ぼっち姫、口から出るいろいろ。
「はぁ……」
「どうしたプリン。随分難しい顔をしてるじゃないか」
私達はライデンに一泊の後王都ディレクシアへ向かう為馬車に乗り込み移動中なのだが……。
色々考える事が多すぎる。
私がもしかしたらおっさんかもしれない事。
キャンディさんの娘……じゃなかった、息子かもしれない事。
それと、本当に私がプリン・セスティなのかどうか……。
今までの情報を整理するとプリン・セスティという人物は間違いなく男。
そしてかなり強い。
力的な事を考えるなら私である可能性は高いと思うんだけど……。
だとしても姿が違いすぎるんだよなぁ。
キャンディさん……敢えてママと呼ぶけど、ママは魔法か何かでこうなってるんじゃないかって言ってた。
その可能性はある気がする。
だったら、私は男が魔法で女になって、記憶が飛んでるから自分を女だと思い込んでる痛い奴って事になる……。
「はぁ……」
「おい蛙。こいつどうしちまったんだ?」
「いや、あっしにもよく分かりやせんが……おそらく自分の母親に再会した事が原因でしょうや」
「ああ、確かに悩みどころはいろいろあるだろうけどよ。悩んでてそれが解決すんのか? お前はお前だろうよ。なるようにしかならんし前向きなのがプリンのいいところだろ? それと辛気臭いのウザい」
サクラコさん……とってもいい事言い出したと思ったけど多分本心って一番最後のやつだけだよね?
「確かに、私の仲間達に会えば全部わかる事、だよね」
あと妹にも。
ママにショコラの居場所が分かったり、会えたりしたら手紙を書くと約束した。
だから私の為にもママの為にも絶対に見つけ出さないといけない。
これで目的が私自身の為だけ、じゃなくなった。
それは敢えて自分を追い込むための理由付け。
今の私は正直言って真実を知るのが怖い。
今すぐにロンシャンに逃げ帰って平和な日々を過ごしたり、ママと一緒に生活したり、そんな生活を望んでしまいそう。
だけど、やっぱりそれじゃいけないんだと思うから。
だから自分が逃げないように、ママを利用した。
ママの為でもあると思えば、私は諦めずに動く事が出来る気がするから。
「二人ともごめんね。もう大丈夫」
「……迷いは晴れたか?」
サクラコさんが今まで見せた事のないような真面目な顔で私に問いかける。
「うん。もう迷わないよ」
「そっか、そりゃ良かった。これで辛気臭い顔を見る事も無くなるな」
ぶっきらぼうにそう言って私から顔を逸らすけれど、それがこの人の優しさなんだって事はちゃんと分かってる。
本当に不器用な人だなぁ。
女の子をたぶらかす時はあんなに饒舌になってすぐに手を出す癖に。
きっと鬱々とした空気に耐えられなくなっちゃうタイプの人なんだろう。
もしかすると根は結構真面目なのかもしれない。
優しさはきちんと感じる事が出来るけど、それを押し付けようとはしない距離感が心地よい。
それに引き換えカエルさんはなんだか難しい顔をして唸っている。
「カエルさんどうかしたの?」
「いやね、馬車というのも……なかなかに酔うなと思いやして……」
あぁ、なんだそんな事か。でもカエルさんはまだ余裕がありそう……う。
それに気付いたらなんだか私まで気持ち悪くなってきた。
「あ、ヤバいかも」
私が立ち上がって口を押えたのを見てサクラコさんが慌てる。
「おいリンシャオ!! 馬車を止めるように言ってくれ! 早く!!」
リンシャオさんは馬車の御者と一緒に荷台の外に居る。
周りを警戒する意味と、御者がちゃんと働くかの監視も含めているらしい。
「なにヨ!? うるさいネ」
「早く馬車を止めろ! プリンが吐くぞ!」
「……知らないヨ。吐きたきゃ勝手に吐けば良いネ。ワタシ困らないヨ」
「この野郎自分は外に居るからって……!」
大声出さないでほしい頭ぐわんぐわんする……結構、ヤバめ。
「姐さん」
「なんだ蛙! 今こっちは忙しいんだ!」
「……あっしも、そろそろ……」
「ぎゃあぁぁぁぁっ!! おいリンシャオ! 頼むから止めてくれ! 王都に付いたら酒奢るから!!」
「ナニ? お前の奢りで飲む酒は美味そうネ。 おい、馬車を止めルヨ」
大騒ぎの末、馬車のスピードが緩やかになった所で私とカエルさんは荷台から飛び降りて道の脇へ走る。
「カエルさん……ごめん、もうちょっとあっちいって……」
「そんな殺生な……状況は同じでしょうや」
「自分のと他人のとじゃ訳が違うから! お願いもう私限界だから離れぶぼぁっ」
「ひぃっ! 姫さんが、姫さんがうぼえぇぇっ……」
私とカエルさんを休ませるために少しだけ休憩時間を取る事になったらしい。
ありがたいけど到着遅れてごめんねサクラコさん。
「……コレは思いのほか地獄絵図ネ」
「はぁ……お前らのせいでリンシャオに奢る羽目になったんだからな? 身を切って馬車を止めたあたしに感謝しろよ?」
その時ばかりはサクラコさんに感謝したものだが、その後私とカエルさんは革袋を渡され、
「次吐きそうになったらそれでどうにかしろよ」
と、無茶苦茶言ってすぐに移動を再開するのだった。
勿論、その後革袋が少しばかり重たくなったのは言うまでもない。
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