ぼっち姫、ショコラの壮絶?な過去。
その夜、みんなが気を使ってくれてショコラと二人で話す時間を取る事ができた。
テントから少し離れた草むらに転がり、今までの事を話しあう。
そうでもしないとお互い離れていた時間にいろんな事がありすぎて再び家族という実感がわかないのだ。
俺はショコラに今までにあった事を一通り語った。
家を飛び出してから冒険者になって経験を積み、リュミアに出会った事、死にかけた事、凄い力を手に入れた事、神の使いを殺して呪われた事、そしてリュミアに逃げられた事。
それからデュクシとナーリアと出会い、パーティを組むことになった事、マリスを拾った事、ライゴスを倒して仲間にした事、めりにゃんと出会った事やその正体。メディファスの事などを順を追って話して聞かせた。
「……私が言うのもなんだけど、おにいちゃんも大変だったんだね」
なんだかかなり哀れみがこもった視線で見つめられる。
「でももう大丈夫。私がずっと一緒だからね」
そう言ってショコラが俺の腕に絡みついて体を密着させてきた。
うーん……俺の知ってるショコラとは最早別人で、正直めちゃくちゃ緊張するというか、その、うまく説明できない。
「じゃあ今度は私の番だね。おにいちゃんを探そうってパパとママに言ったんだけど……」
まぁあの両親だからなぁ。
「ほっとけって言われただろ?」
「ううん。あれ? そういやいないな。って」
思っていた以上に酷い……。
俺の親は昔は名のある剣士と女武闘家だったらしい。
らしい、というのはあの二人は冒険者だった頃の事なんて語らないし、家に装備品もなければ、見ていてもそれらしい片鱗を全く感じられないのだ。
何より、適当な性格すぎて放任主義どころか無関心主義を貫いているような奴等だった。
だから俺の事も放っておけって言うとは思っていたが、まさか居なくなった事に気付かれていなかったとは……さすがに少しショックだ。
「これはダメだなって思ったから、私一人でおにいちゃん探しに出たの」
「おいおい危ないだろうが。お前それ幾つの時だよ」
「……九歳?」
「俺が飛び出してすぐじゃねぇか! 九歳の幼女が一人で旅に出るとか危なすぎるぞ!? 大丈夫だったのか?」
「ううん。近くの街から探そうと思って家を出たあと人さらいの人に連れていかれて奴隷として売り払われたよ」
ショコラは俺の腕を抱きかかえて、肩に頭を預けながらとんでも無い事を言い出した。
「ど、奴隷って……それでどうした? ひどい目にあったのか……?」
「私を買ったのは売春? とかいう仕事を斡旋してる人。すっごく綺麗でスタイルのいい……」
「いやいやいやいやちょっと待て! 待ってくれ」
いきなり聞きたくない展開になったぞ。
俺が家を一人で飛び出したせいで九歳だった妹が売春? 勘弁してくれ。
「どしたの?」
「どしたの? じゃねぇよ! お前そいつの所で客取らされてたのか!?」
「……? そうだけど?」
今俺はどんな顔をしているだろうか。
どこの誰かも分からない客達に怒りと殺意を止められない。
もとはと言えば奴隷としてショコラを買った女、さらには元凶の人さらい。
どうにかして突き止められない物だろうか。絶対にぶち殺して……。
「私そこでいろんな技を身につけたよ」
風呂で俺にやってきたような卑猥な技をそこで覚えたっていうのかよふざけやがって。
「どうしたの? ……怒ってる?」
「お前にじゃねぇよ。そのきっかけを作った俺自身や人さらい、買主、客のキモデブオヤジ共、全部に殺意がわいてるよ」
「キモデブ……? 私のお客さんはみんな綺麗なお姉さんばかりだったけど」
……ん?
あれ、なんか思ってるのと違うの?
ちょっと自信なくなってきた。
「私は、売春のお仕事してる若くて綺麗なお姉さん達を癒すお仕事してた」
んん??
「えっと、ごめん。俺の理解が追い付かないんだけど、それひどい目にはあってないの……?」
「ひどい目って? たまに疲れてるお姉さんに怒鳴られたりとかはあったけど、基本的にはこっちがいろいろしてあげて、疲れとストレスを取ってあげるんだよ?」
「……お、おう。つまり、えっと……なんて聞けばいいのかわかんねぇな」
「何が聞きたいの? なんでも答えるよ? 私の事は気にしないで言って」
「そっか。処女なの?」
「……おにいちゃん、さすがに私でもちょっと引くよ?」
あれ、何か失敗したらしい。
ショコラが俺の肩に預けていた頭を離し、俺をジト目で見つめてくる。
「ご、ごめん。俺が心配だったのは性的な意味でひどい目にあってたんじゃないかっていう事で、その……」
「ふふっ♪ 分かってるよ。おにいちゃんは心配性だもんね。でも大丈夫だよ。私そういう仕事はしてなかったから。向こうからのお触り禁止のお店だし相手は綺麗なお姉さんばっかりだったし」
そ、そうなのか。
それならいいが……。
いや、いいのか? もう価値観が崩壊していてよく分からない。
どちらにせよ性的な仕事には間違いないよな?
「俺は、ショコラが辛い思いをしてきたんじゃないかと心配だったんだが……」
「辛い? どうして?」
「いやいや、いくら相手が女だからってそういう仕事だったなら嫌な思いしてたんじゃないかと……」
ショコラは小首をかしげながら俺の顔を見つめて言った。
「私、おねえさん大好きだから大丈夫だよ?」
……えっ?
「おにいちゃんがおねえちゃんになってるのびっくりしたけど……」
ショコラがさらに俺に引っ付いてきて、顔を俺の耳元に近付け、耳元に吐息を吹きかけるように、続きを告げる。
「びっくりしたけど……」
えっ、えっ?? なんか展開がおかしい。
思ってたのと違くないかこれ。
「うれしい……なっ♪」
んんんんんんんんんん?????????
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