ぼっち姫、失敗は死より辛い。
さて、めりにゃんが纏めて倒してくれたとは言ってもまだ百ちょいくらいかな……。
もう視界は魔物で埋め尽くされていて空が見えなくなるくらいだった。
こちらが二人だから一斉に飛び掛かってくるわけにもいかないみたいで、結局五~六人人グループみたいになって襲い掛かってはくるんだけど、勿論この有象無象達が最初の幹部より強いなんて事はなくて、
ただひたすら少しずつ少しずつ削り殺していく作業みたいになっちゃってる。
でもこれがずっと続くとそのうち疲れてもくるし、私は怪我したって治るけどめりにゃんはそうはいかないからちょっと考えないと。
めりにゃんを傷つけさせないように立ち回るには、まずはこれかな?
「めりにゃん、ちょっと広範囲で纏めて吹き飛ばせるくらいの魔法用意しといて。しばらく私がなんとかするから」
「わかったのじゃ!……って、うわぁっ!!」
ちょっと急加速しすぎてめりにゃんがあわあわ言ってる。
ごめんね、まだこの感覚に慣れきれてないんだよ。
私は目の前に迫るどこかで見た事があるような大型のグリフォンの背中に飛び乗って羽根を千切り、地上へと落とすと、根本から引っこ抜いた羽根、つまり手羽を武器にして振り回す。
大して力もないような連中はそれで充分だったけれど、上手く交わされたり受け流したりするような連中もたまに居た。
私は試しにその羽根に氷の魔法をかけて魔法剣ならぬ魔法手羽を作って切りかかる。
結局数匹はそれで倒せたけれど今度は手羽の方が魔法に耐え切れなくてボロボロと崩れてしまった。
魔法も駆使して戦ってはみるものの、やっぱり自分は各個撃破向きなんだよなぁ。
「めりにゃん、そっちはどう?」
別に今私達を取り囲んでいる魔物達は全く脅威じゃないんだけれど、数が多すぎてげんなりしてくる。
このままあと何時間戦い続けたら殲滅出来るんだろう……。
何匹、何百匹、何千匹殺したら終わりが来るんだろう。
あ、万だった……。
「よーっしそろそろいいのじゃ。以前使ったのよりかなり大規模魔法を撃つからぶちかます方向には気を付けないといけないんじゃが……」
「前は爆風も計算してたよね?」
そう、確かニーラクで魔物の大群を始末した時にめりにゃんが使った魔法は、大規模な物だったのに全てこちらとは反対側に爆風が向くように計算されてた。
「あれは中規模爆発を沢山起こす魔法だったんじゃ。じゃからちゃんとこっちで操作すればそういう事もできたんじゃが、これはとにかくまとめてぶっとばすやつじゃから一方向にしか撃てんのじゃよ」
あれより規模のでかい魔法って……ちょっと想像がつかないんだけど、とにかくめりにゃんがそう言うんだったらよほど危ない魔法なんだろう。
どうしようか、ここから正面に向けて撃ったらきっとその奥の山とか吹き飛ばしちゃうだろうし、もっと高い所からぶっ放したら地上とか、下手したら仲間を巻き込んじゃうかもだし……。
やっぱりこれしかないかなぁ。
「よしめりにゃん、一回地上に降りよっか」
「それしか無いのう。でもどうせやるなら出来る限り引き付けて撃ちたいのじゃ」
それだけ魔力消費も大きいって事なのかな?
だったら無駄撃ちは避けて、一撃で出来る限り多く吹き飛ばすように……。
「じゃあまず私があっちこっち飛び回って、いろんな奴に追いかけまわされるようにしてくるよ」
「それは危険……じゃあないんじゃろうけど、面倒じゃろう?」
『それなら我にいい案があります』
「うわっ、いきなり割って入ってこないでよびっくりするじゃん」
『申し訳ありません。ですが取り急ぎ提案を』
「わかったわかった。とりあえずいい方法があるなら教えてくれる?」
『まず主は出来る限り広範囲に魔物共を取り囲むように飛び回って頂けますか?』
「結局それって私が注意を引いておびき寄せるって事じゃないの?」
それならおんなじじゃん。
でも、どうやらメディファスが言うのはちょっと違うらしい。
『やる事は同じです。しかし、我の力を使うかどうかで効果は劇的に違うでしょう』
「おー? そこまで言うんだから期待していいんでしょうね?」
『無論です。豪華客船に乗ったつもりで居て下さい』
……その例えはなんだか沈みそうだなぁ。
「セスティ、とにかく物は試しという奴じゃ。やってみて損はなかろう」
「それもそうね。じゃあ中途半端な仕事しやがったらマリスにもぐもぐの刑だからねっ♪」
『自信はあります。……が、失敗に対しての刑罰が恐ろしくてミスをしてしまいそうです』
「なんじゃこの人間味強いアーティファクトは……」
「気にしないでめりにゃん。どっちにしてもこれで使える奴なのかただの変態アーティファクトかが分かるから」
『……失敗は死よりも恐ろしいものなのですね』
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