ぼっち姫、神に喧嘩を売って呪われる。

 プリン・セスティだからプリンセス。

それで姫と呼ばれている…わけじゃないんだなこれが。

確かに名前も姫呼ばわりされていた理由ではあるのだが、どちらかというと呪いの方が原因である。


「パーティ探してるのは分かったけどよ、ちょっと待てよ。お前さん確か勇者と大賢者と、それにめちゃくちゃガタイのいい格闘家が一緒にいたんじゃ……」


「勇者、リュミアは……大泣きしながら逃げた。そのおかげでパーティは崩壊だよ。俺はとりあえずリュミアを探すための人員が必要なんだ。魔物討伐しながらの旅が出来れば十分だから適当に紹介してくれ」


「わかったわかった。人はこっちで探してみるからよ。とりあえずお前、その呪いってやつについて教えてくれよ。なんでそんな事になった?」


 思い出したくもないがパーティを斡旋してもらうのだからそれくらいのサービスはしてやるべきだろう。


「親父はエンジャードラゴンって知ってるか?」


「ああ。あの東の果てに住むって言う伝説上の…」


 違う。


「エンジャードラゴンは実在するよ。いや、実在したって言った方が正しい」


「お前、エンジャードラゴンに会ったのか?まさかそれでそいつに呪いを?」


「…いや、実はエンジャードラゴンだったって知ったのは後でなんだよ。東の果てで俺達パーティは旅をしていたんだ。そこにな、地図にも載ってない大規模の軍事国家があってな」


「ちょっと待て。東の果てって海渡った向こう側だよな?国があるなんて話聞いた事もないぞ」


 それがあったんだから仕方ない。

しかもその軍事国家はかなり大きな軍隊を用意してこの大陸に戦争を仕掛けるつもりだった。


それを親父に説明してやると、にわかには信じられないと言った様子だったのだが、


「まぁ仮にお前の言う事が正しかったとしてだ、その軍事国家とドラゴンになんの関係があるんだよ。それに戦争仕掛けようとしてるなら今現在もヤバいって事じゃ……」


「その心配はないよ。本当に突然襲来したエンジャードラゴンの群れがその国、ロンシャンって言うんだけどな、その国を一夜にして滅ぼした」


「エンジャードラゴンの、群れ……?」


「そりゃ凄かったよ。俺達は城下町で宿を取ってたんだけど気が付いたら周りは火の海でさ。ロンシャンはかなり強力な兵器とかも持ってたんだけど全然効かなくて、翌日には瓦礫の山さ」


「お、お前らはよく平気だったな」


「平気じゃねーよ俺なんてお気に入りのフード付きマントが燃えちまったんだぞ」


 親父が「そういう事じゃねぇよ…」とぼやいたのが聞こえた。


「そんでな、いくらヤバい国だからって俺等の宿屋まで燃やされたらさすがに頭に来てさ」


「そんで喧嘩売って呪いを?」


「ちょっと違うんだよな。ドラゴンがそん時十二体いたんだけど、ムカついたから全部殴り殺した」


「…は?誰が?何を?」


「だから、俺が。ドラゴンを。ちょうどその時使ってる剣が折れちまってて武器持ってなかったんだよ」


「いや、そういう事じゃねぇよ」


「でな、ドラゴンを全部ぶっ殺して、やっとこれで安心して眠れるってなったら頭の中に変な声が聞こえるんだよ」


「……もう何も驚かねぇよ。続けてくれ」


 親父は何故かとてもげんなりした表情でこちらを見ている。


「そしたらな、その声が、私は神だ。とかいう訳」


「ごめん、前言撤回。神が出てきたら流石に驚くわ」


「俺は信じなかったよ。うるせーぼけ文句あんなら出てきやがれぶん殴ってやる!って叫んだら……」


「叫んだら……?」


「こうなってた」


「…うん、そっか。続けて」


 自称神とやらが言うには、「お前が殺したドラゴンは神の使い、エンジャードラゴンだ。大罪を犯したロンシャン国を我が命で消滅させたのだが貴様は何者だ。何故邪魔をする」だとさ。


だから俺は「うるせーしらねぇー!」って言ってやった。


そしたらその神ってやつが、貴様にも罰を与えてやるとか言ってどこぞの女の体に精神を入れられてしまったという訳だ。


しかもその腐れ神様は俺に向かってこう言った。


「呪いを解いてほしければこの世界に平和を。我が使いがすべきだった事を代わりに貴様がやるのだ。拒否権は無いぞ?魔王を討て」


 だとさ。


「意味がわからん。それがほんとの神だとして、神はなんでそんなマニアックな罰を与えようとしたんだよ。魔王を倒せっていうのはまだ分かるよ。だからって女の子にならんでも」


「知るかよ。なんでもこの体の持ち主もとんでも無い罪を犯した大罪人なんだとよ」


「ってことは…もしかしてお前の体にその女の精神が入ってる可能性もあるのか?」


「それは解らん。一応その可能性もあると思って調査してたんだけどな、その時にとんでもない事が解っちまってよ…」


 これだよこれ。これが原因だ。


「この体の持ち主な、西の方にあるローゼリアって国のお姫様らしい」


「ひっ、姫様だぁ?おいそりゃ……またどうしてそんな人の身体に」


「だからしらねーって。でも問題はそこじゃねぇんだよ。この呪いの恐ろしい所はな、この状態が長く続けば続くほど、精神が肉体に引っ張られるって事らしい。うちの大賢者がそう言ってたから間違いないだろう」


「精神が肉体に引っ張られる…?」


「この呪いを解かない限り、俺は少しずつ……」



 心まで女の子になっちまうんだよ



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