ぼっち姫、ベッドの中で囁く?

 私はとにかくカジノの中をよく見渡してみた。


 この空間自体は大体五ブロックくらいに分かれていて、それぞれいろんなギャンブルを行なっていた。


「姫ちゃん。億万長者目指すって……ここでお金稼ぎするって事っすか??」


 ほんとにこの子は頭が悪いなぁ。


「まぁそれが次に繋がるって事よ♪ さて、ここはデュクシが頑張る所だからね?」


「よく分かんないっすけど俺がギャンブルで勝てばいいんすよね?」


「そゆこと☆ 何やるかは任せるわね♪」



 デュクシは、まず受付カウンターみたいな所に行って一枚紙幣を渡し、メダルを一枚貰ってきた。


 そのメダルを持ってあまり人が居ないエリアに向かう。


 どうするのかなと様子を伺いながらついて行くと、デュクシがあるテーブルの席に着く。


 そこで行われているのは、細かく数字が沢山書かれている円盤のような物を回し、そこへディーラーがボールを投げ入れる。

 止まった時にボールがどの数字の場所にあるかを考えて賭けるタイプのギャンブルだった。


 これはギャンブルで言えば定番の物だけれど、普通はその数字が赤と黒で分かれてる。

 でもここのは赤、黒、白、黄色の四色に分かれていて、的中させるのはかなり難しそう。


 その分高配当、という形だった。

 完全に運用素になるのでここではあまり人気がないみたい。


「お姉さん。黄色の二十五。これ一枚ね」


 お手並み拝見といこうじゃん♪


 女性のディーラーが、デュクシが賭けたコイン一枚を見て微笑ましそうに笑いながらボールを投入する。


「……あら、お兄さん。すっごく運がいいのね? もっと沢山賭けていたら今の一回で相当稼げたのに残念ね?」


 にっこりと笑いながらディーラーがデュクシに笑いかける。


「いやいや。そんな事ないっすよ。だって一枚が三十枚になったっすからね。じゃあこの三十枚全部賭けて次は黒の十二で」


「はいはい。欲張りは身を亡ぼすわよ?」


 ディーラーは少し呆れ顔をしながらも、一度当てた人が次に大きな賭けにでるのはよくある事なのか、冷静にボールを投げ入れる。


「……嘘、お兄さん本当に運がいいわ」


「知ってるっす。次はまたこれ全部。白の三で」


「ちょっとお兄さん、もう辞めなって。これ以上やったら無一文になるだけじゃすまないわよ?」


 ディーラーがそんな事言っていいのかなぁ?


「心配してくれるんすか? 嬉しいっす。でも俺なら大丈夫っすよ。次お願いっす」


 デュクシがディーラーに笑いかけると、彼女は顔を真っ赤にしながら「し、知らないんだからね?」と言って次を投げる。


 意外とこいつも顔はいいから、身なりを整えて、出来る所を見せてやれば女の子はイチコロなのかもしれない。


 どうでもいいんだけどなんだかなぁ~。

 ナーリアを早く助けてあげなきゃいけないのに女の子たぶらかしてる場合なの?


 勿論これは必要な事だからしょうがないんだけどね。


「ちょ、ちょっと…! どういう事??」


「どういう事も何も無いっすよ。次は赤の六十五に全部で」


「……分かったわ」


 ディーラーがさっきまでとは別人のような真面目な顔をして、次の一投を投げ、それが止まった時、彼女は唇を震わせながらその場に崩れ落ちてしまった。


 そして、大歓声があがる。

 いつの間にか周りにはかなりの人数が集まりデュクシの勝負を見守っていたのだ。


 今の勝負で完全に場の空気を味方にしたデュクシは、ディーラーのお姉さんに「立てるっすか?」と言いながら手を差し伸べる。


 なんだなんだこのイケメン私こんな奴知らないんだけど。


「私の負けよ。私だってね、ある程度好きな場所に持っていく技を持ってるのよ? それなのに……お見事だわ」


「運が良かっただけっすよ」


 そんなやり取りをして、他の卓へと移動する事に。


 元手って意味では十分すぎるくらい手に入れたし、これからが本番。

 さっきの十分ちょっとでデュクシはクリスタルツリーの弓矢が七本は買える大金を手に入れた。


 次は何をしたらいいかなとあちこち見て回る。

 出来る限り高倍率のギャンブルがいいよね。


「……ふぅ。姫ちゃん。次はアレにしようか」


 なんか心なしかデュクシが男前に見える。

 私がおかしいのかな……?

 いや、さっき言葉遣い変だったよ? デュクシがなんか変だ!


「……? 姫ちゃん、そんなに俺を見つめて……どうしたのかな? あまり見つめられると勘違いをしてしまいそうになる……罪な瞳だね」


 ぞわっ。


 キッッッッッモッッッッッ!!!


「デュクシ……? 一体どうしちゃったの!?」


「別に? そんなに俺の事が気になるのかい? 可愛いプリンセスだ」


 デュクシは相変わらず気持ち悪さの極み的な発言をしながらゆっくりとシャンパングラスを揺らしながらその香りを楽しんでいる。


 ……シャンパングラス!?


 こいついつの間に酒なんか飲んでるのよ!?


「こいつに酒飲ませたの誰!?」


 周りでワイワイやってる野次馬に向かって怒鳴ると、恐れを知らない勇者が一人名乗りをあげた。


「あぁ、良い物を見せてもらったからな。俺が一杯奢ってやったんだ。 飲みやすくていい品なんだぜ?」


 そう言って偉そうに私の前に現れたのは真っ赤な鎧を身に纏うどこかで見た男。


「……あんた誰だっけ? どこかで会った事ある?」


「……? 俺は君みたいな美しい女性なら一目見たら絶対に忘れないぜ。だから今日が初めてだと思うよ。……だけど、これから永遠が始まるんだ。俺と君の永遠がぶごぼっ!」


 とりあえず腹が立ったのと気持ち悪かったのとで、他の人からは見えないような角度で普通の人には見えない速さでボディーブロー。

 赤い鎧が一部穴開いちゃったけど許してね♪


 余計な事してくれちゃってー。

 これで予定が狂ったら次はもっと痛くしてあげるんだから!


「怒ってる姫も可愛らしいね。叶わぬ願いとは理解していても、それでも君を俺の物にしてしまいたい。……そんな事を願ってしまう俺を許してほしい」


 やだ……、こんな奴からでも褒められるとドキドキしちゃう……。



 でもそれ以上に、


「あぁ、叶うのならば今夜だけでも君を俺の物にしたい。その綺麗な声をベッドの中で……俺だけの為に囁いてくれないか?」


 キッッッッッモッッッッッ!!

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