姫魔王は平和の象徴となる。
「さてセスティよ。次はどこじゃったかのう?」
「順当に行くならエルフ達の所だろうな。多分奴等なら話が早いだろうし」
出来ればここはささっと終わらせてナランの方へ行きたい所ではある。
だが、めりにゃんの手を取り転移した先に待っていたのは……。
「な、なんじゃぁこりゃぁ……」
「こ、これは凄いのう……圧巻じゃ」
あ、あのエルフ共……恥ずかしいもん作りやがって……!!
俺達はエルフの集落がある場所からちょっとだけ離れた場所。
本当は直で入ろうと思ったんだけど座標がズレた。
俺の精度だと、今後建物の中とかに直接飛ぶのはやめておいた方がいいかもしれない。
気が付いたら壁の中に埋まってたとか笑えないし。
俺やめりにゃんならその状況でもどうにでもなるけれど、万が一王城の壁にめり込んで脱出した際に破壊なんてしようものならいろいろめんどくさい展開になってしまう。
……と、今はそれより俺達の目の前にあるアレだよアレ。
ここからでも天高く聳え立つ俺の雄姿が見て取れる。
正確には俺というよりこの姿、だが。
「あのエルフ共俺の石像なんて建てやがって……文句の一つも言わなきゃ気が済まんぞこれは……」
「いやいや、あれはなかなかに立派な物じゃぞ。あれだけ大きい石像などなかなか作れるものではないじゃろ? 是非魔物フレンズ王国にも同じ物が欲しいのう♪ 儂も一緒のやつを……」
めりにゃんは目をキラキラさせながらその石像を見上げている。
こんなんあったら恥ずかしいだろうが……。
俺は文句を言う為にエルフ達の集落へ足を踏み入れた……のだが。
「どうした事じゃ? エルフ達はどこにいるのかのう?」
「……これは、おかしいな」
エルフ達の姿が一切見えない。ここには誰も居ない。
集落のど真ん中に俺のバカでかい石造が建てられていて、周りには家屋が幾つもあるというのに……。
ここには人の気配が存在しない。
「せ、セスティ……これは?」
「ちょっとまずい事になってるかもしれない。ちょっとアシュリーを呼ぶぞ」
めりにゃんの返事を待たずに俺は通信機でアシュリーに連絡を取る。
「アシュリー! 聞こえてたらすぐに来てくれ! 場所はエルフの集落だ!」
「直接迎えに行った方が早いのではないか?」
めりにゃんの言う事も最もなのだが、多分アシュリーならすぐに……。
「まったく……こっちは研究の真っ最中だったってのに急になんなの……? しかもこんな場所に……あんたからの呼び出しじゃなければ絶対に来なかったんだからね?」
アシュリーが両手を後ろに回しながら妙にそわそわしつつ現れた。
「浮かれてるところ悪いんじゃが儂もいるのを忘れるでないぞ」
「ばっ、誰が浮かれてるって? そもそもなんで私が浮かれなきゃならないのよ!」
相変わらずアシュリーはツンデレモードが抜けてないようだが、今は細かい事を気にしてる場合じゃない。
「アシュリーが、おにいちゃんに会えて、だよ」
「ひぃっ! なんでアンタがここに居るのよっ!!」
アシュリーの背後からにゅっとショコラが顔を出した。
「おぉ、ショコラも来たのか。ちょっと今面倒な事んいなってるかもしれないから力を貸してくれ」
「わかった」
相変わらずショコラは何を考えてるのか分からないような無表情で、しかしアシュリーをじっと見つめながら口角を少し上げた。
こいつ楽しんでやがるな……?
「ちょっと待ちなさい! 私はついさっきセスティに呼ばれてきたのよ? なんでショコラがここに居るの!?」
「……私は常におにいちゃんの通信を傍受してる……」
こっわ。
「こっわ! 馬鹿じゃないの!?」
気が合うなアシュリー、完全に同意見だ。
「アシュリーみたいな悪い虫が付くと困るから私が見張ってる」
「ば、馬鹿言わないでちょうだい! そもそもメリニャンやロピアだって居るでしょうが!」
「めりにゃんは奥さんだからいい。ロピアも害がないから別にいい。アシュリーは性格に難があるからダメ」
「ムキィーッ!!」
「待て待て落ち着けアシュリー。お前が荒れ狂ってると話が進まねぇんだ」
じたばた暴れ出したアシュリーを後ろから羽交い絞めにして動きを止める。
「ちょ、ちょっと……急に抱きしめるとか卑怯よ」
おい、そうじゃないだろ……。どうしてアシュリーがこんな急に色ボケしちまったんだ。
「のうアシュリー、儂は別にお主がセスティの愛人になるのは止めはせんよ? じゃからとりあえず落ち着いて今はこやつのお願いを聞いてやってくれぬか」
あぁ……その愛人ってところはどうかと思うけれど本当に良くできた奥さんだわ。
「そ、そう……。それなら、考えてあげない事もないわ。私に何をさせようっていうの?」
「ダメ、ゼッタイ。アシュリーが愛人になるんだったら私だって問題無いはず」
「問題大ありだお前は妹だろうが!」
ダメだショコラまで一緒に来たせいで戦力どころかカオスになって話が進まねぇ!
「なんでショコラはそんなに私を目の敵にするんだよ! でもね、ちょっと遅かったんじゃない? 私達もうこういう関係だからっ!」
俺の手を離れたアシュリーがくるりとこちらに向き直り、唐突にキスされた。
というより勢い良すぎて顔面同士が激突した。
「アシュリー……許すまじ」
「つ、妻の前でなんという破廉恥な!!」
うおぉぉぉ……モテるのは嬉しいが今じゃなくていいだろ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます