Killing In The Name

ちょうど2030年頃、白人だけを狙った殺人事件が世界で多発していた。

なんとも、今まで白人がやってきた事への制裁だとか、犯人達は言っていた。

白人達は人間ではない。残虐な動物だ。

そういう思想が蔓延る世の中になっていた。


アメリカ、マイアミでは、連続白人殺人犯がいた。

毎回奴は血でメッセージを残す。

Killing In The Name

名の下に殺す、と。


彼の運命は数奇な物だった。

白人の父親には暴力という暴力で服従させられた。

黒人の母親には嫌というほど甘やかされた。

次第に彼はクラスメイトの一人をいじめる様になった。

人を苛める事に快感を覚えた訳でも、皆が苛めていたから、便乗して苛めていた訳でもない。

彼は、その一人の少年がそこに立っていた、だから殴った。蹴ったりもした。だが決していじめじゃないと話す。

虐めというのは大多数の人間が、被害者側の人間に不快感を与える事で、あざ笑っている事だ。

僕のは決していじめじゃない、単なる暴力だ。と言った。

彼は色んな方法で白人を殺した。

刺殺はもちろん、毒殺、撲殺、感電殺、殺す白人の精神を支配し、自殺に追いこんだ事もある。

何故殺した?と言うと

「白人は今まで色んな人種を迫害し、殺してきた。だから裁きを受ける番だ。そうだろう?」

「この思想の根底には、人間の本性がある。これから、黒人、白人、混血、アジア人。その他の人種も分け隔てなく、俺みたいな奴が生まれてくる。ゴロゴロとな」


白人達はこの殺人犯を恐れた

悪夢の始まりだ、自分達は殺される。

だったら全員殺してやろう。

今度は白人達が他の人種を殺し始めた。

アジア人、混血も人を殺しはじめた。

「俺みたいな奴らが生まれてきただろう?いいか、サイコパスってのは、人間の最もあるべき形なんだ。人間ってのは、理性がなくなりゃこうなるんだ。

そんでもって、その理性を唯一無くならせる物がある。恐怖だ。

人間なんて、皆本能の中じゃ、自分が一番なんだよ」


人間達は、恐怖に支配され、ついに人種関係なく人を殺し始めた。

人を見た瞬間に、銃を突きつけるようになってしまった。

人間とは、こうも醜い生き物になってしまったのか。

「人間に何期待してんだ?どれだけ賢い生き物だろうが、所詮生き物、愚かだ。

同じ過ちを犯し、復興し、また同じ過ちを犯す。

過去から学ぶ奴なんてほんのわずかだ。」

この殺人犯の言うことは全て的を得ていた。


この殺人犯に付き合って数十年間立つ。

戦争が起き、大量の人間が死に、そしてまた平和になった。

殺人犯はすっかり老人になり、死んだ。

遺書にはこう書いてあった。

「またこれからも、人間達は争い、平和になったら表面上は、もう戦争は起こさないなんて、戯言をぬかす。

裏では全員が、他人に恐怖を抱き、憎んでいる。

人間が滅ぶまで、この姿は変わらないぞ。」

そう書いてあった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る