ぼっち姫、ハーレムの一員になる。
「うへ、うへへへへ……」
「セスティ~。こやつをどうにかしてほしいのじゃ~」
ナーリアは完全にめりにゃんにロックオンしたらしく、今は椅子に座って自分の膝の上にめりにゃんを座らせ、その腰回りを後ろからがっちりキャッチしている。
めりにゃんは泣きそうになりながらこちらを見つめて必死に訴えかけてくるのだが、なんていうかいろいろめんどくさいからそのまま頑張ってくれ。
ほら、俺と一緒に来るって事はそいつとも一緒なんだし、今後ずっとそういう目に合うんだから今のうちに少しでも慣れておくべきだよ。
…そういう事にしておこう。
「めりにゃん」
「な、なんじゃ? 早くこやつを……」
「あきらめろ」
俺の言葉に彼女はこの世の終わりのような、口をあんぐりと開けて、その瞳からは光がすっと消えていった。
世の中の厳しさってやつをめりにゃんも知るべきだよ。
そこからはナーリアがぐへぐへ言いながらめりにゃんの後頭部に顔をうずめたりなにやらスンスンと匂いを嗅いだりしていても、光の無い瞳でうすら笑いを浮かべたままじっとしていた。
それをライゴスがソワソワしながら心配そうに見つめているのがなんだか面白い。
「とにかく、です。大体の事情は把握しましたがセスティ殿はこれからどうされるおつもりなのですか?」
テロアが場を仕切りなおすように一度咳払いをして俺に問いかける。
「とりあえず俺はリャナに行ってリュミアの情報を聞きこむつもりだよ。それと、ちょっと聞きたい事が出来たから各地で情報仕入れながらエルフの森を目指そうと思う」
「エルフの森……ですか。あそこは人間に対してあまり好意的ではないと聞いた事がありますが……」
「まぁな。でも一応俺は面識自体はあるし、そこまで行ければ仲間だった奴もいるからなんとかなるだろう」
エルフが俺をどういう風に思っているかは分からないし、そもそもアシュリー自体がエルフ達からは爪弾きにされているのであまりあてにならないのだが、それはなるようにしかならないし行ってみないとどうしようもない。
「なるほど。でしたら私共に出来る事はあまりなさそうですね……」
テロアは残念そうに表情を暗くした。
まぁもともと期待してないから気にするな、とは言えないよなぁ。
「俺達への協力はいいからさ、この村の復興の方協力してやってくれないか?」
「はっ、はい。それは勿論。私が王都へ帰り、きちんと事情を説明してこちらに人を派遣します。全面的に復興に協力する事を約束しますよ」
「それは助かりますじゃ。ご面倒をおかけしますが何卒、何卒……」
テロアの言葉にジジイ……村長が見えない目に涙を浮かべながら何度も頭を下げた。
「そんなに頭を下げないで下さい!」とテロアは村長の肩に手をやり、「もうこの村は大丈夫ですから。きっと明るい未来が待っていますとも!」と、正義感溢れる騎士団長らしい励ましの言葉を繰り返す。
「さて、用は済んだし俺達は明日にでも出発するよ」
「そうですか。でしたら私も明日の朝、王都へ向かう事にします。今日はもう暗くなってきましたからね。お互いゆっくり休みましょう」
テロアの言葉でこの説明会は切り上げとなり、俺達は村長に二部屋ほど借りて男女に分かれ休む事になった。
本来ならそこで、テロア、ライゴス、デュクシ、俺。それとナーリア、めりにゃんという振り分けで部屋を分けるつもりでいたのだが……。
「なりません! 姫がデュクシと同室など!!何かあってからじゃ遅いんですよ!? このけだものが寝ている姫に何をするかも分からないというのに……」
「た、頼むのじゃ! セスティはこっちに来てほしいのじゃ!! 儂をこの女と二人きりにしないでほしいのじゃーっ!!」
というナーリアとめりにゃんの熱い説得に根負けして、俺は女子部屋に行く事になった。
一応俺が男って事はわかってんのかねぇ?
とりあえず二人が寝間着に着替えている間は一応背を向けて見ないようにしていた。
ナーリアは「姫なら気にしなくても結構ですのに」とか言っていたが、めりにゃんは正常な態度だった。
「ダメじゃダメじゃっ! いいか、絶対にこっち向いちゃダメなのじゃ! 絶対にじゃぞ!」
聞く人が聞けば、逆に『見ろ』という振りにすら聞こえてしまうほど激しく忠告されてしまったので大人しく着替えが終わるのを待つ。
いや、別にお子様体形状態のめりにゃんの着替えを見たところで微笑ましい以外の感情は沸いてこないのだが。
大きい方ならともかく。
そう、大きい方ならともかくだ。
二人が着替え終わってから俺も寝間着に着替えるが、なんというか女の体だというのに女性二人の前で服を脱ぐというのは妙に緊張するというか変な感じである。
特にナーリアのじっとりとした視線が気持ち悪い。
こいつはこの為に俺をこの部屋に引き込んだに違いない。
「ガハハハハッ! なるほどなるほど。お主もなかなか大変であるな!」
隣の部屋からライゴスのバカでかい声が聞こえてくる。
どうやらテロアやデュクシ達とは随分打ち解けたようで、ライゴス以外の声は何を言っているかまでは分からないものの、わいわいと楽しそうに話している。
あっちは男同士の友情って奴を深めているのだろう。
こちらと言えばだ。
「ぐふふ……うへへ……ハーレム。これはハーレムですうふふふ……じゅるり」
めりにゃんと俺はいろいろな不安により、なかなか眠りにつけなかったのであった。
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