ゲット・アップ・ルーシー

「ねぇルーシー、聞かせてよ、外の世界の事を」


この狭い部屋に監禁されて二週間くらいたつ。

息苦しい、この狭い世界の中で。

約二畳半のこの世界。

俺はこう仮定した。

「はは~ん、さては誰か俺を誘拐したんだな」

笑い事じゃない、どういう事だ。

誰かに恨まれる事なんてした事ないぞ、俺は。

う~ん、分からない。


監禁されて三週間経つ。

そろそろ出されてもいいんじゃないか。

ドアの向こうから出される飯は不味いし。

よし、そろそろ誰が俺の事を監禁したか、考えよう。

もしかしたら、俺に惚れ込んだ女が、俺の事を監禁したんだな。

その監禁した女の事を、ルーシーと名づけよう。

「よしルーシー、提案がある。金でもなんでもやるから、ここから出してくれないか?」

恐らく、ドアの外にいるであろうルーシーは、沈黙を貫く。

なかなかシャイな奴だ。


四週間目。

ルーシーの声が聞こえるようになってきた。

監禁した理由は、俺の事を独占したかったらしい。

「なぁルーシー、ここから出してくれないか?」

ルーシーは反応に困っている。

「もし出たら、お前と結婚してやるよ」

ルーシーは迷っている。

そりゃそうだ。浮気するかもしれないからな。

貞操帯でもなんでもつけりゃいいが、あいにく俺にはそんな趣味は無い。


五週間目、かなり辛い。

運動不足で、体がモヤモヤしている。

朝日を浴びたい。草原の中を子供のように駆け巡りたい。

ルーシーに言っても、逃げ出すから駄目の一点張り。

あぁっクソ、頭がどうにかなりそうだ。


六週間目。

やる事が無いので、ひたすら妄想にふけていた。

すると、ふと疑問が浮かんできた。

「なぁルーシー、外の世界ってどうなってんだ?」

するとルーシーは黙り込む。

「ならルーシー、外で花を見たかい?」

ルーシーは口を開いた。

どうやら、見なかったらしい。

どういう事だ?


七週間目。

ひたすら外の世界について、考えていた。

そして、監禁される前の、俺の記憶が無い事に気づいた。

何故だ?

分からない、何が起きたんだ。

確実に言える事は、ドアの外にはルーシーが居て、俺はルーシーに飼われているって事だ。

飯も出ている。

うーむ分からない。


八週間目。

このドア、どうやって蹴破ろうか、そんな事を考えていた。

この鉄のドア、思いっきり蹴ったら、壊れるだろうか。

俺はベッドの足を折り、その足で思いっきりドアを殴った。

ちょっと傾いた。

これはイケる、と確信した俺は思いっきりドアに体を打ち付けた。

ドアは壊れ、外の世界へ出た。


目に見える範囲全て、砂漠だった。

現実を理解出来ない俺は、後ろを見ると

倒れこんでいた俺がいた。

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