ぼっち姫、卑猥な絶技で尊厳は死滅する。
ガタッ!!
悟った。
一瞬にして全てを悟った。
俺は慌てて立ち上がり、直ちに風呂場から逃げ出そうとしたのだが、立ち上がった分浴槽の中で余裕が出来たのかピンキーキャットが足を延ばしてきて一瞬で俺の足を絡めとる。
バランスを崩してびだんっ!! と思い切り顔面を床に打ち付けてしまった。
「いってぇぇぇぇ!!」
「なぜ逃げる?」
「お、お前は多分セスティに会わない方がいい! いや、絶対会わない方がいい!!」
「それは貴方が決める事じゃない」
俺が決める事だってば!!
いっそ這って逃げようとする俺の背中にピンキーキャットが馬乗りになり、腕や足を取られて関節を決められてしまった。
「いでででっ!!」
勿論無理矢理振りほどこうと思えば出来るんだろうけど加減が分からないから怖い。
「話さないのならひどい事をする」
「い、一応聞くけど……ひどい事ってなに?」
「女として一生使い物にならない体にしてやる」
「わわわわわわわ、わかったわかったから!」
怖い、この子怖い!!
「話すからやめてっ! お願いっ!!」
私はそれはもう必死に懇願した。
だって、なりふり構わずに振りほどこうとしたのに体に力が入んないんだもん。
何か特殊な体術か何かなのか分からないけど、関節を決められただけでこんな事にならない。
多分前みたいに毒とか、そういうんでもない。
ピンキーキャットが私の背中に覆いかぶさるように体を密着させてきて、空いてる手を私の背中から下の方へすぅ~っと、指先でゆっくりなぞっていく。
「ひっ、ひぃぃぃっ!!」
「話す気になった?」
「なったなった! ちゃんと話すからほんとやめてごめんって!!」
「信用できない。逃げようとした分の罰は受けてもらう」
そう言ったかと思うと彼女の指がとても人間業とは思えない動きで私の体を這い回った。
「やっ、やめてって、ね? ってちょっ、どこ触ってっ、だっ、ダメだってば! ひぃっ! あぅ……ごめんもう許して……」
もう、無理……いろいろ、無理。
「許して……ショコラ」
彼女の卑猥な技が止まり、やっと私は解放される。
死ぬかと思った。
人として、女として、男として、すべての尊厳を殺される気がした。
「なぜ?」
「な、何が? とりあえず上から……どいて……」
「ダメ。ちゃんと話さないとどかない」
「どかないなら話さない!」
「ならもう一度……」
「ごめんごめんごめんなさいショコラ!!」
「だからなぜ私の名前を知っている。おにいちゃんから聞いたの? だとしたら私のお兄ちゃんとどういう関係なの?」
ギリギリと今度は関節を絞める手に力がこもる。
「いててっ!! 私はっ……じゃなかった、俺、俺だよ!! プリンだって!!」
「嘘つきは嫌い。どうみても女」
またショコラが謎の技を繰り出そうとしてくる。
「だからその変な技やめろ! 関節技はともかくそっちはやめろ!!」
「貴方が真実を話すならすぐに辞める」
「だから俺なんだってば! 最初に言っただろ!? 今はこんな外見になっちまってるけど中身はプリン・セスティなんだよ!! 説明するからとにかく離せ!! それやめろ!!」
身体が幾つあってももたない。死んでしまう。
俺の中の尊厳が死滅してしまう……!!
「……私達の両親の名前」
「……え?」
「両親の名前!」
「親父がガトー、母親はキャンディだよ!」
「飼ってた犬の名前!」
「にゃんこ!」
「おにいちゃんの部屋に隠してあったえっちな本の隠し場所」
「クローゼット開けて床の右奥が二重底になってる!! って何言わせんだこの野郎!!」
「ほんとうに、おにいちゃん……なの……?」
俺の身体を這い回ったり締め上げたりしていた手から力が抜ける。
俺の背中にぽたぽたと、ぬるい雫が落ちる感覚。
「やっと、やっと会えたぁぁっ」
妹との感動の再会、と言いたい所だが……。
今の俺はこのシチュエーションがあまりに最悪な事と、
妹にアレな本の隠し場所を知られていた事に対するショックでそれどころではなかった。
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