ぼっち姫、女として生きる?
「えっと、じゃあ私の仲間のナーリアって人の事王様は知ってるんだよね? なんで言ってくれないのさ!」
「プリン……王はお前とナーリアが仲間かは知らないんじゃ……いや、待てよ? プリン・セスティとその仲間の事くらい王が知らないとも思えないな? だとしたら……おい、プリンは王に自己紹介したか?」
……どう、だっけ?
「してない……かも」
「お前がセスティとして認識されて無かったんじゃないか? 今思えば今のこのチビみたいに騒ぐ奴居なかっただろう?」
「ち、チビとは失礼ですよ!」
ちっちゃいのがなんか言ってるけど今はそれどころじゃない。
「じゃあ私がちゃんと自分がプリン・セスティだって言ってたら全部解決してたって事!?」
「まぁ魔物の国に視察いく相手に通信アイテム持たせないっていうのは考えられないし、即通信して解決してたかもな」
マジかよめっちゃショックなんだけど……。
「どうする? 王都に帰る?」
「いや、ここまで来ちまったんだしこのまま行こうぜ。それにこのチビが何か知ってるかもだし」
あ、そういえばそうだった。
「ごめんねゴギちゃん。私の事で知ってる事あるかな? さっきも聞いたけど仲間が今居る場所とか」
私がしゃがんで目線を合わせながら聞くと、ゴギちゃんは、なんだか気まずそうに言った。
「いや、皆さんがどこにいるかはちょっと……それに俺はセスティ様の事はよく分からないです。以前いろいろお世話にはなりましたけど……」
うーん。私の事知ってる人が居てもやっぱり一緒に行動してたくらいの人じゃないとダメっぽいなぁ。
「とりあえず私ここに一泊するから、何かあったらまた教えてくれる?」
「わ、わかりました! じゃあプルットさん……えっと、俺の雇い主もセスティ様と面識あるので、ここに居らっしゃると伝えて……あぁーっ!!」
そこまで言ってゴギちゃんが急に大声で叫ぶもんだからびっくりして尻餅ついちゃったよ。
「そ、そうだった……プルットさんこの花瓶を俺に託してどこか行っちゃったんだった……」
「出掛けちゃったって事?」
「はい、多分。あの人仕入れとか業者組合の打ち合わせとかでたまに出かけちゃうので……」
その人に話を聞いたら何か分かるのかなぁ?
結局あまり関係が深くない人だったらこの子と同じだと思うなぁ。
「どのくらいで戻りそう?」
「多分数日中には戻ると思いますけれど、お待ち頂く事とかは……」
私は、どうしようか? とサクラコさんに目配せしてみた。
「いや、何日かかるか分からないならプリンが来た事だけ伝えてもらって、あたし達は先へ進もう。時間がもったいない」
その大事な時間を酒飲むために王都で潰してたのはどこの誰だい??
「まぁ、そういう事だからさ、お願いできるかな?」
「うぅ……大事な時にいないとかあの人は……でも、確かにお伝えしておきます!!」
そう言ってゴギちゃんはとぼとぼと帰っていった。
うけつけのおばあさんはどうやらこの宿屋のおかみさんだったみたいね。ゴギちゃんがそう言ってたし。
彼女はとっても気さくないい人で、私達を部屋に案内したあと「夕食の時間になったら降りておいで」と言って去っていった。
多分これから花瓶の置き場所とかを鼻歌歌いながら考えるんだろう。
なんだかほんわかするおばあさんで心が温かくなる。
結局のところ、何事もなく美味しい夕食を食べて、何事もなく夜を迎え、何事もないまま出発の時間を迎えた。
ゴギちゃんが見送りに来てくれたので頭を撫でてあげるととても複雑そうな顔をしてた。
なんでよ。こんな美少女に頭撫でられたんだからもっと喜びなさいよね。
あ、もしかして以前会った時はもっと男っぽかったって事なのかな……?
そう考えるとちょっと憂鬱になる。
元の記憶が戻ったら私は男みたいになるの?
そしてこうやって女として生きてたのを思い出して恥ずかしさに悶えるのかな。
嫌だなぁ……。
もうこのまま女として生きればいいんじゃないかなぁ?
男性と恋愛なんてまったく考えられないけど。
いや、女性相手もだよ?
私サクラコさんとかあの謎の少女とは違うもん。
むさくるしい男よりは可愛い女子の方がいいけどさ。
……うーん。その時点でダメなのか?
「なに難しい顔してるんだ?」
馬車に揺られながらサクラコさんが私の様子が変だと気付いたみたい。目ざとい。
「ううん、サクラコさんみたいにはなりたくないなぁって思って」
「ぶっころすぞ」
彼女は口ではにっこり笑いながら目がまったく笑ってなかった。
こわっ。
この人は怒らせないようにしないと何をされるか分からないから気を付けよう。
私はまだ割り切れてないんだからそっちの世界に踏み込むのは早すぎる。
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