姫魔王と二人の相棒。
「しかしプルットめ、なかなか話の分かる奴じゃったのう?」
「……そうだな。予想外の成果だよ」
こっちからしたら物品をどこかに届ける事っていうのはそんなに大変な事じゃないけれど、普通の人間達にとってはそれが出来るっていうのがどれだけメリットになるかっていうのがよく分かった。
しかもプルットのようにそれこそユーフォリア大陸中に取引先が居て、いろいろな商品をあちこちに輸送している立場ともなるとそこの部分にかかるコストも大きいのだろう。
勿論注文相手がきちんといる場合については輸送費も請求できるだろうが、わざわざこちらから売り込みに行くために輸送する場合その費用は完全にプルット側にかかって来る事になる訳で……。
例えば俺達だったら物品だけではなく、必要があれば人材ごと移送する事だって出来る。
俺達の国には魔法特化型の魔物も居る。
人を二人程度転移させられる魔法が使えれば物品の移送には十分だろう。
それなら十分にこちらで人材を用意できるし、プルットの要求にもこたえられるはずだ。
そして何より、プルットは俺達に対して新たな商売の提案までしてくれた。
リャナの町を中心に、ナランや他の同盟国にて輸送業をやってはどうかと。
普通の輸送業者を苦しめたい訳では無いので、住み分けをする為にあえて高額に設定。
普通に移動や物品輸送をしたい人達は今まで通り通常の業者を使い、急いでいたり金を持っているセレブな連中を相手にする。
これは俺達の国にとって重要な収入源になり得る。
出来れば低所得者達向けにも何か一つ仕掛けたい所ではある。
俺達の国が成金共に媚びるだけの国だと思われちゃたまらんからな。
「難しい顔をしとるのう? 何かプルットとのやりとりで問題でもあったのか?」
「いや、そうじゃないんだ。むしろそれ以外の事を考えてたんだよ。これからの魔物フレンズ王国の在り方ってやつをな」
「ふむ……なるほどのう。儂には難しい事は分からんが、儂等に出来る事をやるしかないからのう」
出来る事、か……。じゃあ考え方を変えて、俺達に何が出来る?
俺達に出来る事と言えば、通信機を使って連絡、転移アイテムによる移動、及び魔法による転移、転送……。
待てよ? そうか、物品や人の移送の事ばかり考えていたが、ほんの小さな物だって送る事が出来るじゃないか。
例えば手紙。
手紙を町から町へ送る程度なら低価格でやっても問題あるまい。
現状この国で離れた場所とやり取りするには高い金を出して通信機をお互いが購入するか、直接訪ねるかが主流で、手紙などのやり取りは可能ではあるが時間がかかるのが問題だった。
俺達は庶民相手にそれを埋めてやればいいのか。
ついでに言うなら通信事業だって始める事も出来るだろう。
その辺についてはいろいろ詰めていく必要があるが……。
とにかく、ディレクシアが動いてくれている訳だから俺達の認知というのは広がっていくし、俺というプリン・セスティを広告塔にして広めていけば……これは割と行ける気がする。
「なんだかセスティ楽しそうじゃのう?」
「そう見えるか? いろいろ未来のビジョンが見えてきたんだよ。自分の国が、魔物達の国が人間世界に溶け込んでいくのが楽しくて、嬉しいのさ」
「……儂は、本当にお主が夫になってくれて良かったと……心から思うておるよ」
そう言ってめりにゃんは俺の身体に身を寄せてきた。
「おぉ……なんだ? 今更だな……。でも俺もさ、昔から人間と魔物ってどうにかして共存出来ないもんかなって考えてたんだよ。それがこうやって実現しそうなのも、俺が魔王やってられるのも全部めりにゃんのおかげだからな。俺もめりにゃんが嫁になってくれて嬉しいよ」
まさか結婚する事になるとは全く思ってなかったけどな……。
別に結婚が嫌な訳じゃない。めりにゃんだって好きだし可愛いし。
ただ、自分が結婚して身を固めるなんて未来を想像した事が無かっただけだ。
最初は本当にこれでいいのかと迷ったり悩んだりもしたけれど、後悔は無い。
だってその相手がめりにゃんだから。
俺の相棒が俺の伴侶になっただけだ。
めりにゃん以上に自分の事をさらけ出せる相手は居ない。
メディファスは別だしカウントする気も無い。あいつはただの覗き見ストーカーみたいなもんだからな。
『相棒と言ってくれたのは嘘だったのですか? 騙された。我は弄ばれたのですね』
黙っとれ。
勿論めりにゃんとの各地周りに出た時にメディファスも持ってきてはいる。
アシュリーの時程面倒な事になるとは思えないし、一応な。
『相棒を連れていく理由が、一応、なのですか?』
「はいはい。お前は頼りになる相棒だよ。わざわざ言わせんな」
『……』
こうやって直接的に褒めてやるとすぐに照れて黙るあたりが面白い奴なのだが勝手に心を読むのだけはそろそろ本当に辞めてほしい。
俺だって恥ずかしい事を考える事だってあるんだぞ?
『それは主に女性関連の事ですね。問題ありません。我は相手がアシュリー以外ならば口を出しませんので主が頭の中でどれだけ変態的な妄想をしていても気にしませんよ』
大きなお世話だこんちくしょうめ。
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