ぼっち姫、相棒。


「あらなぁに? 何か面白い事でも始めるのかしら? だとしたら待っていてあげるからやってごらんなさい」


 この女相変わらずめちゃくちゃ余裕だなぁ。

 余程自分の実力に自信があるらしい。


 確かに、脅威だ。

 この女は早めに潰しておかないと大変な事になる。


 この女をなんとか倒して、俺は俺の身体を取り戻す。

 そうすれば完全な力を取り戻せるし、そしたら今度こそ敵なんかいねぇ。

 あの神様が敵になって襲い掛かってこねぇ限り安心だ。


 だからまずはこの状況をどうにか切り抜ける、ではなくて……なんとしてでもこの女をここで潰す。


 お前にそれが出来るか?


『正直少し、いや……かなり恐ろしいです』


 それでも、メディファスの申し出はかなりありがたいし、これが上手くいくならば確かにこれ以上は無いだろう。


「じゃあやるぞメディファス」


『……覚悟は決まりました。いつでもどうぞ』


「よし、よく言った」


「マリス! メディファスを食え」


 俺の服の一部がしゅるしゅると広がり、手首のブレスレットを飲み込んでいく。


『う、うおぉぉ……南無三!!』


 なんだよ南無三って……。


 マリスがメディファスを包み込み、バリボリとかみ砕く音が聞こえる。


 メアはその様子を少し驚いた様子で眺めていたが、やがて……。


「貴方……その服は、なんなの?」


 と呟いた。


 わざわざ教えてやる必要は無い。

 少なからず因縁があるのだろうが、敢えて教えてやる事に意味があるとは思えないからだ。


「マリス、分かってるな? メディファスをブレスレットに作り替えた時みたいに、今度は剣に変えるんだ」


 ばりぼりむしゃごきゅごきゅ……。


 やがてマリスが咀嚼するのをやめる。


「……お、おい。まさか飲み込んだりしてねぇだろうな?」


「メディファスは大丈夫なのかのう……?」


 めりにゃんも少し不安そうだ。


 まさかこのままマリスの餌になっちまったなんてオチは勘弁してくれよ……?


 ぺっ。


 突然マリスがそれを吐き出すもんだから危うく落っことしそうになってしまった。


 慌ててそれを空中でキャッチする。


 あの小さなブレスレットからどうやってこの質量を生み出したのか分からないが……。


「おい、成功だぞメディファス。生きてるか?」


『……生きた心地はしませんでしたが、生きています』


 果たしてアーティファクトに対して生きているという表現が正しいのかは分からないが、少なくともこうやって会話が出来て、自分の意志を持っている以上こいつは生きている。


 そして、頼りになる俺の相棒だ。


 マリスが吐き出した時、メディファスは鈍い銀色に輝く細身の剣になっていた。


 装飾は特にないシンプルな物だし、ピカピカとも言えない鈍い光だったが、俺にはこれがちょうどいい。


 アーティファクト製の剣。


 特に特殊効果など持っていないかもしれないし、切れ味がいいとは限らない。


 だけど、とにかく強度の高い俺だけの剣。


「おいメディファス。どれくらいまでいけそうだ?」


『……分かりません。この形状は初めてですしどの程度の負荷に耐えうるのか……しかし、素材はあくまでアーティファクトなのですから主は気にせず思い切りやって下さい。意思はありますが我は主の道具です』


「道具なんかじゃねぇよ」


『主……?』


 メディファスは不思議そうな声をあげたが、俺の心が読めるならその質問は必要ないだろう?


「わざわざ言わねぇとわかんねぇのかよ」


『感謝いたします。我は、主の相棒として、可能な限り力になりましょう』


「よし、じゃあ本番だ。きっついのいくから覚悟しとけよ」


『無論です。他の何物にも務まらない仕事をしてみせましょう』


「めりにゃん! 俺より明らかにめりにゃんの方が強い魔法が使えるだろう? 俺のもう一人の相棒として協力してくれ」


「……!! 儂が、相棒?」


「そうだ。メディファスとめりにゃんが俺の相棒だよ。三人で、あいつを潰すぞ」


「分かったのじゃ!」


 めりにゃんが俺の手を強く握る。


 少しだけ震えている。

 どうなるか不安というのもあるのだろうし、この女にされた仕打ちを思い出しているのかもしれないし、単にあの時のお返しをしてやれるという武者震いかもしれない。


 必ず、この女はここで潰す!!

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