第三章:ぼっちな姫とぼっちな幼女。

ぼっち姫、洞窟探検でつい変なスイッチ押す。

 どーくつたんけん♪

 どーくつたんけんっ☆


 遺跡というからどんなものかと思ったら、入口は普通の洞窟だった。

 つまんないのって思ったけれど、中に入ってみたら世界が一変。

 洞窟の壁面には古めかしい装飾みたいなのがたくさんしてあるし、私が歩くと何かのセンサーみたいなものが働くのか、歩みに合わせて壁に等間隔に配置されたランプに火が灯っていく。

 これならわざわざトーチの魔法で明かりを用意しなくても大丈夫そうだ。


 しっかし足跡だらけだなー。

 その数を見るだけでかなりの数の魔物がこの洞窟内に来ているのがわかる。

 しかしこれだけ人工的だと洞窟って感じもしなくなってきたなぁ。

 確かに遺跡、と評するのが正しい気がする。


 ここは一体何なんだろう?


 そんな事を思いながら歩いていくと急に開けた場所に出る。


「うわぁ……」


 これはもう洞窟じゃないな。

 いつの間にか結構地下に潜っていたのか、あるいは山の中がまるまるくり抜かれているのかかなり天井が高い。

 さすがに天井部分は岩肌そのままだけど周りはしっかり装飾で埋め尽くされていて、神殿みたいな建物まである。


 これは楽しくなってきたわ~♪

 知らず知らずにテンションが上がる。

 やっぱりなんだかんだ言ってこういう場所を探索するのは楽しい。

 そして、テンションが上がってくるとどうしても意識を持っていかれそうになるので気を付けていかないと俺が私で私が俺で状態になっちゃう。


「ぷきゅきゅ~♪」

 私が上機嫌なのが伝わったのか頭上のマリスもピコピコと小刻みに動いては何か歌のような物を歌いだしたりする。


 相変わらず可愛いやつめ。


「それにしてもマリスぅ。お前なんなの? 私が壊せなかった首輪簡単に食べちゃうしさぁ」


「ぷきゅ~?」


 聞いても無駄かな?

 まぁそのうちアシュリーにでも聞けば何かわかるかもしれないしそれまでは保留ね保留。


 神殿になっている空間の奥に行くと、もう少し狭くなっている通路があったのでそちらへ行ってみる。


「ぐるるるるるぐぁぁっ」


 おっ、とうとう魔物が出てきた。


 これはなんだろう?

 人型だけど爬虫類みたいな……いや、どちらかというと魚類のような鱗に覆われていて、よく見ると指の間とかにヒレがついてる。


 半魚人?

 どうせなら人魚連れてこい人魚ぉー!


 半魚人が奥からぞろぞろと二十人くらい連なって出てくるので、狭い通路では攻撃もかわしにくい。


 よって、仕方なく一匹ずつ殴る。

 防御力はあまり強くないらしく一回殴れば頭が吹き飛ぶ。


 仲間がやられても半魚人は気にする事なくぞろぞろと襲い掛かってきた。

 手に持ったボロボロの槍をこちらに向けて「ぐおぅぐおっ」と言いながら次々に突いてくるのでちょっとめんどい。


 こんな時に都合のいい魔法とか何かなかったかなぁ。


 爆炎系の魔法使うと空間ごと熱されて熱くなるし酸素もなくなるからダメ。

 もともとジメジメした場所で水系使うと地面ぬるぬるになって足滑るからヤダ。

 それに半魚人に水がきくのかって話だしね。


 それならやっぱりこれかな?

 水には雷っ!


「えーっと、なんだっけ……さ、サンダーランス?」


 私の手のひらから一直線に稲妻が走り、襲い掛かってくる半魚人を次々にくし刺しにして焦がしていく。


 うーん。雷系の初級魔法だった気がするんだけど思ったより威力が大きいなぁ。

 やっぱりこの魔力のせいなのかも。


 一通り半魚人どもを片付けたのはいいけど今度は大量に地面に倒れてて足の踏み場が無い。


 仕方ないからそいつらの上を踏みつけて進むけど、ぶにぶにぐにゃぐにゃしてたり、焦げてるとこ踏むとがさりと炭化してる部分を踏み抜いて体に足が埋まる。


 うっわめっちゃ気持ち悪い!!


 うっひぃーぐろいぐろい。


 半魚人たちをなんとか乗り越えて奥へ進むと、二股に分かれている場所にでたので探索の魔法を使ってみる。


 探索系と言っても実のところただの音波系魔法だ。

 エコーと言って、かすかな音波振動を飛ばす。

 右は二十メートルくらいで壁に当たった感覚がある。

 あっちは外れかー。じゃあ本来のルートは左ってことなんだろう。


「よしっ!じゃあ右に行こう♪」


 こういうのは外れルートから総当たりがいい。

 行き止まりに何も無いとは限らないのだ。


「……なんもないや」


 行き止まりまで行ってみたけど特に何もなかった。ちょっと残念。

 でもこっちには魔物の足跡がないので、魔物達もある程度の探索魔法か何かを使って正しいルートを調べてるんだろう。


 ん?


 よく見ないと分からないが、壁に不自然なでっぱりを見つけた。


 うずうず。


 これ絶対押したり触ったりしちゃダメな奴だ。


 うずうず。


 ダメだダメだ。

 触っちゃだめだー。


 ぽちっ。


「やっちゃった」


 ……特に何も起きない。

 なんだったんだろう?



 ああいうのってどうしても触りたくなっちゃうんだよなぁ。


 すかっ。


「……えっ?」


 踏み出した足が、地面を捉えてくれなかった。


 意識がスローモーションになる。


「あ、これ落ちるやつだ」


 とか冷静に言ってる場合じゃない。

 飛空系の魔法はまだ覚えてないのよ!


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」


 とかつい悲鳴あげちゃったけど、結構楽しんでる私がいた。


 ……これ下に落ちたらとげとげぐさーっ!とかじゃないといいなぁ。

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