#9

「ママ!」

泣きそうになっていた楓は笑顔で母のところに行く。


「ごめんなー、遅くなって。高速混んでたんだよ。」

父はふぅ。と言ってネクタイを外す。

「正座していたから疲れたわね。足が痛いわ。」

「そうだなあ…」

「ネクタイとかしていたら、肩がこるでしょ?」

「お母さんだって、パンプス履いて歩くの大変だっただろ?よし、楓。ちょっと遊ぶか?」

「うん!!」

こっちこっち!と嬉しそうに父の手を引いた。



キッチンに向かう母に

「夜ご飯食べたの?」と真帆が聞いた。

「ごめんね、食べてきちゃった。…あれ?真帆に『食べて帰る』ってLINEしたけど…?」



「ごめん。LINE気づかなかった…。」

「お母さんはいいけど、皆は食べたの?」

「うん…なんとか…。」



動いている食器乾燥機、お湯を溜めているお風呂。干していた洗濯物を入れているカゴ。

「真帆、ありがとうね。」

「え?」


「これ、全部してくれたの真帆でしょ?ばたばたしていて、お母さん、朝ごはんとかも全然用意出来てなかったし…。楓の送り迎えもしてくれたんでしょ?」



嬉しそうに、涙を浮かべながら、でも笑顔で

「本当にありがとうね。」

と、母が言ったので、真帆も涙を浮かべた。



「頑張ったんだね。ありがとうね。」

母は見てなかったのに、真帆の頑張りを分かってくれてた。



「お母さん…ありがとう…」

泣き崩れる真帆を母は優しく抱きしめた。




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ありがとう。 みたに ゆづき @ydk_m

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