ぼっち姫、全面戦争。


「……姫、正直な所どう? 今魔王と戦って勝てると思う?」


 ……どうだろう?

 ぶっちゃけ俺が力を手に入れてからと言う物、たとえどんな奴が相手だろうと負ける気はしなかった。


 ただ、さすがに相手が魔物の親玉だという話になると少しばかり不安はある。


 これは実際に戦った事のあるめりにゃんに率直な意見を聞いてみよう。


「めりにゃん的には今の魔王と、俺が戦ってどっちが勝つと思う?」


 めりにゃんは迷わずに「セスティじゃろうな

 」と断言した。


「……それは何か理由があるのか?」


「あの時戦ったあやつは儂といい勝負じゃった。結果的に負けてしもうたが……本気の儂がセスティと戦ったとしたらまったく勝てる気がせんよ。だったらどちらの方が勝つか予想するのはかんたんじゃ」


 俺達の話を聞いていたエルフが目を丸くして、「あ、貴方はいったい……?」なんて言ってるが今はそれに答えてる場合じゃない。


「おいそこのエルフ。敵の規模は?」


「あ、私の名前はグリージャと申します」


「いやいや、そんなのどうでもいいから聞いた事答えてくれよ。助けてほしいんだろう?」


「私が助けを求めているのはアシュリー様なのですが……」


「あのね、アンタは低能で無知だから知らないだろうけれどこいつは私とパーティを組んでいたの。少なくとも私より強いわよ」


 アシュリーがイライラしながらグリージャとやらを睨みつける。


「え、そ、そうなんですか? 以前アシュリー様が同行する事にしたパーティにこのような方はいらっしゃらなかったように記憶しているんですが……」


「つべこべうるせぇよ。助けが要るのか? それとも滅ぶか? さっさと決めろよ」


「はっ、ハイ! 是非お願いします!!」


 エルフってもっと頭いいもんじゃねぇのか?


「だから聞いた事にさっさと答えろよ。敵の規模はどのくらいだ? パっと見の目安でいいから早く教えろ」


「か、かしこまりました! 自分が見た訳ではないのですが報告ですとその数五万はくだらないかと……」


 五万!? 魔物が五万も来てるってのか?

 その上これから魔王が来るって……?

 どういう事だよ。それだけ本気で攻め込むだけの価値がこのエルフの里にあるっていうのか……?


「五万って……姫、さすがにこれはまずいんじゃ……」


 ナーリアが心配するのも無理は無い。

 俺だって結構ビビってる。


「でも姫ちゃんとめりにゃんが居て、あと大賢者様まで居るんだったら雑魚共は一瞬じゃないんすか?」


 デュクシはあくまでも能天気だが……まぁ確かに雑魚魔物達は数がどれだけいても負ける事はないだろう。

 ただ、エルフ達を守れるかどうかは別問題だ。

 それに、デュクシ、ナーリア、ライゴス、ショコラ……こいつらも十分強い。強いが、これだけの数を相手に出来るか?


「グリージャって言ったよな? お前さっき魔物の一人が、魔王が来るって言ったんだろう? ならそいつは幹部クラスの可能性がある。そういう奴らがどのくらい居たかとか分かるか?」


「それが……まず里に言葉を話す魔物が一人現れて、降伏とアーティファクトの献上を求めて来たんです。ですが後ろに控える魔物の軍勢にどれだけ幹部クラスが居るかはちょっと……」


 ……まぁ、それもそうか。

 それにしたってアーティファクトの献上、ねぇ?


 俺はアシュリーに視線を向けたのだが、見事に目を逸らされてしまった。


 やっぱりこいつが持ち出したアーティファクトの事なんだろうなぁ。


「アーティファクト渡して帰ってもらえよ」


 それが出来るならそれが手っ取り早いんだけどなぁ。どうせ無理なんだろう?


「それが長老達がアーティファクトを探しに宝物庫に行ったんですけどどこにも見当たらないそうで……」


 でしょうね。


 そうなってくるとやっぱり全面戦争しか無いだろう。

 出来る限り魔王到着までに魔物の数を減らす。

 そして本人が来たら出来る限り迅速に俺とめりにゃんで速攻をしかけてぶっ殺す。


 作戦も糞も無いがこれが一番分かりやすくていい。


「私としてはエルフが滅ぼうがどうでもいいんんだけれど、ここで魔物達と全面戦争っていうのも悪くないんじゃない?」


 アシュリーはやる気だ。

 さっきの事でフラストレーションとかもたまってるのかもしれない。


「そうと決まれば皆でまず里へ行くわよ。それでさっさとその幹部だか幹部クラスだか知らないけど半殺しにして詳しい事吐かせればいい」


 相変わらず決めたら行動が早い。

 そして言ってる事が基本物騒だ。


「クソ魔物共に私の力を思い知らせてやる。私はちゃんと強いんだから!」


 ……こいつショコラにやられた事大分根に持ってるなぁ。

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