フィルム
寂れた映画館に夢中になった少年がいた。
その映画館は、一人のおじいさんが管理していた。
そこでは、昔の映画ばかりやっていた。
少年は、そんな昔のモノクロ映画に心を奪われた
そんな少年は毎日映画館に通い、映画に夢中になった。
そんな少年を見たおじいさんは、チケットを買う少年に語りかけた。
「映画、、、好きかい?そこの中学生君」
少年は首を縦に振った。
「へぇ、今時珍しいじゃないか、モノクロ映画が好きな子なんて」
少年はちょっと恥ずかしそうにこう言った。
「モノクロ映画って、文字通り白黒じゃないですか。シンプルだから、作った人の思いが手に取るように伝わるんですよ」
「、、、分かってるじゃないか、ちょっとこっちに来なさい。」
おじいさんは、大量のフィルムがある部屋へ連れて行った。
少年は目を輝かせた。
「明日から自由に見ていいぞ、このフィルム。チケット料もタダでいい」
少年は、人生で一番感動したかの用に喜んだ。
「こんな大量のフィルム、タダでいいんですか!!??」
「あぁ、いいとも」
少年は、宝の山を漁るかの用に、フィルムを見た。
少年は世界で一番幸せなのは僕だと言えるくらい、幸せをかみ締めた。
数年がたった。
老人は病院にいた。
ガンが再発したのだ。
少年は毎日おじいさんを見舞いに行き、自前の小さいフィルム機で、おじいさんと一緒にモノクロ映画を見ていた。
「なぁ少年、お前、好きな女はいるか?」
少年は言った。
「そりゃぁ一人くらいは、、、、」
「少年、女に思いを告げないと、一生後悔するぞ」
「なぜ?僕はおじいさんと映画を見れてこんなに幸せなのに?」
「少年、、、、映画は人生の添え物だ。決して、映画だけで、生きていける訳じゃない。誰かを愛し、誰かを愛さないと、人は生きていけない。俺みたいに、一人で死ぬ事になる」
少年は感づいた。
「おじいさん、死ぬの、、、?」
おじいさんはゆっくり静かに首を縦に振った。
「そっか、、、、」
少年は映画を止め、おじいさんにこう言った。
「おじいさん、おじいさんのフィルム、全部僕が貰っていいかな?僕、一週間後に、好きな子に告白してくるよ」
おじいさんは、泣きながら、少年の手を握った。
少年も泣いた。静かに、静かに。
少年は大人になった。
就職した。
結婚もした。
今も趣味に寂れた映画館で、モノクロ映画を流している。
客のいない映画館には、少年が一人で目を輝かせながら、映画を見ていた。
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