ぼっち姫、第四戦目は仲間と再会?


「なんとなんとなんとぉぉぉ! プリン選手魔法も使えたぁぁぁぁっ!? 見事にリドリドーリアージ選手を下し、あと二戦だぁっ!!」


「ちょっとリンシャオさん! 遠距離攻撃の魔法以外なら使っていいって言ってよ!」


 いつの間にかサクラコさんの隣に座っていたリンシャオさんに文句を言うが……。


「おや、サクラコにはちゃんと説明シテあるネ。文句を言うなら相手が違うヨ」


 私はキッとサクラコさんを睨む。


「おいおいそんな怖い顔するなって。私だって来たばっかりでここのルール一度聞いたきりなんだぜ? 全部覚えきれるわけねぇだろ??」


「いや、姐さんはそもそも賭け事にテンションが上がっていてリンシャオさんの話はろくに聞いてなかったように記憶してますぜ」


「おいカエル適当な事言うんじゃねぇよ!」


 やっぱりサクラコさんのせいだこれ。


「一度確認するけど、何がどこまでOK?」


「フフッ。お嬢さん魔法も使えるとは驚きネ。飛び道具が禁止なだけヨ。強化もヨシ。あの魔法剣士のヨウニ武器に纏わせるもヨシ。遠距離魔法の使い手と接近戦剣士の戦いは大抵つまらナイ結果にナルネ。その対処ルールというワケヨ」


 なるほど。

 じゃあ魔法を飛ばさなきゃオッケーって事ね。

 それなら大丈夫だ。


「サクラコさん。心配はいらないよ。思い切り稼がせてあげる」


「言うじゃねぇか! プリンあと二戦だぞ! 思い切りやっちまえ!」



 魔法を解禁されたなら私が負ける訳ないっしょ!


「第四戦目! プリン嬢の怒涛の勢いを止めるのは誰だぁぁぁっ!? それはこいつだぁぁぁぁっ!! 最強の拳闘士! ジービル!!」


「「「うぉぉぉぉぉぉ!!」」」


 ん? 気のせいか他の奴等の時よりも歓声が大きい気がする。


「このジービルはなんとあの勇者パーティの一人! 以前ロンシャンがドラゴンの群れに襲われた時に撃退したのは勇者パーティご一行だぁぁぁっ!! それだけでこの男の実力がとんでもないのは実証されているぞ!! さぁどうするプリン!!」


 なん、だって?


 私はゆっくりサクラコさんの方を見る。

 サクラコさんは、驚いたような表情をしていたが、静かに頷いた。


 ジービル……。勇者パーティの一人。

 私も勇者パーティの一人。


 だったら、間違いなく次の相手は私の事を知っている!!


 とてつもなくゆっくりした足取りでジービルが闘技場に入ってきた。


 大きい。最初に戦ったイカの人と同じかそれ以上に大きい身体で、筋肉はムキムキ。

 無表情というか不器用そうな顔。

 そして、拳に装着しているデカい棘付きの武器。


 これが……勇者の仲間……?


「……悪い事は言わない。辞めておけ。お前では俺に勝つ事は、できない」


 声ちっさ。

 ぼそぼそ喋るからよく聞いてないと何言ってるかよく分からない。


「あんたに聞きたい事があるんだけど」


「これから死ぬ相手に語る言葉は無い」


 ……?


「お前私の事知ってるんでしょ?」


「……何を言ってるのか分からないな」


 どういう事だ?

 私の事を知らない?


 それとも一緒に居た頃はやっぱり私男の姿で、オカマちゃんだってこと??


 カーン!


「これ以上語るは無粋。漢なら、拳で語るのみ!」


 男なら!? やっぱり私オカマちゃんなの!?


「ちょっとまってそこんところ詳しく! ってうわぁっ!!」


 私の言葉が終わる前に拳が降り注ぐ。


 かなりゆっくりな動きだが、その一撃はとてつもなく重い。


 モロに腕で受け止める事になってしまったけれど、かなり痛かった。


 こいつ、強いな。

 さすが勇者パーティの一人ってだけの事はある。


「そうか、お前はスピードも速いんだったな」


 そう言ってジービルがその場でドスンドスンと二回ほどジャンプをしながら体の数か所をトントンと叩いた。


 すると、その全身がうっすら赤く輝き始める。


「……魔法?」


「これはロンシャンに伝わる秘技。今の俺は全身の秘孔を突き、大幅に能力が上がっている。お前では、勝てない。……喋りすぎたな、いくぞ」


 秘孔って何? よくわかんないけど強くなったのだけは間違いないみたいだ。


 ジービルの動きは先ほどより各段に早くなり、一撃の重さも数倍に膨れ上がっている。


 これは、結構、きついかも……。


 でも動きの速さ自体は目で追えない程じゃない。避ける気になれば避けられそうだ。


 まともに受けるのは痛いからやだ。

 出来るだけかわして……。


 ここだっ!


 私はジービルの大振りの一撃を懐に飛び込んでかわし、その脇腹に思い切り拳を突き立てた。


 雷魔法を拳に乗せて、拳の衝撃が伝わった瞬間にそれを解き放つ。


 ジービルの全身を高威力の雷が襲い、真っ黒になってしまった。


 ……炭になっちゃったかな?


「ぐぼっ……」


 真っ黒なジービルが派手に血を吐いた。

 こっちに吐かないでよきたないなぁ……。


 でもとりあえず生きてるみたいでよかった。


「つ、よい……お前、いったい何者だ……?」


「私の名前はプリン・セスティ。勇者パーティの一人だよ。あんたもそうなら私の事知ってるんでしょ?」


「ぷ、プリン……セスティ? 鬼神、セスティ……?」


「らしいよ」


 やっぱりその当時と今の私は姿が違うのかな……?


「ご、ごめんなさぁぁぁぁぁぁぁい!!」


 突然ジービルが膝と手を地面に付いて頭を床に擦り付けた。


 え、なになに!? どういう事!?


「おおっとぉぉ!? あのジービルがドゲザだあぁぁぁぁっっ!! なんとプリン嬢はあの鬼神セスティだった!? そりゃ強い筈だぜぇぇぇぇ!! しかし再会を喜ぶような雰囲気じゃないのは何故なんだぁぁぁ!?」


 私はその後のジービルの発言に言葉を失った。


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