ぼっち姫、メディファスを知る。
「忍者ってぇと……あ、お嬢さんはあの時の……ぐふっ」
「えっ、カエルさんどうしたの?」
カエルさんが女の子に何かを言おうとした瞬間、変な声を出して崩れ落ちた。
「その蛙は気付かなくていい事に気が付いた。だから黙ってもらった。大丈夫、死んだりしないから」
「ぐふっ……ゲコッ」
ゲコッて……まさにカエルっぽい声だしたよ今。
「意識はある。身体を痺れさせただけだから一時間もすれば動けるようになるよ。だけど……私の事をベラベラ喋るような始末するからね? 私はどこからでも見てるし聞いてるからそのつもりでいて」
カエルさんが目を白黒しながらかろうじて首を縦に振った。
カエルさんだってかなり強いはずだよね? この子ってば何者? あ、忍者か。
「でさ、結局貴方はいったい何がしたいの?」
「……まだわからない。一つ聞きたいんだけど、今までの記憶がないの?」
……記憶? もしかして私の関係者なのかな?
「うん。記憶が全くない状態でニポポンってところで目覚めて、サクラコさんって人とこのカエルさんに助けてもらってここまで来たんだよね」
「……そう、だいたいわかった。名前聞かせて」
「名前って……私はプリン・セスティ。私の事知ってる人じゃないの?」
「知ってる。良く知ってるよ。だけど今の貴女の事は何も知らない」
「だから私の事を監視するって事?」
目の前の少女は無言で私を見つめ、小さく頷く。
「確認しなきゃいけない事があるから」
「そうなの? まぁよく分からないけど……でも私の事知ってるなら教えてよ。記憶を取り戻す為に何をしたらいいかな? 貴女は教えてくれないんでしょう?」
少女は少し悩んでから、アドバイスをくれた。
「私は教える気無い。だけど……そうだね、そこのメディファスは喋れる?」
「メディ……? 何それ誰?」
「その剣の名前」
「えっ、こいつ喋るの!? おーい! 喋れるなら返事しろーっ!」
返事ないや……。剣に話しかけるのってなんだか寂しい奴みたいじゃん……。
「……壊れてるの?」
「知らないよ。私が目覚めた時からこうだったし……。なんか便利な剣だけど何か特別なものなの?」
「……アーティファクトだよそれ」
えっ。
アーティファクトの剣だったの? だとしたらむしろたいして役にたってなくない?
「それ今は剣の形してるけど元々はサポートよりのアーティファクトだから、それを修理できれば記憶取り戻すのにも役に立つかもね」
「このアーティファクトを修理したら記憶もどるの?」
「……かも、しれない」
じゃあ私のやるべき事はとりあえずこれを修理する事かな。
「てかさ、貴女が教えてくれないなら他の関係者とか紹介してくれない? その人達から聞くのとか……」
「ダメ。できれば貴女が人に聞いて知るのより、自分で記憶取り戻してほしい」
「どうして?」
いろいろ情報があれば記憶だって戻りやすくなるんじゃないの?
「どうしても。これは譲れない」
少女は無表情だけど、絶対に譲らないっていう意思のこもった瞳をしていた。
「わかったよ。じゃあ最後にこれだけ聞いていい? こいつ直すにはどうしたらいいかな?」
「知らない。それは自分で考えて」
うわー。投げっぱなしにも程があるよ。
記憶取り戻させたい感じはあるのに手は貸してくれないの?
「あのさ、そんなに監視したいなら私達と一緒にくれば? 私は歓迎するよ? なんか強そうだし」
その言葉を聞いて少女が若干イラっとしたのが分かった。何で怒るのよ。
「それが出来るなら私だってそうしてる。でも出来ない。ししょ……あの人が居る限り私は別行動するから。いつでも見張ってるからね。それと絶対に私の事は仲間の人には言わないでね」
なんか急に早口になったなぁ……。
仲間には言うなって言われてもカエルさんはもう知ってるしあとはサクラコさんだけなんだけど……。
むしろこの子はサクラコさんに知られたくないのかな?
「サクラコさんと何かあったの?」
「貴女が知らなくていい事」
「あー。はいはい、じゃあ言わないから安心して」
どうせあの人に昔酷い目にあわされた人とかだろう。
「おねーさまー! どこですのー!?」
外からなんだか女の子の声がした。
「ちっ。もう追い付いてきた。思ったより早い……まぁ今夜は久しぶりに可愛がって……」
少女はそこまで口に出してから私の視線に気付いたらしく、「こほん。とりあえずそういう事だから。それじゃ」と言って窓から飛び降りて去って行った。
あぁ、私の勘違いだった。
サクラコさんの被害者っていうよりあれは多分同類だ。
……とまぁ、昨日の夜にそんな事があった訳で。
とりあえず帰ってきたサクラコさんにアーティファクトの事を相談してみた。
勿論あの子の事は秘密でね?
そしたら、
「だったら尚更エルフの森へ向かえばいいんじゃないか? 確かエルフもアーティファクト持ってるって話だったし何か分かるかもしれないだろ?」
だってさ。
結局私には特に目指す場所のあてがないからサクラコさんの提案に乗るしか無い訳で。
カエルさんはたまに口を滑らしそうになっては辺りをきょろきょろとするようになった。
よっぽど怖かったんだろうね。
さーて、じゃあメディなんとかって剣を修理する方法を探しに……
エルフの森へしゅっぱーつ♪
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