お姫様と可哀想な魔族達。
「ぎゃぁぁぁぁっ!! ぎぎぎゃっ!! あぁぁぁぁぁぁっ!!」
騒ぐ魔族の耳元に口を寄せて一言だけ呟く。
「うるさい」
「ひっ!」
魔族の癖に目から涙、口から涎をだらだら垂らしながらも、必死に声を押し殺す。
「……偉いわぁ。ちゃんと静かに出来るのね。貴方、名前は?」
「ぐ、グレイズ……」
「そう。グレイズ……とってもいい名前ね? じゃあ……」
私は残りの魔族達をぐるりと見渡して、告げる。
「このグレイズを助けたいっていう人が居たら名乗り出て。そしたらグレイズを開放してそいつで遊ぶから」
……誰も返事はしない。
恐怖に染まった瞳を向ける物、ニヤニヤと笑っている者様々だったが、この状況をどうにかしようと思う者は誰一人としていないらしい。
「ねぇグレイズ? みんな薄情ねぇ? 貴方の命なんてどうでもいいみたいよ?」
「そ、そんな……頼む、頼む誰か! 誰か助けてくれ……っ!!」
「そんな頼み方じゃ誰も貴方を助けてくれない。誰も貴方の命がどうなろうと気にならない。という事は貴方の命に価値なんて無いのよ。ここで死んでも誰も困らない」
「嫌だっ! 嫌だ嫌だいやだいやだいやだ! 死にたくない!! お願いだ……たすけてくれ……」
「……残念♪ みんな貴方がどうなるか見ていたいらしいから続けるわね。そんなに生きていたいなら最後まで声を出さずに堪えてみなさい」
私はグレイズのもう片方の腕をゆっくりと撫でた。一度撫でると表面が薄く削れていく。
それを繰り返し、出来る限り薄く薄く削り取るようにしてだんだん彼の腕が細くなり、骨が見えて、自慢の骨刃がどうやって生えているのかも確認できるようになって、それも構わずじょりじょりと削り取っていく。
グレイズは……その様子を目を剥いて見つめながら、歯を食いしばっていた。
「……あら、貴方凄いわね。本当に声を出さずに堪えるなんて大したものよ」
「じ、じゃあ……」
「でもほら、手は二本、足は二本あるでしょう? 私はこの全部でいろいろ遊ぶつもりなのよ。まだまだ終わらないから覚悟してね?」
「いっ、嫌だぁ……もう、無理だ……今だって、いだくで……いだぐてどうにかなっちまいそうだ……」
どんどんグレイズの声が小さくなっていく。
涙は量を増し、身体は小刻みに痙攣をおこす。
そろそろ頃合いかしら。
「ねぇ、貴方は本当に、それでも生きていたい?」
グレイズは一瞬だけ何か言おうとして、ゆっくり目を閉じ、首を左右に振った。
「ふふっ。聞いてるんだからちゃんと答えなさい」
ぶすぶすぶすっ。
今度は太ももから膝のあたりをトントンと指でつついて小さな穴を開けていく。
「……っ!! ぐあぁぁぁぁ……た、頼む……お願いだ。お願いだから……」
「うん。お願いだから、何?」
「こ、殺して……」
「はいはーい♪ よく言えました♪ ……じゃあ貴方は殺してあげない」
「な、なんでぇぇ……?」
もう顔ぐっちゃぐちゃ。感情があっちこっち行ったり来たりして精神崩壊起こしちゃってる。
もう痛みに耐えきれず早く楽になりたくて仕方ないみたいだけど、私がなんで殺してあげないかと言えば……。
「そんなの楽しいからに決まってるじゃない♪」
「あ、悪魔……」
「……今なんて言った?」
グレイズの首を掴んでいた手に力が入る。
「ぐばばっ……」
「ぐば、じゃなくてなんて言ったか聞いてるのよ」
ごぎゃり。
「……あっ」
妙な音がして、グレイズの身体がぐんにゃりと力を失う。
しまった。
ついうっかり殺してしまった……。
ポイっと地面に放り投げると、その表情は、とても安らかだった。
楽に殺してしまうなんて私もまだまだね。
あんなのと一緒にされたくらいで力の加減が出来なくなってしまうとは情けない……。
「そろそろいいかい?」
残った魔族の中から一際大きい身体の、人型に近い魔族が一歩前へ出た。
「ええ。終わったわ……最低な気分」
「すぐに楽しませてやるよ」
「貴方が? 私を? ちょっと今機嫌悪いからきっと無理よ。楽しむ間もなく殺しちゃうわ」
「言ってろ。俺はそいつとは違うぜ?」
「どう違うって言うのかしら?」
私は自分に対するイライラを隠しもせず、ただ八つ当たりの相手を求めて目の前の魔族へ歩き出した。
ただ、まっすぐ正面から歩いて向かう。
「俺様はグルジエフ。まずは挨拶代わりだ……受け取れっ!」
ムキムキの身体だったから力で押し切るタイプかと思えば、その拳には魔力が込められていた。
魔法闘士って所だろうか?
私の拳の何倍もの大きさのそれを掌で受け止め、爪を立てて拳をぐぎゃりと握りつぶし、腕の中に手を突っ込んで手首当たりの骨を握りしめ思い切り捻った。
グルジエフの腕の中で骨だけがぐちゃりと一回転する。
「ぎょわぁぁぁぁぁぁっ!! いでぇ! いでぇよぉぉぉぉっ!!」
情けない。
「グレイズなら耐えられたわよ」
スパっと手刀で肩から指先までの肉を切り開く。
痛い痛いと子供のようにギャンギャンなきさけぶグルジエフに、私の心はどんどん冷めていった。
「やっぱりグレイズでもう少し遊んであげるべきだったわ」
「いでぇ……いでぇよ……」
「貴方はとってもつまらない。挨拶代わりにこの言葉をあげるわ。さようなら」
ぴょんっと飛び上がって脳天にチョップし、パカっとなった所で両手でぐいっと身体を真っ二つに引き裂いた。
どちゃぁっと辺りに生臭い血や臓物がびちびち音を立てて落ちていく。
「さぁ……次は誰が楽しませてくれるのかしら?」
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