ぼっち姫、対抗意識を燃やす。
不本意ながらデュクシの言葉に従い、村を後にする事にした。
リャナの町へ行くには、ここに来る途中で通った森とは逆方向に半日ほど歩く事になる。
村にも馬車があったらしいのだが、避難に全部使われてしまい今では一つも残ってないと村長に何度も謝られてしまった。
ひたすら頭を下げ続ける村長、そして笑顔で見送ってくれる数少ない村人達に軽く手を振って、俺達は新たな目的地へ向けて歩き出した……のだが。
「疲れたのじゃー」
歩き出して三十分もするとめりにゃんがぶつぶつ言い始める。
「本当ならライオン丸に運んでもらうつもりだったのに……なんで儂の方がライオン丸を運んでるんじゃ……」
「おいめりにゃん、なんなら楽に移動できるようにしてやろうか?」
めりにゃんは、にぱーっと瞳を輝かせて「ほんとかっ!? それ頼むのじゃ!!」と大喜びだ。
「そっか。ご本人がお望みなら仕方ない。ナーリア、いいぞ」
「ありがとうございまっしゅーっ!!」
「えっ、き、聞いてないのじゃそれは嫌なのじゃ! や、やめるのじゃーっ!!」
めりにゃんがジタバタと暴れるが、そんな抵抗空しく、一瞬でナーリアに担ぎ上げられてしまう。
「うへへ……私が運んであげますからねぇ~♪」
肩車をされてしまっためりにゃんはしばらく肩の上で必死に降りようとしていたが、やがて諦めて、ナーリアをただの乗り物だと自分に言い聞かせるように何かをぶつぶつ呟き始めた。
「ヒルダ様……お可哀そうに……我がこのような姿であったばっかりに……」
瞳から光を失い、何かを呟き続けるめりにゃんの頭上では、そのボタンのような瞳から一筋の涙を零すぬいぐるみ。
なんだこの絵面は。
ナーリア、めりにゃん、ライゴスという妙なタワーがスキップしながら前進し、「うわわわっ、揺らすなっ! スキップなんぞするでないのじゃ~っ!」とめりにゃんは必死にナーリアの頭にしがみ付く。
おそらく、この女は嬉しいからスキップしているだけじゃなくて……バランスを崩して頭にしがみ付かれる事その物が目的なんだろう。
相変わらず救いようが無い。
そういえば、どうにもデュクシが大人しい気がするんだよな。
「何か考え事か?」
「あっ、姫ちゃん……いえ、別に考え事って程でもねぇんすけど、なんか大事な事忘れてるような気がするんすよねぇ~」
……おいメディファス。ちゃんとうまくやったんだろうな?
『肯定。我の記憶操作は完璧です』
「何ぶつぶつ言ってるんすか~? その腕輪の事は聞きましたけど、ほんとに役にたつんすかね?」
「いや、なんでも無いよ。こいつは……役に立つのかどうか俺もよく分らん。今のところあまり使えない」
『……衝撃の発言』
村を出発してすぐ、めりにゃんの正体とアーティファクトの件はみんなに説明してある。
「しかし本当にナーリアの上の幼女が元魔王なんすか?」
デュクシはいまいち信じられないらしく何度もチラチラめりにゃんを見ては首を捻っていた。
まぁ普段のめりにゃん見てたら信じられないのも無理ないわなぁ。
「でもな、あの魔物の群れをほとんど始末したのはめりにゃんだぞ?」
「うぅ~。それ聞いた時ほんとビックリしたっす……こんな子供が!? って。でも確かに元魔王だって言うなら納得できるかなぁ~って感じっすね。俺ももっと強くならないと」
「そうだな。お前はもうちょっと強くならないとだよ」
俺の言葉にデュクシは項垂れてしまった。
違う違う。別にお前が弱いとかそういう事じゃねぇんだよ。
「まぁ気を落とすなって。正直驚いてるんだ。お前やナーリアは俺が思っていた以上に成長してたし、真剣に俺が鍛えてやってもいいかもしれないなって……」
「マジっすか!?」
俺の言葉が終わる前に凄いテンションでデュクシが叫ぶもんだから驚いて石に躓きそうになった。
「急にでかい声出すんじゃねぇよ」
「ごめんっす! でも、ほんとに姫ちゃんが鍛えてくれるんすか!?」
「ああ。お前にはギャンブル性の高いスキルなんかに頼らなくても戦えるだけの力をつけてもらうからな? 覚悟しとけよ」
「うっす!!」
あの戦いの後、ライゴスに確認を取ったのだが、やっぱり彼が二人に軽く手ほどきをしたり魔剣とクリスタルツリーの弓について使い方を教えたらしい。
それをすぐに実践できるだけのセンスのよさはあるって事だ。
デュクシには運天を使わずに戦えるようになってもらわないと困るし俺が直接ビシビシ鍛えてやる。
……鍛える理由は力の使い方を間違えないようにする為。
それと
ライゴスに鍛えられて強くなりましたーなんてさ、
ちょっと悔しいじゃんかよ。
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