ぼっち姫、古代竜と謎の少女。
「な、何の為にそんな事を……?」
「……別にいいでしょそんな事。気の迷いよ」
アシュリーは一際険しい顔をして俺の質問をごまかした。
「お前もしかして……俺が死にかけた事に責任感じてたのか?」
「うっさい。そんなんじゃない。アンタがアーティファクト持ってればパーティの戦力が潤うと思っただけよ」
この女は素直ではない。
きっとあの時、アシュリーの代わりに自爆した俺を助けようとしたんだろう。
メディファスと同じような状況だったとしたら、あの後アーティファクトを手に入れた筈だ。
おそらく自我を持っているタイプでは無かったんだと思うが……。
そのアーティファクトを、俺の命を繋ぐ為に使ったのだろう。
なまじアーティファクトの修復作業なんてやってたから多少の知識があって、それが可能だと気付いてしまったんだろうな。
「アシュリー」
「……何よ」
「俺が今こうして生きてるのはお前のおかげだったんだな。ありがとう」
「ばっ、馬鹿じゃないの? 私はアンタがまだ使えると思ったから、出来ると思ったからやっただけよ。それなのにありがとうとか、馬鹿なんじゃないの?」
「もし本当にアシュリーが俺を利用する為にやったんだとしてもいいさ。俺が今生きてるのがアシュリーのおかげってのは変わらないからな」
「勝手にそう思ってればいい」
「おう、そうするよ」
このツンデレ毒舌ロリ賢者は、扱いづらいし質が悪いし横暴だし自分勝手な奴だけれど、根はいい奴なんだ。
「まぁその話はいいの。本題なんだけれど……ナーリアの報告にあったマリスってのに興味があるのよ」
「おいマリス、お呼びだぞ」
「きゅ? きゅっぷぷい♪」
最近のマリスは俺の頭の真上じゃなくサイドにくっついてる事が多い。
ぶっちゃけ真上にでかいリボンがついてるとお子様っぽいのでサイドの方が好み。
で、マリスは俺の頭からテーブルの上にぽんっと飛び降りて毛玉状態に戻る。
「……なるほどね……確かにこれは見た事ない生き物だわ。これが人間で、古代竜だって話だったけど?」
マリスの事についてはちゃんと報告してたのか。ナーリアの中でさほど重要な問題ではなかったらしいな。
「ナーリアのスキャンってスキルで調べたら人間、およびエンシェントドラゴンって出たんだよ。しかも最近マリスがたかびーなお嬢様になりやがった」
「ごめんちょっと意味分からない。アンタ何言ってんの?」
またこの女はゴミを見るような目で俺を見やがって……。嘘は言ってねぇぞ?
アシュリーにも分かるようにキャメリーンを倒した後のあの声についてアシュリーに説明してやった。
その話についてはライゴスやめりにゃんも驚いていた。デュクシとショコラは別にどうでもよさそうな感じだったが。
「……へぇ。もしかしたらこの変な生き物は本当に人間かもしれない」
「何か分かったのか!?」
「分かんないわよ。勘違いしないで。私はアンタの話を聞いて考察してるだけ。何か特別な分析スキルを持ってるわけじゃないから」
……それもそうか。
分析等がメインのメディファスでさえ分からないんだからなぁ。
「私はね、封印系の魔法を疑ってる。……つまり、このふわふわの生き物の中にそのお嬢様だったり、古代竜が封印されてるんじゃないかなって思うのよ。まぁ古代竜って辺りはかなり眉唾だと思うけれど」
……このマリスの中に封印?
「そういえばその女の声は、このマリスにアーティファクトや、その残滓の残る物を食わせろと言っていた。それは何か関係あると思うか?」
それを聞いた途端アシュリーの顔色が変わる。
「アンタそれをなんで早く言わないのよ。古代竜、エンシェントドラゴンって言うのはね、魔力を主食にしているの。アーティファクトには大量の魔力が込められているから、それを食わせろって言ってたのなら古代竜って話が信憑性を得てくる」
マリスが……魔力を食う? もしかして、特にあの首輪以外に食事を必要としていなかったのは俺の魔力を食ってたのか?
「ちょっと試してみましょう」
アシュリーは立ち上がって、奥の小さなテーブルの方へ行き何やら小さな水晶玉みたいなのを持って帰ってきた。
「それは?」
「私がアーティファクトを模して作った疑似アーティファクト……の、出来損ないよ」
「疑似アーティファクトだと!?」
「出来損ないだって言ったでしょ? 構造は近い所まで出来たのだけれど私には圧倒的にサンプルが足りなすぎるのよ。ただそれっぽい魔力の器が出来ただけ。これには私の魔力が込めてあるから、もしその声の話が本当ならこれはいい食事になる筈よ」
アシュリーがそれを持って席につくやいなや、マリスが「きゅーっ!!」と言って突然形を変え、ばくり。とアシュリーの手ごと食らいついた。
「ひっ、な、何するのよっ!!」
……まぁ、初見じゃ驚くのも無理はない。
他の連中も、ナーリアとライゴス以外はかなりビビッてる。
ふわふわマリスは、今は茶色いぬるっとした液体みたいになってアシュリーの手にまとわりつき、ばりぼりばりぼり言いながらその疑似アーティファクトとやらをたいらげた。
「あ、アンタよくこんな物騒なもの頭にのっけてたわね……」
あぁ、俺もちょっとだけ心配になってきたよ。
そして……。
『はははは! おーっほっほ♪ 今回はなかなか早いじゃない! 愚民からやれば出来る愚民くらいにはランクアップした事を認めてあげてもよくってよ!』
……また変なのが降臨したわぁ。
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