ぼっち姫、ライゴスの扱いに困る。
「……はい。分かってます。……だから、それはちゃんと……えぇ。だから、必要があればこっちから連絡入れますって! だから急に連絡してくるのやめて下さい!」
……なんだ?
眠い目を擦ってぼんやりと部屋を見渡してみると、俺の隣にはひどい寝相でぐーすかといびきをかいているめりにゃんがいる。
確かめりにゃんはナーリアと一緒にベッドで寝ていた筈だが……。
昨夜、俺をベッドで寝かせようとするナーリアを無理矢理ベッドに放り込み、俺のかわりにナーリアの元へめりにゃんを放り投げ、騒がしくなったベッドから目をそらしめりにゃんの悲鳴と助けを呼ぶ声を聴こえないふりをして眠った。
そのめりにゃんがだらしない格好でいびきをかきながら寝ている。
ベッドから落ちてきたのだろうが、この幸せそうな寝顔を見る限り昨夜はなんとか無事に乗り切れたようだ。
そして、そのベッドの上にナーリアの姿はなく、彼女は部屋の隅の方で俺達に背を向ける形で何かをぶつぶつ言っていた。
「もういいでしょう? また定期連絡は入れますから! 切りますね!」
……? 遠隔通信のアイテムか?
「随分高いアイテム持ってるじゃないか」
通信が終わったようなので声をかけると、ナーリアは大げさなくらい肩をビクっと震わせて、一度大きく深呼吸してからこちらに振り替える。
「起きてたんですね。……いえ、私が起こしてしまったのでしょうか? 申し訳ありません」
「いや、それはいいよ。それより面白い物持ってるな」
「えぇ、家族が無理矢理持たせてきた物なんです。定期的に連絡を入れないとうるさくてたまりません」
なるほどなぁ。家族とか俺はもう縁を切ってるが、両親や兄弟なんかが居たら心配で連絡を入れろと言うのも分かる。
しかし通信アイテムはそれなりに高価な物のはずだ。よほどの親馬鹿か……もしくは、
「親か? 大事にしろよ。年齢的に先に居なくなる可能性が高いんだからさ」
「いえ、両親はもう他界してるんです。だからかもしれないですね。姉がやたらとうるさくて」
俯き加減でちょっと寂しそうな顔をするナーリアを見ると、悪い事を聞いてしまったなと後悔が沸き上がる。
「まぁそのねぇちゃんからしたら唯一の家族って事か? だったら心配するのも分かるけどな」
そんなやり取りをしながら着替えると、やはりナーリアはこちらの体を凝視してくる。
「おい変態。あんまじろじろ見るんじゃねぇよ」
「も、申し訳ありません! お詫びに私のを見て下さい!」
「うるせぇよ」
慌てて服を脱ごうとし始めたナーリアを無視して部屋を出る。
めりにゃんの事はナーリアに任せておけば問題ないだろう。
めりにゃんからしたら迷惑かもしれないが、俺以外にも魔物に偏見の無い奴と触れ合っておくのもいい経験だろう。
ナーリアの場合は魔物だとかそういう事じゃなくて可愛いかどうかがすべての判断基準なんだろうけど。
うっとうしい髪の毛を後ろで纏めながら隣の部屋へ向かうと、中にはライゴスとデュクシの姿しかなかった。
「あれ、テロアはどうした?」
「あっ、姫ちゃんおはようございますっす! テロアさんなら朝早くにもう出発したっすよ」
デュクシがベッドから立ち上がりつつ頭をぼりぼり掻いた。
「もう少し騎士団の話とかいろいろ聞きたかったんすけどね。この村には人手が必要だから少しでも早く救援を呼ばないとって言ってたっす」
テロアらしく律儀な事だ。
しかし王都の助けがあればこの村はもう大丈夫だろう。
遺跡のアーティファクトも回収してしまったのでこれ以上この村が襲われる心配もないだろう。
「あの御仁も話せばなかなか面白い人物であった。昨夜はお互い大いに語り合ったのである」
「あ、俺もあの人と話したっすけど思ったより話の分かる人でしたよ」
まぁライゴスの事を受け入れてくれていた時点である程度話の分かる奴だったんだろうが……。
あとはここであった事をどこまで正直に報告するかどうかだな。
魔物に協力してもらった、なんて話をしたら下手をすると反逆罪とかに問われる可能性だってあるし、そこまでいかないにせよ信じてはもらえないかもしれない。
あとは俺の事がどう伝わるかだな。
セスティが居合わせたと言うのか、ローゼリアの姫、つまりこの体の事まで報告されてしまうのか。
その辺の事を話してなかったから少し打ち合わせをしたかったのに……せっかちな男だ。
「まぁテロアはどうでもいい。とにかく俺達の次の目的地はリャナだ。流通の中心だから人が多いし、本格的に情報収集してもらうからな」
「お、例の勇者様の件っすね! 了解っす♪」
あー。そういえば問題があった。
めりにゃんは適当にフードでも被せればいいかもしれないが……。
ライゴスどーっすっかなぁ。
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