくない。
「なんや? これからみんなで風呂入るんか? だったらうちも一緒に入るわ♪ メリニャンも一緒やで♪」
「ば、バカを言うでない! セスティがおるではないか!」
「だからやで。一緒に入って夫婦の距離を近づけるんや! 今こそ勝負やで!」
それ自体は悪い話じゃないんだけどめりにゃんにそういうのはちょっと早いと思います! 汚れた大人の甘言に乗せられては行けませんよ!
「う、うむ……確かにのう……」
なっとくしたらダメだろ!
「残念だけど、一緒に入るのはやめといた方がいいよ」
まさかのショコラが俺の助けに入ってくれた。
……いや待て。そんなはず無いだろうショコラだぞ?
「おにぃちゃんは今の今まで温泉に入ってたんだから。私も一緒だったしアシュリーも一緒にね」
「セスティ……? これはどういう事なのか説明してくれるかのう?」
めりにゃんがにっこりと笑っている。
うっすらと開かれたその目は笑っていない。
こっわ……。
「めりにゃん、聞いてくれ……これには深い訳が……」
「おにぃちゃんは風呂に潜んでいろんな女子の裸を覗いていたんだよ。アシュリーはそれに気付いて二人で露出プレイしてた」
「だって……セスティが、喜ぶならそれもアリかなって……」
アシュリーさん!?
「待って! ほんと違うから! ショコラの言う事間に受けないでめりにゃん! 俺を信じてーっ!」
「……いろんな、女子……?」
あっ、ダメだ俺もうオチが読めたぞ。
「いいお湯でしたねナーリアさまっ♪」
「そうねステラ……おや、皆さんお揃いでどうかされましたか?」
「……ほう?」
めりにゃんから今まで感じた事が無い程のプレッシャーを感じ、俺は……。
今度こそ、ちゃんと転移で逃げた。
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