episode:2「野良猫vs魔王を見に来た」
西大高等学校から帰宅してる途中、突如俺に謎のプレッシャーが襲う。「戦おう」と思ったが、叔父さんの奥さんが同じ電車にいると思い辞めた。
岡山駅で降り、敵の目をそらす為ワザと人混みに突っ込む。何よりも俺は禍々しい改造学ランを着用してるからだ。念の為に皮のコートを羽織る。
敵を撒けてラッキー…と言いたいが奴はストーカーの様に追ってくる。
走ると余計怪しまれる上にいらん体力消費をしてしまう。ゆっくり歩くと勘のいい奴だったら即死ぬだろうと思い、目くらましの為としてヤマタノオロチの炎を出す。
怯んでるうちに岡山駅東口のトイレに入った。
以外にも奴はトイレの前で待っていた。赤の他人が沢山いるから攻撃しにくいのか?この女は。
「オルコとかいう奴から俺がパンドラ持っている事を教えて貰ったのか?」
「オルコ?アタシはんな奴なんて知らねーぞ。アタシはあんたを迎えに来たんだよ。」
半信半疑だがとりあえず信用する事にした。敵だったらすぐ俺を殺してるだろうしな。
「まさかお前が魔論叔父さんの言っていた…」
小声で俺が質問し、瑠華も小さく呟く。
「そのまさかだ。ほらあいつが来ないうちにとっとと行くぞ」
「ワイルド思考のお前に言っておくぞ。敵が俺達の近くにいる事も考えろ。ここはカップルを装いながら行くのが得策だ。」
「はあ⁉」から始まる文句を言う瑠華を黙らせる。仕方なさそうに奴は俺に従う。
ただのカップルの様に「このスイーツ美味しそう」等の他愛のない会話をしながら叔父さんの元へ俺達は赴く。
来ても叔父さんの車は無かった。カップルを装いながら待っているのも退屈だ。といって敵には人混みに紛れる作戦なんてのがバレていると思い、叔父さんにすぐ来てもらうよう電話で頼む。
「いい夢見てたのに起こしやがって…」
「駅に向かえに来ると言ってただろ叔父さん。バレてるだろうから時間は稼げるだけ稼ぐ。だから早く来てくれ。」
「待ってろ」
約束通り叔父さんは来てくれた。俺達は乗るまでカップルを演じ切る。が、敵にバレたらしく、銃撃から彼女を庇いつつ早く車に突っ込む。
車内で早速瑠華に質問するが、奴の機嫌は何故か斜めらしいな。話してみたところ、彼女はどうやらカップルが大嫌いらしい。
「ちゃんと反省しろよな!この
運転してた叔父さんが口を挟む。
「瑠華、お前の言い分もわかる。言い方わりーが、進太郎は今首を狙われようとしてるんだ。敵さんが良心的な奴だったらいいが、そうじゃなければ今頃お前らは病院かあの世行ってるぞ。」
ムッとなる彼女を俺は擁護する。
「俺の責任でもある。気にするな」
2度も名前聴いて思い出した。こいつは叔父さんの知り合いだった事を思い出す。何でも、3年前にゲーム買いに行ったら好きなキャラの話で盛り上がって知り合いになったんだと。
何故かもじもじし始めた彼女が謝ろうとした。
「進太郎…さっきはその…」
「“ありがとう”や“ごめん”と言いたいのか?だったら言えばいい」
「う…うっせぇ!趣味とか聞いてみようとか…思ったんだよ」
内心可愛い奴だと思ったぞ。見た目は女優並みじゃないが。
もう一度言おうとしたが、俺は商店街とは別の方面に行ってる事に気付く。
「叔父さん。何で後楽園の方に向かってるんだ?情報のリークはこういった空間の中でやるのがベストだろうに…」
「そこは鈍いんだな…昨日、瑠華が提案してきたんだよ」
気を取り直した瑠華が言う。
「あんたの覚悟ってもんを見たくて、1回戦おうと思ったんだ。向こうには今日貸し切りにするよう言ってある」
戦って俺が勝てたら教えるという訳か…面白い
30分近く子供の様にちょっかい出してくる瑠華と戦う。そうこうしてる内に後楽園に着く。俺等以外の客がいないこの場所に。
叔父さんは「邪魔すると悪いだろうから駐車場にいる」と言い、駐車場で待機し始める。
寒い中、また奴は俺を引っ張り出す。今度は「花交の池」へ連れて行かれた。読み通りその途中で奴は勝てたら教えると俺に伝える。
数十分着くのに時間掛かったこの池で、俺達は細かいルールを決めずに戦い始める。
戦い始める寸前に彼女は鋭い目つきで言う。
「アタシは本当にあんたを殺す気で掛かろうと思ってる…あんたも本気出してきな」
呆れた様に俺も言い返す。
「並の女だとは思わない様にするさ。にしても、俺が不利になりやすいようにこの場所を選んだんだな。キーキー騒いだりする割には頭いいんだな」
「アタシは嫌というほど喧嘩してきた…ただそれだけだよ。」
「そうか…」
最初に言っておく。俺はハートアーツ使う者との戦闘経験は一切無い…それでも俺は挑む。彼女は猫の手みたいなハートアーツを出した。剥き出してる爪は、まさに切れ味の良い鎌の様だ…
まずは2人で激しく斬り合う。相手はどうやら俺のハートアーツが見えているらしいな。
「動きは悪くないな」
「そりゃどうも!」
使い始めて何年か分からん。が、今の彼女はプロボクサーと言える様な動きをしている。押され気味になってるため、一気にバックして間合いを広げた。
接近戦がメインなのか、彼女も一気に近付く。そして俺の脇腹を刺そうとする。回避しつつも、もう1つのヤマタノオロチの炎で彼女を攻撃する。
「ぐっ…」と言ったが泣き言を言わなかった。そして反撃される。
「進太郎、あんたも伊達じゃないね!これでも食らいな!」
瑠華が急に掘り上げた土が宙を舞う。桜吹雪の様に舞った
「ふっ…やるねぇ…頑張れば消し炭になってたかもしれないよ…」
「今は消し炭にしたくないしな」
彼女は池の中に早く行った。何も考えず、馬鹿みたいにガバガバと能力を使いたくはない。ので俺は予備の真っ白い
戦いの舞台は池に変わった。読み通り近付いてきたが、今度の彼女は攻撃を受けても何故か反撃しない。水遊びの様な行為をしてるだけだ。
慌てる事もなく俺は彼女の反撃を待つ。5度ぐらいのこの寒さだ。走るだけでもかなり体力を使う。
反撃の兆しを見せなかったので、仕方なく彼女の足を早く斬る。ちょこまかと動きにくくする為にな。
突如、謎の倦怠感が俺を襲った。見越していたと思われる彼女が俺に飛び掛かる。倒れる寸前、瑠華の爪が喉を
明るくてキーキー
「やっと倒れたね。あんたの覚悟が足らなかった証拠だ。」
「俺が…熱出し始めるのを…待っていたとはな。何という事だ…お前はほんと優しいな…弱り切った俺を直ぐ殺さないとは…」
「アタシはそこまで鬼じゃない。残念だけどアイリスなんて諦めて…死にな」
今にも死にそうなこの体だ。動くことも
彼女は驚く。そして後ろに引き下がる。
「池の水を熱してたのかよ!」
魔王の様な笑い声を上げたかった。だが我慢し、俺は素早く剣を叩き込む。と見せ掛け、彼女に熱湯をぶっ掛ける。
「あ、あちぃ!なんのぉぉぉぉ!」
怒り狂い、俺に叩き込もうとする。だけど俺と同様彼女は倒れる。普通なら止め刺すだろう…だが死ねば当然、情報なんて聞き出せない。
彼女を殺さず、俺は彼女の話を聞く。
「認めたくない。けど完敗だ…頼むけど、言ったら殺してくれ…」
「だったら簡潔に言え。苦し紛れの言葉なぞ聞きたくない」
俺はそう言った。だが彼女は直ぐ倒れた。俺は命令通りに殺さなかった。戦いの最中、こいつは貴重な人材だと思ったからだ。
直ぐに救急車を呼び、俺と叔父さんは一緒に帰る。車内で彼女の事を叔父さんに伝えた。
後日彼女は意識を取り戻したらしい。叔父さんの話だと退院まで1ヶ月半は掛かるとの事だ。俺は毎日の様に見舞いに行き、彼女の容態を見た。
しばらくは車いす生活するらしいがね…。
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