ぼっち姫、女子と一緒にお風呂。
「えっ、ちょっ……いつか来るとは思ってたけど今なの!?」
ガラガラっと風呂場のドアが開けられ、中に入ってきたのは……。
「ピンキーキャット、だったよね?」
「そう」
「なんで今?」
「ここならお互い裸。敵意が無いのも伝えられて一石二鳥」
あの時はちゃんと姿が見えていた訳じゃないけど、間違いなくピンキーキャット。
クレバーに雇われていた殺し屋で、リュミアの協力者。
「うーん。別にそっちがいいなら私は構わないんだけど、せめてタオルで隠すとかしたら?」
「……? どうして?」
どうしてって……私だって……おっと……。
俺だって一応男なんだけどなぁ。
「リュミアからは俺の事何か聞いてるのか?」
「……何も。私の知りたい事を貴方が知ってるってだけ」
そう言いながらピンキーキャットが俺の方に手を差し出し、シャワーを要求してきたので渡してやると、床にぺたんと座ってあちこち洗い始めた。
こいつもしかして風呂に入りたかっただけなんじゃないだろうな……。
はじめてちゃんと見るその顔は、少し童顔気味で……というより、純粋に幼いのかもしれない。
目が大きくて、薄紫の瞳。髪の毛は少しボサボサしてるけど綺麗な薄いピンク。
ピンキーキャットって名前はこのあたりから来てるのかもしれない。
別にまじまじ見る気はないんだけど目の前で体洗ってたら視界に入れない方が難しいよな。
体つきも俺より小柄でめりにゃんよりは大きい、かな?
あーあー。いろいろ見えちゃってるけどいいのかそれ。
なんだかちょっとだけ罪悪感がわいてきた。
細身でガリガリなイメージだったからぺたんこだと思ってたのに意外とあるな。
でかいわけじゃないけど、今の俺より少し大きいくらい?
覚醒時のめりにゃんよりは小さいな。うん。
などと観察していると、ピンキーキャットがシャワーを俺の顔面に浴びせてきた。
「うわっ、何しやがる!」
「邪な気を感じた」
「そう思うならなんでこの狭い浴槽に入ってくるんだよ」
彼女は俺と対面になるように浴槽に滑り込んできた。
ぶっちゃけ二人で入ったらかなりギチギチだ。
嫌でも体が密着する。
これは、さすがにまずいって。
「お前は何がしたいんだよ。もう少し女子として恥じらいってもんをだなぁ……」
「女同士。気にするほどの事じゃない」
「お前さぁ……。俺こう見えて男だぞ?」
一瞬だけ、ピンキーキャットがビクっと震えた。
「そんな嘘には騙されない。どうみても女。……ほら、これは作り物じゃない」
こいついきなり人の胸つついてきやがった。これがナーリアだったらゲンコツもんだぞ。
「戯言はいい。それより私の知りたい事答えて」
「別に俺の知ってる事だったら答えてもいいんだけど、そもそも俺はお前が何を知りたがってるのかを知らないんだって」
リュミアはあの時、俺なら知ってるって言ってただけで内容については触れていなかった。
「……人を、探してる」
人探しねぇ。それが俺の知ってる相手って事か?
心当たりを考えてみる。
俺の知ってる人。仲介屋のおやじ。……まさかあの野郎よそでまた隠し子を……? ってさすがにそりゃ違うか。
他は……武器屋の奴も違うだろうし、もしかしてジービル? でもジービルの家はリュミアだってどこにあるか知ってる筈だしなぁ。
「探してるのは、プリン・セスティという男」
……は?
おいおいおい。
俺何かしたか? こんな幼い子に恨まれるような事をした覚えは……あれか? いや、あっちか……? って違うだろ、俺何もしてないって。 してない……はずだって。
「そ、そのセスティの情報を教えてやってもいいが交換条件がある。お前が勇者リュミアについて知ってる事を教える事。どうだ?」
リュミアに繋がる情報が得られるのであれば多少の事には目を瞑ろう。
「……わかった。それくらいお安い御用」
「よし、じゃあ約束だぞ? それと出来ればもう一つ教えてくれよ。そのセスティは……お前にとってなんなんだ? なぜ探す?」
何もしてないはず。何もしてないはず!
「プリン・セスティは……」
セスティは?
「私の……」
私の?
「おにいちゃん、なの」
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