Can't Stop
「止まらないんだよ、思考が」
ある博士がこう言った。
この博士は不眠症だ。理由は止まれないからだ。
博士の目は狂ったように血走っている。
博士の手は止まらずに動いてる。
博士はこう言う。
「自分でも止まろうと思うんだ。でも気づいたら自分の思考が暴れだして狂いそうなんだ。我慢しようとすると吐き気がする。もう誰にも止められねぇよ。」
博士は発狂しながら物を作る。
作っている物を何だと聞いた。
「これはもう一つの世界を作っているんだ。滑稽だろう。自分達の世界が何かすら分からずに動いてるんだぜ、こいつら」
博士の言ってる事は常軌を逸していた。
ある日、博士に会ったら、博士が話しかけてきた。
「おい、この世界って、本当にあると思うか?」
僕は驚いた。なぜ今までこんなにほじくり返されたような問題に向き合ってるんだろうと。
「奴等は全員自分の世界が何かも分からずに、生きている。アホくさいと思わないか!君!」
「だからこの俺がこの世界が何なのかというのを見つけ!研究し!皆に真実を教えるんだ!」
この博士は、既に狂っていた。
どれだけ博士が探求しようと、それは博士の中の真実でしかない。
だから、どうしようとも、本当の真実なんて無い。解釈の問題なんだ。
博士はそんな単純な事にも気づかず、狂ったように研究を続けた。
次の日に、博士の家へ向かっていたら、救急車が止まっていた。
博士は死んでいた。過労死だ。
何の為に生きているかなんて、どれだけ研究しようとも、自分の思考回路の中で決めなければ、永遠に見つからない。
つまり、博士の生きる意味は、自分の生きる意味を探す事だった。
無限に続く階段をあがるような物だったんだろう、博士の研究は。
博士の研究物を見ていたら、ある物が見えた。
その中で生きている人間達の、生きている理由はさまざまな物だった。
家族のため、金の為、神の為、色々な理由が合った。でもそれは生きている意味ではなかった。
僕はそれを見てぞわっとした。
もしかしたら、この世界も、誰かが生きている意味を見つける為の世界なんじゃ?
だが、そんな事どうでもよくなった。
僕らは、この世界を映像なのか、それともリアルなのかも分からずに生きている。
今僕がコップを落としても、本当はその場に落ちていないのかもしれない。
その答えは永遠に見つからない。
もしかしたら無いのかもしれない。
真実なんて物はない。
僕らはそんな回し車の中で、生きている。
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