第一章:ぼっちな姫と微妙な奴ら。
ぼっち姫、パーティメンバーを探す。
一人ぼっちになってしまった。
アシュリーもジービルも帰ってしまったし、リュミアは一向に帰ってくる気配が無い。
俺はまだ諦めきれずに一人で宿屋に残っていた。
……でも、さすがにそろそろ潮時かもしれない。
俺は世界の為にも俺の為にも魔王を倒さなければならない。
だとしたらこの先どう動くのが一番いいのだろうか?
仲間の二人に頭を下げて考え直してもらう?
多分ダメだ。
ジービルはリュミアがいなきゃついてこないしアシュリーはこちらが全員そろっていないとその気になってはくれないだろう。
個人的にはアシュリーだけでも仲間に加えたいのだが、彼女の条件が一番難しい。
……しかた、ないか。
「おい親父。誰かパーティ募集してる冒険者を紹介してくれよ」
ここは冒険者同士のマッチングをしている仲介所。
俺も昔はよくここの親父にお世話になったものだ。
この界隈の冒険者はまずここに登録し、お互いの希望や条件を確認しながらパーティを組む事になる。
何事も一人で動くには危険な世の中だから。
俺は今までのパーティを諦めた。
勿論あれ以上のパーティは組めないとわかっているので、仮のパーティを組み、冒険をしながらリュミアを探すつもりだ。
リュミアさえ見つけて説得できればジービルが付いてくる。そうすればアシュリーの条件もクリアできるのだ。
俺にはアシュリーの知識と経験が必要だ。
魔法に関してはまだまだ教えてもらわないといけない事が多い。
それに、アシュリーが調合してくれる薬が無いと…俺の症状は悪化する一方だ。
このまま手持ちの薬が無くなってしまったら定期的にアシュリーに大金を払って薬を用意してもらわないとならない。
お金は別に困っていないし貯蓄はあるから構わないのだが、毎回アシュリーの住むエルフの森の外れまで行くのが大変なのだ。
俺が使える転移魔法じゃ辿り着けない場所にある。
エルフ族の者だけが直接その聖域まで飛ぶことが出来て、俺みたいな普通の人間は入口までが精一杯なのだ。
そして入口から三日はかかる場所にアシュリーの家がある。
面倒な事この上ない。
とにかく今は全ての解決の為にリュミアを見つけだす事が先決だ。
その為には人手が必要。
新しい街に到着してもそこで情報を一人で集めるのは限界がある。
何人か協力者がいてくれれば情報も集まりやすいという物だ。
なので、わざわざ王都であるベルクエンゼの仲介屋までやってきたわけだ。
「おう、パーティ募集かい?あんた見ない顔だが初めてか?この書類に自分のレベルと冒険者歴、あとはパーティに求める条件を…」
「おいおい俺だよ。久しぶり過ぎて忘れちまったか?」
親父は俺の事を忘れてしまったのだろうか?
「あん?あんたみたいなのは初めてだと思うんだが…それに見た目に似合わず言葉が悪いな。一度話せば忘れない自信があるぜ。あんたこそ誰かと勘違いしてるんじゃないか?」
「おいおい。頼むぜ…確かにもう七年くらい来てなかったが昔はよく来てただろ。それにお前がこの店立ち上げる時だって俺が盛大に祝ってやったじゃねぇかよ。人の金で飲んだ酒で馬鹿みたいに酔っぱらって酒場ですっ裸になったよな?おかげで俺まで一緒に警邏に連行されそうになったのを忘れたとは言わせねぇぞ」
親父が口に咥えていたタバコをぽとりと地面に落とす。
「お、お前……なんでそんな古い話を知ってる?誰に聞きやがった。俺の記憶は間違ってねぇぞ。あんたみたいな若くて綺麗で口の悪い冒険者は知らん」
「…この野郎。まだすっとぼけてんのか?十年前に愛人との間に子供が出来た事嫁さんにバラすぞ!」
「ば、ばばばば馬鹿野郎!なんでそんな事まで……いや、待てよ?お前まさか…」
「やっと気付いたか。ちゃんと俺は定期的に手紙を出してたよな?俺の呪いの事だってちゃんと教えてあった筈だぞ」
親父は顔を真っ青にして「んなアホな」と呟きながら震える手で次のタバコに火をつけた。
「あんなどうでもいいような内容の手紙、いちいちちゃんと読んでねぇよ。確かに呪われたとか言ってた気がするがどんな内容だったか書いて無かったよな……?てかお前ほんとに、あの、プリンなのか?」
「おうよ。てかプリンって呼ぶの辞めろ」
「辞めろっつったってお前の名前だろうよ……それに今のお前にゃよく似合ってるぜ」
未だに訝し気な親父の視線が俺の体のあちこちに突き刺さる。
セクハラで訴えてやろうか。
「俺の事はセスティと呼べと前から言ってるだろ」
俺の名前はプリン・セスティ。
今は訳あって姫をやっている。
「しっかし…随分変わっちまったな」
「うるせー。俺だっていろいろあったんだよ」
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