ぼっち姫、第五戦目は不戦勝……からの?
「ごべんなざい!! ジービルじゃなくて、俺ジビールって言うんです!! みんなが勝手に勘違いして……だから、だからつい出来心でぇっ!!」
……は?
「な、なんとぉぉぉ!! ジービルだと思っていた彼はジビール!? 勇者パーティとは一切無関係だったぁ!! 本物の勇者ご一行鬼神セスティには敵わなかったという事かぁ!!」
相変わらず実況の人うるさい……。
「じゃあ、貴方はジービルじゃなくて、私の事も知らないって事?」
「はい……ずいばぜん……俺、格闘家としてめっちゃ強い自信があっだがら……だがらジービルさんと勘違いされたままでもいけるんじゃないかなっておぼっで……」
ジービル……じゃなかった。
ジビールはドゲザとやらをしながら号泣してる。
「これ私の勝ちでいいよね?」
「ぼぢろんですぅぅ!! 鬼神セスティ様に勝てる訳がないです……ごべんだざい……」
「第四戦目、真の勇者の仲間鬼神セスティがじ、じ……ジビール選手を打ち破りましたぁっ!!」
よっしゃ!
私の事知ってる人に出会えなかったのは残念だけど、これはこれで良しでしょ。
「おっしゃ次こい次ー!!」
「あー。次の試合ですが少々お待ちくださいますようお願いします!!」
なんか休憩タイムが入ったっぽい。
今ちょうどテンション上がってきたのになぁ。
サクラコさんの所まで戻ると、リンシャオさんが袖をダボつかせながらぱちぱちと手を叩いた。
「いや、サクラコも人が悪いネ。まさか鬼神セスティ連れてくるトハ……。しかし今回のイベントは大成功ネ。約束通り船は用意してやってもイイ」
「え、でもまだ四戦しかしてないよ?」
「あぁ、それナラどうせ……」
「皆様にご報告申し上げます! 最後の対戦予定者でありましたランキング一位のキング氏ですが……その、えーっと……キング氏からの言伝を読み上げますね。【期待してくれている皆、すまん! 猛烈な腹痛で戦いどころではないのだ。いくら歴戦の覇者である俺様でも自分の腹痛には勝てなかったぜ。そういう訳だから。じゃあな!】……だ、そうです」
……。
会場はなんというか凄まじい程に静まり返ってしまった。
「ほらネ。どうせこうナル思ったヨ。キングはチキン野郎だからネ」
……じゃあ私の戦いこれで終わり?
「なんだよもう終わりか!? せっかくもう少し稼げると思ったのによぉ……」
「ふふ……マァ船は手に入るんダ別にいいダロウ? それにこちらとしては大盛り上がりでいつもヨリあがりが多かったからナ」
……もうちょっとで何か掴めそうだったのになぁ。
「ちょぉぉっとまったぁぁぁぁ!!」
会場に突然大声が響き渡る。
それだけで会場全体が少し震えるほどの大声。
「お前が鬼神セスティってのは本当なのか!?」
「えっ、……多分?」
どこからともなく闘技場に乱入してきたのは一人の剣士。
「あんたが鬼神セスティだって言うんだったら俺と勝負してくれ! 俺は今回の戦いのオファーが来た時自分で断っちまった……。相手が若い女だって聞いたからだ。しかし相手がセスティなら……」
「そう言ってるけどリンシャオさんどうする? 私は全然オッケーだけど」
「フフ……お互いやる気ナラやってもらった方がこっちはありがたいネ」
「おい船の約束はどうなる?」
「これで約束通り五戦目が行わレル。なら五戦目を勝ったら船を用意するヨ」
「チッ。まぁいいぜ。さっさとそんな奴のしちまえ!」
サクラコさんがイライラしてる。もう船が確約されてたのにひっくり返っちゃったんだからまぁしょうがないか。
でも大丈夫だよ。
私、今誰にも負ける気がしないから。
「さぁここで乱入してきたのは闘技場ランキング二位のストーカーだぁぁぁっ!!」
「えっ、ストーカー? キモっ!」
「まてまてまて勘違いするな! 俺の名前はシャドウストーカーだ!! シャドウストーカーオボロ!」
「よくわかんないからストーカーでいいよ」
いちいち名前なんて覚えてもどうせ意味ないんだから。
今日今だけの知り合いなんて名前覚える必要ないでしょ。そんな事に脳みその容量使いたくないよ。
「馬鹿にした事を後悔させてやるぜ……」
「こいつはストーカーなんて言われているが実力だけは折り紙付きだぁ!! 特殊な技の数々で鬼神相手にどこまでやれるんだぁぁぁ!?」
さーって。こっちはいろいろ試したい事があるんだよ。実験台になってもらうよー?
そして
カーンと軽い鐘の音が響き
私は地面に崩れ落ちた。
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