ぼっち姫、魔王の秘密。
「ところで……よく考えたらどうして元魔王が元の姿に戻っているのかしら? 確かにお子様にしてあげた筈だけれど」
「儂はもう一人ではないからのう。それが答えじゃっ!」
多分それじゃ全然意味が伝わってないと思うけど、ドヤってるめりにゃんが可愛いので良しとしよう。
「なるほどね。貴方が持っているアーティファクトがその身体を通して封印を一時的に解除しているという訳ね」
……なんであれで分かるんだよ。理解力ありすぎだろ。
メアは俺の手首のブレスレットに気付いたらしく、「それがアーティファクト? 初めて見る形ね……」と顎に手を当てて呟いた。
そりゃそうだろう。これはマリスに食われたメディファスが無理矢理別の物に作り替えられた結果だ。
元々の形とは大きく違う。
そう言えばマリスがエンシェントドラゴンだったとして、エンシェントドラゴンにはアーティファクトすらかみ砕く力と、体内で作り替える能力があるっていうのか?
マリスが謎過ぎて特に気にして無かったが、エンシェントドラゴンだと分かった今、気になって仕方ない。
そもそもエンシェントドラゴンって言うのは何なんだ?
旧時代の覇者。それは分かる。そいつらは神様とやらが作ったのか?
アーティファクトの処理絡み?
分からないな。
「貴方、そのアーティファクトも面白そうだから私に頂戴」
メアの言葉に思考が途切れる。
そうだ、今はあれこれ考えている場合じゃない。
「悪いけど、こいつは俺の相棒だからな。簡単に人にくれてやったりはできないぜ」
「あらそう。聞き分けの無い子からおもちゃを取り上げないとね」
「へっ、聞き分けの無い子はどっちだっつの」
「下らない言い合いをしてても仕方がないわね、いいわ。少し遊んであげるからかかってらっしゃい」
……この余裕はなんだ?
いくらめりにゃんに勝った相手とはいえ、所詮は普通の人間だろう?
俺を甘く見るのもいい加減にしろよ。
「めりにゃん、行くぞ」
「いつでもおーけーじゃ!」
かといって思い切りぶん殴って粉々になられたら目覚めが悪い。少しばかり手加減してやらないと。
俺はめりにゃんの手を握りしめ、メアの目前まで急加速。
奴は目で俺を追えていない。
今まで俺が居た場所をまだ見ていた。
なんなんだよ素人かっつの。目の前から対象が消えたらせめて周り探したりするだろう……がっ!
出来る限り加減してボディに一発!
俺は、この瞬間まで何か勘違いしていた。
大事な事を忘れていたのだ。
「……嘘、だろ?」
「はぁ。それはこっちセリフよ。ふざけてるの? もしかして私がこんな外見だから手加減してやろうって?」
俺の拳は、メアの腹の前で止められていた。
その、細い指一本だけで。
「ベストを尽くそうとしない悪い子にはお仕置きしなきゃね」
くそっ!!
急いでその場を離れようとしたのだが、メアが俺の手首を握って離さない。
いや、すぐに離れた。
俺の手首から先がもぎ取られたから勢いあまって離れてしまっただけだ。
「……っ!!」
もういてぇとか言ってる場合じゃない。
手くらいほっとけばまた生えてくる。
そんな事よりこいつ思ってたよりヤバい。
絶対めりにゃんと接触させるわけにはいかない。
「今度は手加減なんかしねぇよ!」
超加速でメアをすり抜け、追い越した瞬間に空中を蹴り飛ばし奴の後頭部目掛けて思い切り蹴りを入れる。
「入った!」
がごぎぃぃぃんっ!!
完全にヒットした。
頭を吹き飛ばすつもりで思い切り蹴った。
なのになんでだ。
「うっ……今のはちょっと痛かったわ……」
まったくダメージが入ってない。
こいつの身体どうなってんだ!?
「あら、随分驚いているみたいね。今まで自分の力が通じない相手は誰も居なかったのかしら? 井の中のなんとかってやつね」
そう言ってメアは「くふふふ」と不気味に笑う。
胃の中? よく分からないがこいつはやべぇぜ。
「どうして攻撃がきかないのか不思議そうな顔してるわね。少し考えたら分かるでしょう? だって……」
そうだ。
この姿になってから俺は当時よりは力が落ちたとはいえ、誰が相手でも困らないくらいの腕力があった。
だから忘れていたんだ。
「この身体は、アーティファクトと同化した貴方の身体なのよ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます