ぼっち姫、エルフの森へ。
目的地、といえばもう一つ気になる場所がある。
ローゼリア王国だ。
別れ際にテロアに言われた事がとても気になっている。
キャメリーンの一件の後、騎士団が引き上げる際、奴に言われた。
「そういえば自分はその頃遠征に出ていて全然知らなかったんですが、ローゼリアは今外界から隔離されているらしいんです」
何言ってるか分からなかった。
奴が言うには、突然ローゼリア城と城下町全体を覆うように謎の障壁が発生して中の様子が一切分からなくなったらしい、との事だ。
テロアが聞いたという話によれば、その障壁が現れたという時期と、俺の体がこうなった時期はほぼ一致する。
ローゼリアにも、いつか行かなければならないかもしれない。
この体が本当にローゼリアの姫さんの物ならば、無関係とは考えにくい。
もしかしたら神がどうとか魔王がどうとか以前に、こちらでこの体の問題を解決できる可能性だってある。
しかし、この体の入れ替えには神の力が及んでいるのだろうし、簡単にとはいかないだろう。
一番確実なのはやはり与えられた仕事を全うする事。
つまり魔王の討伐だ。
倒した後に、それは魔王じゃないとか本来魔王はめりにゃんだとか言い出したら神だろうが俺がぶっ殺す。
「じゃあ次はエルフの森に行くって事っすか? 楽しみっすねー♪」
「エルフ……きっと美少女が沢山……うふ、うふふふ……」
翌朝。
次なる目的地を皆に伝えると、リアクションは大きく二つに分かれた。
一方はデュクシとナーリア。こいつらは概ね意味は違えど楽しみにしているパターン。
もう一方は……。
「エルフ……であるか。うーむ」
「エルフ……儂あいつら苦手なのじゃぁ……」
この二人。
ライゴスとめりにゃんはどうやらエルフが苦手らしい。
「お前らエルフに何か嫌な思い出でもあるのか?」
「いや、我は特にエルフが嫌いとかいう訳ではないのであるが……その……」
なんだ? なかなか煮え切らない奴だ。めりにゃんもなんだか複雑そうな顔をしてうーんうーんと唸っている。
「儂の時代になってからはそうでもないんじゃが、魔王軍は比較的エルフに対してかなり圧力をかけてきた歴史があるのじゃ。だから、どちらかというと一方的にこちらが嫌われているというのが正しいかのう」
あー。
種族的な問題か。それは考えてなかったな……。
要するに今までの経緯があるから魔族ってだけでエルフからは嫌われるって事か。
「まぁその辺は気にしなくてもいいよ。エルフの森に行くっていってもエルフの集落に行く訳じゃないから」
「えー、じゃあエルフには会えないっすか?」
「エルフ美少女……」
とりあえずお前らは黙ろうか。
「これから行くエルフの森の連中は一度会った事があるし、秘密の入り口も知ってるからわざわざあいつらに会う必要はないよ。目的地は森の隅っこに住んでる奴の家だから」
俺の発言に皆が頭にはてなマークを浮かべているのが分かる。
なので、とりあえずこれから行く場所の事、どんな奴の所へ行こうとしているかなどを簡単に説明した。
「じゃあこれから会いに行くのは姫の元パーティのハーフエルフって事なんすね! 大賢者とか凄いっす!!」
「あ、あああアシュリー様と言えば多くの冒険者達が是非パーティにと拝み倒してことごとくフラれたというあの大賢者アシュリー様ですよね!? 一度お会いしたかったんです!」
……デュクシは能天気に騒いでるだけだからいいとして、ナーリアの奴勇者パーティオタクだったのか? 俺の事も最初セスティ様とか言ってたし。
てっきり俺に憧れてるのかと思ってたのに誰でもいいのかよ。
軽くその事実にイラっとしてる事に気付いて、俺は何に腹を立てているんだ、とくだらない考えを頭から追い払う。
そもそもリュミアの話には一切食いついてこなかった時点で勇者パーティオタクとかではない。
どちらかというと……。
「アシュリー様って小さくてぺたんこでとっても可愛らしいのに博識で大賢者様で物凄く強い上に可愛くて麗しくて愛らしいんですよね!?」
可愛いが二回くらいあった気がするがまぁいい。
本人を見てなきゃ噂が独り歩きして、そういう印象を持ってしまうのも仕方がない。
本当はかなりの毒舌ロリ大賢者だ。実力だけは本当に折り紙付きだが、自分が面白いと思った物以外には全く興味を示さないし、自分が嫌いな物や人に対してはとことん徹底的にやる困った奴なのだ。
あーあ。久しぶりに顔は見たいし聞きたい事も山ほどあるんだが……。
今から気が重いなぁ。
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