スイートピー

タッチャン

スイートピー

先日、友人から花を題材にした短編小説を一つ書いて欲しいと頼まれて、私は物語に使えそうな花を少しだけ調べて小説を書き上げた。

私としてはなかなか面白い話が出来たと思っていたが友人はそれを読むなり顔を赤くして、私を睨み付け、

無言で部屋を出ていってしまったのだ。

私は訳が分からず呆然としていた。

後日、友人から理由を話して貰ったが、その話は後程。今は私が書き上げた物語を紹介しようと思う。

物語の内容は以下の様なものである。


彼は体に雷が落ちたが如く、目を大きく見開き、

手足は痺れ、心臓は張り裂けていた。

 彼の視線の先には、赤いシクラメンに水をあげている綺麗な女がいた。髪は短く、優しく微笑む表情を隠す事なく、店の前を通りすぎる男連中に見せつけていた。

プリンセチアの様にほんのり頬がピンク色で、

その口元は薔薇を連想させる程、赤い口紅が良く似合っていた。

 花屋の定員は視線を感じて顔をあげた。

彼と目が合った。彼は目を反らした。その場から逃げた。

 彼の心臓が張り裂ける原因は彼女なのだ。

だが悲しいかな、彼は今まで女性と付き合った経験は無いし、女性と会話をするのも苦手だった。

彼は女性を口説き落とす方法は解らなかったが、

その方法を調べる方法は心得ていた。

 パソコンの前に腰をおろし、インターネットを駆使して、胡蝶蘭の様にしなやかで、スラリとした体型の彼女を自身の恋人にする為に、キーボードを巧みに使いこなし答えを求めた。

 パソコンの画面に次から次へと答えが出てくるのを見つめて、やがて一つの答えが導き出された。

それはこう書かれていた。

「笑顔で近づき元気良く挨拶をする。暗い表情の人から話かけられたら貴方はどう思いますか?やはり女性を落とすなら笑顔が1番大事。」

 彼は何度も何度も読み返して、体に染み込ませた。

そして次の日、彼は15メートル程離れた場所で彼女の様子を見ていた。

ピンク色の薔薇やガーベラが目立つ、綺麗な花束を作っていた。

彼は少しづつ彼女に近づき、元気良く、笑顔で挨拶をしようとした時、彼女と目が合った。また逃げた。

 また次の日、結果は同じだった。

彼は自分を呪った。何故、彼女に愛の告白が出来ないのか、何故、彼女と目が合うと恐怖するのか。

それほど彼女を心から愛していると思い込み、寝床に付いた。

 次の日、彼は自分の頬を叩いて気合いを入れて、意を決して彼女の目前まで到達したのである!さぁ、青年よ、今こそ男になるのだ!彼女の微笑みを君だけのものにするのだ!

口を開きかけたその時、右腕をがっしりと捕まれた。

 振り替えると、警察手帳を掲げた私服警官がいた。警官は言った。

「昨日、彼女から通報がありましてね。署までご同行お願いします。」

 彼は連れて行かれた。



以上が私が書き上げた物語だ。

さて、最初に触れた友人が怒った理由は、私は未だに信じれないのだが、友人は先ほどの物語とまったく同じ事を過去に経験したそうだ。

私が想像して作り出した物語が現実に起こっていたとは何とも面白い話ではないか。

現実は小説よりも奇なり。私はその通りだと思う。

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スイートピー タッチャン @djp753

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