卒業

僕にはずっと好きだった人がいた。

中学生の三年間はパンクにはまって、ヒロトやシドヴィシャスを崇拝しては脳内のギターをかき鳴らしてた。

「峯田カズノブは永遠の童貞だよ、きっと僕等だってそうだ」

僕が考えた架空の友人が、ティッシュとエロ本とCDしかない部屋で語る。

ポニーテールの似合うあの子は、目立たないけど可愛い子だった。

「狙いやすい女だな」

うるせぇよ。

「どうせ目立たないふりして男いるだろ」

うるせぇよ。

「君はそうやって、いつまでもチェリーボーイでいるのかい?」

童貞は関係ないだろ。

「君はあの子とセックスしたいだけだろう?」

違う、俺はあの娘と一緒に居たいだけだ。

あの娘と一緒に映画を見たかった。あの娘と一緒にライブに行きたかった。

それだけできっと僕の心は単純なぶどう糖で満たされいくはずなのに、僕の心は有刺鉄線でガリガリと削られていく。

醜い中年が歌うような、安い青春パンクの歌詞をたどる様に僕の人生は進んでいった。

過ぎていった青いパズルのピースを拾っていくだけの人生にはなりたくなくて、僕はラブレターを書いた。

シドヴィシャスの写真の裏に、一年間拗らせた恋を書き殴る。

卒業の日に、下駄箱に入れなければ僕は一生後悔すると誓った。


3年後、僕は高校の卒業を迎えた。

バカの集まる男子校で、相変わらず僕はヒロトは最高だとか、気の狂ったパンクを叫んでいた。

中学の卒業式の日に、ラブレターを渡せていたら僕は今頃どうなってたんだろう。

だから俺は過去を忘れるよ、君と共に。

愛を込めて。

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