第七章:ぼっちな姫と新たな魔王。
ぼっち姫、両手に少女。
おかしい。
俺達は今エルフの森の手前くらいまで来ていた。
ナランの街を出てから二日ほど経過している。
何が面倒ってエルフの森に辿りついてからアシュリーの住んでる家まで三日かかるって事だ。
まぁそれは今はいい。おいといて、そんな事よりも……。
エルフの森は以前来た時静かなもんだったのだが、今は五分も歩けば魔物に遭遇する。
これも新しい魔王になった余波なのか……?
でもわざわざこの辺の低級な魔物にまで洗脳をかけるほど魔王だって暇じゃないだろう。
この近くに居るってなら話は別だが。
それこそそんな暇人じゃない事を願いたいね。
……いや、むしろこんな人の気配がないような場所で魔王が襲ってきてくれりゃぶち殺してハイ終了。って流れもアリではある。
そうすれば俺の体は元に戻るって話だったしな。それもどこまで信じていいのやら不安だが……。
そもそもあの野郎本当に神様なのか?
神が存在する事自体俺は眉唾だと思ってたし、それは今でも変わらない。
正直な所、本当に神様かもしれないし、違うかもしれないと考えていて、もし違うならそいつは何者なのか。
アーティファクトの力を得て無敵状態だった筈の俺に一方的に呪いをかけられるような相手……ちょっと思いつかない。
そんな奴が、私は神だというのであれば本当なのかもしれない。
少なくとも今の俺は奴の言う通り魔王を倒すしかないのだ。
自分の体を取り戻す為にはそれが一番確率が高い。
今は、だが。
「貴様らこの我をイオン・ライゴスと知っての狼藉かぁっ!!」
ライゴスがなんだかノリノリで大暴れしている。
狼藉ってお前……。言葉も分からねぇ低級の魔物にそんな事言ったってしょうがねぇだろうよ。
しかし以前ニーラク付近の遺跡で会った魔物はめりにゃんに攻撃するような事は無かったのに、こいつらときたら見境なしだ。
いや、むしろあの洞窟に居た魔物だけが特殊だったのかもしれないな。
『あの遺跡にいた魔物は恐らく旧時代からあそこに住み着いていたのでしょう。狭い範囲で魔物同士で殺し合いをしていたらすぐに絶滅してしまいます。無駄な争いをしないようにしていたという事でしょう。魔物同士ならば、ですが』
あのさぁ。ご高説ありがたいんだけれどよ、前から言ってるように勝手に心を読むんじゃねぇよ。
『たまには喋っていないと存在を忘れられてしまいそうで』
たまには役に立たないと、の間違いだろう?
『……』
「セスティ? どうしたのじゃ?」
魔物とライゴスの戦いをぼけっと眺めていたらめりにゃんが不審そうに俺を見上げてくる。
「あ、あぁ。このあたり随分魔物が多いなと思ってな。前来た時はこんな事なかったんだが」
「そうじゃのう。……特にこのあたりにいる魔物はちょっと気が荒いみたいじゃ」
何かあったのか……それとも魔王が何かしたのか……。
「とにかくこう邪魔されるとなかなか進めねぇな。おいライゴスさっさと片付けちまえよ」
「もう終わったのである! 我に逆らう事は魔王を敵に回す事と心得よ!」
なんか変な本でも読んだのかこいつは……。
「成敗っ!!」
ライゴスが相変わらず頭だけぬいぐるみのマッチョ姿で魔物を倒し、決めポーズをしたところで時間切れになり、ぽんっとライぐるみに戻る。
本来森の中とかなら元の姿に戻してやってもよかったのだが、ライゴスは目立ちすぎるのでエルフに見つかったら大騒ぎになるから結局このままになった。
最近は割と本人も気に入ってるっぽい雰囲気があるから別にいいだろう。
「おいそっちはどうだ?」
「ナーリアそっち行ったっす!」
「分かってます! はぁっ!」
別方向から襲ってきていた魔物に対処していたデュクシとナーリアがちょうど最後の一匹を仕留めたところだった。
俺はといえばなんだか右腕にショコラ。左上にめりにゃんが絡みついていて歩きにくくてしょうがない。
「姫っ! こっちは終わりましたので、その……私も仲間に入れてもらっても……?」
「だめなのじゃ!」
「……ダメ」
両脇からナーリアに冷たい声と視線が向けられる。お前も嫌われたもんだな……自業自得なので庇う気にもなれないが。
「そんなぁ……その天国に混ざれないなんて……。でも、観賞するだけで、こう胸が苦しくなってきます」
「キモイのじゃ」
「……グイグイくる人苦手」
「だそうだ。俺がこの二人の保護者やってるうちは半径一メートル以内に近付かないように。この子らの教育にお前はよろしくない」
「そ、そんなぁぁぁぁっ……さすがにそれは悲しいです。姫にすら触れないなんて……」
いや、それは元からダメだからね?
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