episode:3 「岡山レンジャーは12時に流れる」

 唐突に聞くが、お前はどんな生活を死ぬまで送りたい?


  結婚し、片方から大事な物奪って離婚。死ぬまで自分以外の存在を大切にする。独身のまま生きる。好きな存在や物の為に全部捧げる生活。その他の生活。


  俺はどの生活も素晴らしいと思う。批判されようが他人から強制的に変えられようが、己の指示に従う者こそが美しく見えるのだから。

 ここで俺が伝えたいのは、死ぬまで継続できるかを実行する前によくよく考えてから実行してほしい。という事だ。 


 前置きが長くなったが、お前が決めた人生計画   プランの中でお前が幸せになれる事を祈っておこう。


「虐待児の田中マサシ君、虐擁課の職員に助けられる…か。前は虐待の事故に関するニュース結構あったのに、急に減ったよなー進太郎?」

「3年前に虐擁課が多くの役所に配置されたからな。何でもそこは虐待親が女であっても殺すらしい」

「今に限った話じゃねぇが、物騒だな…」

 

 何時いつも通り働く俺。俺を横目にして話を吹っ掛ける叔父さん。2人だけの店内で、時折話しながら過ごす。


「進太郎、そういや瑠華から聞いたのか?」

「パンドラ持ってた奴の話か?あいつは覚えてる所まで言ってくれたよ。奴は銀髪の女で、身長が160センチぐらい。小学生?と思ったらしいが、プロのスナイパー並みの銃の腕前だったんだと」

 叔父さんが若干驚く。

「治安がわりーとこなら兎も角だが、日本のガキが銃持ち歩いてんのは魂消たまげたぜ…んでそのガキを客に探させろ。ってか?」


 俺は少し安堵する。そして頼む。

「ああ、そうしてほしい。話変わるけど、見舞いに行ったら叔父さんが変な仮面被って見舞いに来た事を知ったよ。あいつは相当恥ずかしかったらしいが」

「頑固なとこあるからな、瑠華は。今度行く時、また変な格好で行ってやる!」

「それで面倒な事…起こさないでくれよ」


 叔父さんと帰って来た子供達相手しながら、今日の仕事終えて帰った。


 翌日仕事は休みだったが、子供達の相手と状況が気になるので店に足を運ぶ。人込みを避けながら向かうが、店を出たラフ姿のオルコを見かける。

 

 店に入った途端、叔父さんに聞く。話によれば奴も叔父さんの知り合いで、情報のプロだから呼んだらしい。


「細かい事は分かんねーが、知り合いの子供が3日前虐擁課にいた銀髪のねーちゃんに助けられたんだとよ」

「奴はそこの職員である…か。今から聞きに行きたいが、建物の構図が分からんうちは安易に侵入出来ないしな…」

「オルコに調べさせてやろうか?」


 俺は申し訳なさそうに「ありがとう。だけど奴は信用しようとは思えない」と伝え、自宅で見取り図をコピーする事にした。


 その翌日岡山市役所へ俺は足を運ぶ。学校だったが仮病を使って休んだ。虐擁課は全国20ヵ所の役所に配置されている部署。少な目の部署だが、俺が岡山市役所を選んだ理由わけは虐擁課の本所だからだ。


 裏口のドアノブを溶かしてから侵入し始めた。パソコン盗みやすくする為、わざと火災警報器を鳴らす。無論、監視カメラを壊せるだけ壊す。

 ラッキーな事に職員は消火器取りに行ったり、利用者を避難させ始める。


 上手く盗み、帰宅途中に調べる。

「奴の記録を残したままだとはとんだ間抜けだな。ご丁寧に次の奴のシフトも残ってるぞ…岡山場近くの住宅街で息子を虐待し続ける男の処刑依頼…か」


 メモを取り、帰宅してからパソコンを壊す。パソコン強奪と器物損壊の罪で捕まり、刑務所内で過ごすのはあんまりだからな。


 奴の出勤予定は2日後の2月1日だ。また学校を休み女を潰す為、バイクで例の住宅街へ向かう。

 奴は金目的で虐擁課に入った女じゃない。という事はあのパソコンで知った。見知らぬ子供達の英雄ヒーローであり続けたい。のだろうが、俺は必ずお前を潰す!


「今から俺は悪しき救世主を狩る正義の悪魔となってやる!」


 到着した直後。俺はターゲットの隣に住む奴に、物を使って見せしめをした。誰もいなくなった家でをしながら、銀髪女が仕事の為に来るのを待つ。


 12時頃にターゲットの家から銃声が響いた。銀髪女の仕事が終わった様だな。奴は早く小型バイクで家を離れたので、同じ様に俺もバイクで追う。

 気付いたのか、女はバイクを飛ばす。


「一人二役など出来ない様だな…だがお前はただ追い詰めるだけだ!」

 内心そう誓う。


 快晴の中、車が少ない道路を走行中に追い抜く…と見せ掛けて、擦れ違いざまに下から奴の右手首を斬った。女が撃った拳銃の弾が頬を掠る。

 バランスを崩したのか勢いよく女は転倒。コンクリートの道路で俺もバイクを止め、止めを刺しに行く。


 うつ伏せの奴に剣先を向ける。

「正義のヒロインもどきに質問しよう。足と手首を斬られ、敵に殺されそうになる気分はどうだ?」

 立ち上がろうとした、青く冷徹な眼差しの女に問う。

「いいものではない…1つ言っておく。今の私はパンドラを所有してない…だがついでにお前の命をこの場で奪おう…」


 嘘だと言いたい…それを許さないのか、銀髪女は素早く盾の様なハートアーツで俺を刺す。幸い俺はまだ戦えそうだ…。

「うっ…」


 銀髪女が突如宣言する。

「他を切り捨ててきた様な眼差しをしてる若造に誓おう…この盾“アポロンの加護”は罪無き子供達を救済する為の道具。私はアポロンを使い、邪悪な悪魔共から子供達を守る守護天使となる!その為の生贄と化せ、名も知らぬ若造!」


 永遠とわに終わらぬ戦闘の歴史を、俺達は今創ろうとしていた…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

魔神ノ恋物語(ラブストーリー) 6様の下僕 @umakunaibou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ