ぼっち姫、ゴギちゃんと遭遇す。
エルフの森遠っ!!
私達は馬車で移動を開始したんだけど、思っていた以上に遠いよ?
とりあえずエルフの森へ行くまでにリャナって町があるからそこで一泊して、その後ナランって街でさらに一泊して、その更に先なんだってさ。
とりあえず私達は馬車で揺られてのんびりリャナって町まで到着したので、馬車を休ませる為に翌日まで待機。御者さんと別れて宿を探し始めたんだけど……。
どうやらここには私の事を知っている人が居るみたい。
でもなんの役にも立たない情報ばっかり手に入った。
なんでも私は以前、この町で魔物の幹部を一人ぶん殴ったらしい。
町の人達から指を刺されて、
「ママー、プリン仮面だー!」
「しっ、見ちゃいけません!」
みたいな事が何回もあった。
プリン仮面ってなんだよ……。
私は以前ここで何をやったんだ……?
「おいプリンお前……」
「言わないで!」
「プリンかめ」
「あー聞こえない聞こえない!!」
私はサクラコさんの追求から逃れるように両手で耳を塞いで宿屋へ走る。
宿屋は結構分かりやすい建物だったので、入り口へ飛び込みながら受付のおばあちゃんに「一泊三人お願い!」と叫んだ。
「はいはい。三人ね? 何部屋にしますか?」
「出来れば三部屋で! あいてなくてもせめて二部屋ほしいな」
「はいはい三部屋ね、大丈夫ですよ~」
良かった。とりあえずこれで一人一部屋ずつ用意できた。
旅の資金は王様が多少用意してくれたのでこのくらい贅沢しても大丈夫。
そういえば王様が用意してくれたのはお金だけじゃない。
例えば、馬車の手配は王様がしてくれたのでそれ自体にお金はかかってないし、カエルさんにも使えるように私達一行の通行許可証も用意してくれた。
これがあるおかげで、いちいち個人を確認しなくても簡単に入る事が出来るようになった。
カエルさんとかは個人の身分証用意してもらったって顔確認とか言われたらさすがにちょっと問題あるからね。
魔物と同盟結んだって言ったってそれがこの大陸全土に情報共有されてるわけでもないみたいだし。
今同盟の情報自体はまだ一部の偉い人達だけが知ってる状態なんだってさ。
しばらくは魔物からの被害が無いという事を印象付けて、暴れてるのは魔族。っていう認識を持ってもらう期間って事みたい。
確かに、魔物が急に味方になったよって言われたって人々は納得できないと思うしね。
ある程度準備期間を設けてから時期を見て王様が大陸中に正式発表を行うみたい。
王様なりにいろいろ考えてるんだなぁ。
私的には魔物と同盟とか正気なのかな? うまくいくと思ってるのかな? って感じだったけど、ちゃんとうまくいくように準備を整えて行けば混乱は最小限ですむのかもしれない。
そういう事が出来るのが王様に必要な事なんだろうね。
「おいプリン部屋は取れたか?」
私がおばあさんから鍵をもらった頃、二人が遅れてやってきた。
「ちゃんと三部屋とったから大丈夫だよ」
「それは有りがたい。あっしもお二人と一緒の部屋じゃ落ち着かないですぜ」
そりゃそうだろうね。カエルさんと二人とか私も嫌だし、サクラコさんとじゃカエルさんが嫌だろうし。
その時、宿屋のドアが開いて何か小さいのが入ってきた。
「おかみさーん。頼まれてた翡翠石の花瓶が手に入りましたよー」
「あらゴギちゃんもう用意できたのかい? プルットさんにお礼言わないとねぇ。えーっと、ちょっと待ってね……はいこれ代金ね」
「あ、確かにお預かりしましたー。……って、え、うわ……」
ゴギちゃんって呼ばれた小さいのが私を見て固まっちゃった。
どうせまたプリン仮面とか言うんでしょ?
「せ、セスティ様!!」
……お?
「君私の事知ってるの?」
「えっ? 何言ってるんですかセスティ様! 俺ですよゴギスタです!!」
俺ですよって言われてもなぁ。
「ごめん私今以前の記憶全然ないんだわ」
「記憶が、ない……?」
ゴギちゃんって子、どう見ても人間じゃないよね?
こういう子が町に自然と馴染んでるのもびっくりだけど、私がこの子に関与してるってのもびっくりだよね。
「ねぇゴギちゃんは私の事知ってるの? 私の仲間達って知ってる?」
「えっ、あっ……えぇー? ゴギちゃんって……本当に記憶ないんですか? 俺とか、プルットさんとかアレクさんとか……」
「ん? そのアレクって人なら名前知ってる。確か私の身分証作ってくれた人だっけ?」
「そうそうそうです! あー。って事はやっぱりセスティ様なのは間違いないんですね。でも記憶は無い……」
そうそうそうなんです。
「私の仲間の名前って分かるかな? 出来ればどこに居るかとか」
「えっと……まずデュクシさん、ナーリアさん、あとライゴスさん、ヒルダさん……俺が知ってるのはその四人ですかね」
「うーん。全員聞き覚えないなぁ……」
「おいおいプリンちょっと待てよ」
ゴキちゃんと話してたらサクラコさんが頭をポリポリやりながら割って入ってきた。
「どうしたの? もしかして今の名前の中にサクラコさんの知り合いでも居た?」
「いや、そうじゃねぇんだけどよ……確か同盟組んで魔王と一緒に魔物の国に視察に行ってるって奴の中に居なかったか?」
誰が?
「そのナーリアってやつ」
……ごめん、王様から説明受けた気がするけど覚えてないや。
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