ぼっち姫、天敵にめちゃくちゃにされる。
ショコラが耳元で囁くのがくすぐったい。
なんか、凄まじく嫌な予感と違和感。
かぷっ。
〇¥△×●$▽ק◎!!!
突然みみたぶを齧られた。
慌ててショコラを引きはがし、「なっ、お前何すんだよ!」と叱ってやったのだが……。
その瞳はとろんとしていて、口元はだらしなく半開き、うっすらよだれすら垂れそうになっている。
おいおい、マジかよそういうキャラはナーリアで間に合ってるんですけど!?
「ねぇ……おにいちゃん。……おねえちゃん? どっちでもいいや。私、もう我慢出来ない」
「ま、まてっ! 落ち着け! 話せば分かる!」
「おにいちゃんが何言ってるかわからない」
わかんねぇのはお前だよ!?
「ほら、テントに居るナーリアになら何してもいいからっ!」
「ああいうグイグイ来るタイプは苦手。こわいし」
あぁ、それは分かるよ。わかるけどもぉぉぉ!
「大好きなおにいちゃんだけなら我慢できた。綺麗なおねえさんだけなら我慢できた。だけど……綺麗で可愛いねえさんなおにいちゃんなんて我慢できる訳……ない!」
ぎゃぁぁぁっぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!
言うが早いかショコラは俺に襲い掛かってきて、まず俺の口に何か布の塊を詰め込んだかと思ったら一瞬で関節を決められ全く力が入れられなくなる。
俺が反応できない程のスピードで、本気で抵抗しようとする俺を簡単に無力化していく。ニヤケ顔で。
いきなり初手で口に何か詰めてくるあたりプロの犯行だ。
決められた関節が痛い。
全身が軽く痺れたような感覚で、動くことが出来ない。
「おにいちゃん体硬いから……簡単」
ショコラの手が俺の服の中に滑り込んでくる。
なんとかやっとの思いで口に詰められた物を吐き出すが、時既に遅し状態で体への圧迫と関節の痛みでかすれ声しか出せない。
「お、お前……実の兄に何してるか分かってんのか!?」
「うん。私もう倫理観とか、ないから」
目がヤバい!
この女ナーリアとちょっと違う方向でヤバい!
しかも俺にとってこいつの能力は天敵ともいえるようなっひゃぁぁぁぁっ!
「ちょっ、や……やめっ、ショコラ。今ならまだ怒らないから、な?」
「怒られてもいい。辞めたくない」
ショコラの手のひらが俺の体を這い回る。
ヤバいって、ほんとに……これ以上は私、どうにかなっちゃいそう。
妹相手にこれ、は……ダメだってば。
「ショコラ、お願いだから……もう、辞めて」
「……大丈夫。すぐ良くなる」
んぁっ……。こ、このぉ……。
こんな所で、みんなが居るテントのすぐ傍で、こんな野外の星空の下で、妹に……? 嘘でしょ……?
「力抜いて」
ショコラが私の首筋に吐息を吹きかけ、軽くペロッと舐めた。
「ひゃぅっ」
「……可愛いよ。私に任せれば大丈夫だから……ね?」
ね? っじゃ……。
「ね? っじゃねぇーんだばかやろーっ!!」
私はもう本気で頭にきちゃって頭の中いろんな意味で変な感じになって爆発。
絡めとられてる腕を無理矢理自分でへし折ってショコラの束縛から逃れた。
「えっ、 おにいちゃん腕折れてるよ……? ダメだよそんな事したら……」
「……だぁれのせいだと……」
ショコラを睨みながら私は自分の腕に回復魔法をかける。
自然治癒すら待っていられない。
「お、おにい、ちゃん……? その、ごめん……なさい」
「お仕置きよっ!! 覚悟しなさい!!」
いつかみたいな不覚は取らない。
私はもう本気で怒った。
妹だからとか女の子だからとか人間だからとかそんな甘い考えは消し飛んだ。
興奮しすぎて正常な思考回路なんて死んだ。
「サンダーランス! サンダーランス!」
私の繰り出す雷魔法をショコラが慌てて回避する。
「ファイアーブラスト! アイスコフィン! ウィンドブレイド!!」
全て初級の魔法。
だけど私が放つその魔法は一発一発が確実に大地を抉り取るクラスになっていた。
「な、なんじゃなんじゃ!? 何事じゃぁっ!?」
めりにゃんが慌ててテントから出て来た。
他の連中もだ。
「死にたくなかったら大人しくしてなさい! 私はこの破廉恥妹にお仕置きをしなきゃいけないのよぉぉっ!!」
「お、おにいちゃんごめん! ごめんなさい!!」
「ごめんで済んだら今すぐ世界平和よ!」
私はとにかく片っ端から魔法を放ちまくった。
それでも、しばらくすると少しだけ冷静になってきたので本気で当てようとは思ってないし魔法もあまり広範囲、高火力の物は使ってない。
あくまでもお仕置きが目的だから。その代わり、少しばかり痛い目には合ってもらうし、もうこの妹は口で言っても分からない。
……うん、最悪死んでなきゃ治してあげるから!
こんな事で妹を殺しちゃったらトラウマになっちゃう。
十分さっきまでのがトラウマ化してるんだけどね!
魔法を回避して飛んだその足元を前もってえぐり取ったり、地雷魔法をしかけて踏んだ瞬間に爆発させたりしながらショコラを追い詰めていく。
「お、おにいちゃん、本当にごめんなさい……もうしないから許して」
「……本当でしょうね?」
ショコラが何度も何度も首を縦に振る。
あちこち服がボロボロになっていて、顔や手足も煤だらけ。
ちょっとやりすぎたかもしれない。
「しょうがないなぁ……今日の所はこれで許してあげる。感謝しなさい」
「うん。ありがとう」
ショコラが涙目で私に抱き着いてきた。
こうしてれば普通に可愛い妹なのに……まったく。
私に抱き着いたショコラが、私の耳元で囁く。
「次はもっと良くしてあげるね」
つい加減を忘れて妹の頭をぶったたいた。
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