Otherside
夢から抜け出せない。
これに気づいたのはいつくらいだろうか、忘れた。
夢の中は常に不条理だ。予測がつかない。
そして時の流れが早い。そのためか、記憶がどんどん無くなっていく。
ほんのちょっと前まで警察官に殴られていたかと思えば、今は宗教の勧誘に来た奴をバットで殴り殺している。
痛みも感じないから、飛び降りても痛くない。だがかすかに感じる気味の悪さ。
分からない、なんでって?記憶が無くなっていくからさ。
訳も分からず街中を走り回っても、包丁で咽笛を掻っ切っても、幽霊になりその街をしばらく放流したら、俺は新しい俺になる。
殺人シェフにもなった。郵便配達員になり、バイクに乗りながら何かのCDをポスト突っ込むという、意味不明な事もした。
とにかく意味不明だ。すべての事象に意味が無い。
普通は夢の中で自分は夢の中にいると気づいたら、起きる物だろう。
だが僕は起きれない、何故だろう?
僕は死んでいるんじゃないか?それとも昏睡状態なんじゃないか?
だが考える事も出来ずに、目まぐるしく動いてる今の現状をさばいてくしかなかった。
ある時叫んだ。
「誰か!!ここから出してくれぇ!!!!頼む!!助けてくれ!!」
それでも何もなかった。
灰色の景色は未だに変わらない。
昨日は殺人鬼に殺される夢を見た。今は女とセックスをする夢を見ている。
架空の温もりを感じながら、違和感の渦の中で、ただただ自分の脳の中という荒波に揉まれていた。
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!」
自分の心が悲鳴をあげている。狂いそうだ。
「はっ!、、、やっと起きた。」
そこは病院だった。
医師は言った。
「君は交通事故に会って昏睡状態だったんだよ?覚えてるかい?」
「はい、、、夢の中までくっきり覚えています、、、、」
「そうか、、、じゃ、今から手術だから」
そう言って医者は麻酔も無しにメスを取り出した。
「え!?ちょっと待ってくださいよ!え!?」
容赦も無く、ズブズブと入っていくメス。
だが、痛くない。
そうか、これも夢なのか。
色の無いスクランブル交差点、一人の男が立ち尽くしていた。
彼は妄想力がありすぎた。
自分の頭の中に閉じ込められてしまった彼。
今も、自分の頭という迷宮に閉じ込められている。
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