ぼっち姫、どっち派?
「これは盲点だったわ。……これはいいサンプルになるから貰っていくわね」
「ちょっとふざけないで頂戴! 別にそんなものいくらでも作れるけどアンタの為に作ったんじゃないわ!」
確かにさっきの呟きを聞く限りこいつにこれを持って帰らせるのは危ない気がする。
「アシュリーの言う通りそれは置いていってもらうぜ」
「ふむ……もうこの大賢者とやらには興味ないから貴方と遊んであげるわ。ついてらっしゃい」
「おいコラ待ちなさいよーっ!!」
アシュリーが飛び掛かろうとするがそれをスッとかわして、メアは既に遥か上空へと移動していた。
「めりにゃん、俺達も行こう」
「わ、わかったのじゃ……。セスティ、あの女、儂が戦った時とはなんか様子が違うのじゃ。気を付けるのじゃぞ」
そりゃめりにゃんと戦った時とは性別からして違うみたいだからなぁ。
俺はめりにゃんの忠告を軽く聞き流してメアの後を追った。
あの神様相手ならともかく、相手が人間だったら負ける事は無いだろう。
高い位置まで来ると改めて眼下に広がる激戦がはっきりしてくる。
まだまだ山ほど魔物が襲い掛かってきているが、それをデュクシとライゴスがしっかり瀬戸際で防いでいるし、その防衛ラインを突破してきた魔物に関してはナーリアとアシュリーがしっかりと始末してくれている。
ナーリアはデュクシとセットじゃないのでたまに変な方に矢が飛んでいってるようだが、他の連中と距離があるので二次災害は特におきていないようだ。
デュクシはちょっと動きが悪くなってきてるな。怪我がかなり増えているらしい。
あまり長引かせるとまずいな……。
とりあえず大声でアシュリーに前衛の回復を要請した。
「おいアシュリー!! あいつらの回復してやってくれ!」
「うるさいわねぇ……この距離であまり大声出さないで頂戴」
目の前にいるメアが頭を押さえてぶつぶつ言ってるがそんな事はどうでもいい。
アシュリーを見ると返事は無く、ただこっちに向かって手をぴらぴら振りながら杖を振っていたので回復に関しては大丈夫だろう。
しかし、デュクシあたりは大量の魔物に一斉に囲まれたら対処の方法は無いと思うのだが、そうなっていないところを見る限り森の中でショコラが上手く敵を足止めするなり各個撃破するなりして一気に押し寄せないようにしてくれているのだろう。
本当に頼りになる妹だ。
「ちょっと貴方。これから私と遊ぼうって時に何他の事にばっかり気を散らしているのかしら?」
「お前がたかが挨拶でこんなアホみたいな大群率いてくるからだろうが」
メアは心底心外という顔をして、「別に率いてなんかいないわよ」と言った。
「っつったってお前が今の魔王だろうがよ」
「魔王を倒したから魔王ってだけ。あいつらはただの手駒で便利な道具よ。道具を都合よく使う事が率いるなんていう表現になるかしら? ならないわよね?」
「……お前話に聞いていた以上にヤバい奴だな」
「あらありがとう。私は誰になんと言われようとも私の思う通りに生きていくのよ。それがどんなに他人と違おうと、それが私なんだから仕方ないじゃない。理解されようとも思わないし、その努力をする時間があるのなら自分を高める為に時間を割くわ」
驚くほどに感情の無い顔で語るメアの目は、色の無いガラス玉のようだった。
なんだろう。
同じような外見だからかな。
「俺お前の事は許せないしボコボコにするつもりだけどよ、なんていうか、その自分に正直な生き方は嫌いじゃねぇよ」
そう、まるで野生の獣のようだ。
生きる為に生きる。必要だから食う。殺される前に殺す。自分の為だけに生きていく。
そんな本能の塊を俺は嫌いになれないのだ。
「ぷっ。何それ? 新手のナンパかしら? 安心して頂戴。私の場合貴方の事は嫌いだけれど貴方に興味があるの。私の物にしてみせるわ」
不敵に笑うメアの、その言葉の意味は理解しかねるが、色めいた意味ではないのだけは分かる。
「なんじゃセスティはモテモテじゃのう……ちょっとのけ者感があって寂しいのじゃ……」
今まで会話に入れず俺の腕に掴まってためりにゃんだったが、そう言いながらぎゅっと握る手に力がこもってきたりするところが本当に可愛いのだ。
安心してくれよ。
俺は断然現魔王より元魔王派だからな。
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