魔王様に芽生える殺意。
「どう? これで気は済んだ?」
「いやいや。こんなもんじゃ終わらないよ!」
とりあえず次は気を失うくらいぶん殴ろう。
意識を失わせる事が出来ればしばらく考える時間ができるしね。
「……はぁ、貴女の頭の中は筋肉で出来てるんじゃないの?」
ロザリアに次の方針を告げると、そんな酷い事を言われた。失礼にも程がある。
「だからさ、一瞬でいいから魔族王の動きを止めてよ」
「はいはい。もう好きになさい」
棺桶から完全に這い出してきた所を狙って全力ダッシュ。
そのまま勢いを殺さずにボディーブロー!
「おっと、そんな攻撃が通るとは思ってないわよね?」
あっさりと片手で受け止められてしまう。
「勿論だよ! まだまだぁっ!!」
ひたすら殴り掛かると、今度は両手を使って私の攻撃を掌で受け始める。
「あのねぇ……貴女の馬鹿力を何度も受け止めてたらそれなりに痛いのよ……!? いい加減に……」
「今っ!」
魔族王が私の攻撃にうんざりして来た所でロザリアがよく分からない魔法を使って魔族王の腕を拘束する。
バラの蔦のような物が彼女の身体をぐるぐる巻きにしていた。
「なっ」
「ぶん殴る!!」
きっとあの拘束なんて数秒しかもたないだろう。
でも私ならその数秒の間に五十発はその顔面に拳を打ち込める。
「おりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃやりゃりゃりゃりゃーっ!!」
魔族王の顔面から摩擦で煙が出る程に、私の拳が拘束で何十発も叩き込まれていく。
「どりゃどりゃどりゃどりゃぁぁぁっ!! オラオラオラオラオラオラァっ!!」
まだまだ!!
魔族王は地面に倒れ、私の攻撃によりどんどん地面にめり込んで行く。
ラストスパートをかけようとしたところで彼女を拘束している蔦がピリピリと千切れ始めた。
「無駄無駄無駄無駄ァっ!!」
「ちょ……ちょっと! ……いい加減に、しろぉぉっ!!」
蔦がはじけ飛び、彼女が私の腕を振り払う。
そして彼女は地面の中から飛び出すと、顔を抑えてその場に蹲った。
結局意識を飛ばす事は出来なかったか……。
だけど、この様子を見る限り多少はダメージが通ったのかもしれない。
「……このっ! 脳味噌筋肉女がぁっ! 私の顔面がボコボコじゃないの……」
「くらえっ!」
私はその隙を見逃さずに飛び蹴りをかます。
「ちょっと、待ってなさいこの馬鹿っ!!」
魔族王が地面に手を当て、私の目の前に巨大な土壁が現れる。
そんなもの普通だったらぶち破れるんだけど、どちらかと言うと私の身体を下から持ち上げるような形で壁が現れたので一気に身体が上空へ持っていかれてしまった。
「うわわわっ!!」
その土壁が上昇をやめた頃、眼下では魔族王がこちらを睨んでいた。
「顔をもとに戻してる最中に攻撃してくるなんてさすが野蛮人はやる事が違うわね」
「だったら今度は元に戻せないようにしてあげるわ」
魔族王の背後に、いつの間にかロザリアが立っていた。
彼女の首を鷲掴みにしてみちみちとねじ切ってしまう。
頭がぼとりと地面に落ちていくのを私は呆然と眺めていた。
慌てて土壁から飛び降り、二人の元へ。
「ちょっと! いきなりなんて事するの!?」
「貴女のやり方では勝てない。徹底的にやらないと……それにほら。見てみなさい」
私の足元には魔族王の頭が転がっていて、こちらを睨んでいる。
この程度どうという事もないらしい。
「せっかく直したばかりなのに……本当に妬ましい程の短絡さね……いつもそうやって力づくですべて解決して来たんでしょう?」
う、それは否定できない。
「貴女達に少し教えてあげるわ。そもそも私の存在自体が別次元だという事をね!」
パァン!!
勢いよく、足元で魔族王の頭がはじけ飛んだ。
「……えっ?」
「いや、何かしそうだったし先にぶっ殺そうと思ったのだけれど」
ロザリアがまだ喋ってる魔族王の頭を何かの魔法で破裂させた。
これだけ粉々になっちゃって大丈夫なの……?
「うふふふ……ふははははは……!! 愚かな子達。私がその程度で負けるはずがないのにねぇ」
どこからともなくそんな声が聞こえて来たかと思うと、残っていた魔族王の身体が砂のようにサラサラと崩れて消えた。
そして、強い風が上空に向かって吹き上げ、一点に集まり再び魔族王としての姿を形作る。
「貴女方とはそもそも造りが違うのよ」
これがメリーの身体を手に入れた事による恩恵というやつなのだろうか?
肉体にアーティファクトが同化しているのと、身体そのものがアーティファクトなのとではそんなに差があるの? 私にはよく分からない。
「さぁ、そろそろ本気でこの国を落としてあげるわ」
そう口にした魔族王は両手を広げ、膨大な魔力を空へ向かって放った。
「何を……?」
「バカ! 何を呑気に……この国の上空には今結界が張られているのを忘れたの!?」
ロザリアの言葉にやっと状況を把握したが、既に遅かった。
魔族王が放った魔法は、上空の結界に直撃すると、無数の光の矢のように王国中へ降り注いだ。
私とロザリアはなんとか城に向かってきたそれを数本防いだものの、残りは国中を炎に包む。
……これはもうダメだ。
「やっと分かったみたいね。全力でやるわよ?」
「……そうね。こいつは、本格的に殺さなきゃダメみたい」
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