第2話 ①

「おいおい、テト一人で地主様を説得するってか?」


「?私にはサルさんもいるし大丈夫だよ!」


「あのなぁ………。」


 アーサーは言おうか言うまいかと考え込んでいるようで、頭を搔いて考えていた。


「地主様はあの『迷宮』をクリアした強者を数十人も味方につけている程の強者だぞ?無理に決まってる」


「めいきゅう?」


『迷宮は、クリアした者に最強の力と富を授ける場所で、クリアできる人は国軍相手でも耐えきれるほどの強者だけなんだって。』


「??」


 テトは正直わかってなかった。しかし、何もしないのでは始まらないと思い、立ち上がった。


「分かった!なら、出来る限りで説得しようよ!何もしなかったら永遠と自由を得られないよ!」


「………仕方ないな!俺も手伝ってやるよ、剣術は出来る方なんでね」

「ありがとうアーサー兄さん!」


 テトたち一行はこうして、地主様の元へ向かう事にした。


 ✱


 テトたち一行は、とある門の前で立ち止まっていた。


「………?入らないの?」


「しまった……どうやら商談のために他国の王とその部下が来てるみたいだ」


 アーサーとテトは扉の隙間を覗くと、椅子に座っているデブと対照的に細マッチョながら身長も大きく髪をひとつに束ねた金髪のイケメンがいた。


「??アーサー兄さん、おじさん二人しか居ないよ?」


「ああ…だが、金髪の方はやばい、かなりな。」

『アーサーくんの言う通りだよテト!………あいつは迷宮の守護神をいくつか身につけているんだ。正しく………最強の証拠だ。』


 またしてもこんがらがるテト。

 一時門の前にいると、あるものに気がつく。


「アーサー兄さん!このボタン何?」


「ああ、それは扉を開けるボタンでな………って、押すな!!」


「え」


 手遅れだった。

 アーサーが叫んだ時には時すでに遅し、テトは既に押してしまい、扉が派手に開いてしまった。

 そのため、アーサーとテトとサルタヒコ(鼠)は丸見えの状態だ。


「おい貴様ら!今大切な話のところを………って、アーサーじゃないか!!」


「あ、じ、地主様申し訳ありませんでした!この不届き者が…ほら、テト今すぐ謝」

「おじさんどうして男なのに胸とお尻があるの?私女の子なのにないんだよ!」


「テトー!!」


 テトは地主に向かってそんなことを口走っていた。

 アーサーとサルタヒコはもう逃げ出したい衝動に駆られていた。


「おじさん!みんな幸せになれないって嘆いてるよ!大食いするのは悲しいかもしれないけどやめようよ!」


「あ!?俺様の生活に口出しするな!」


 テトと地主が言い争っていると、金髪で長身のイケメンが割り込んできた。


「すまないが、お嬢さん。今は大人の会話をしているんだ。話は後にしてくれないかい?」


「ダメだよ!みんな幸せじゃないって泣いてた!こっちに来てる時みんなボロボロで苦しくて泣いてたもん!」


 テトは断固としてその場を去るつもりも話を後にするつもりも無いようだ。

 すると、金髪の方の部下がテトを抱き抱える。


「な!降ろしてよお兄さん!」


「今はモルドレッド様とボーガン様の大人の話をしてるところです。外で遊んでなさい。」


「待てよ!お前らは国民よりも自分たちの利益かよ!」


 アーサーは痺れを切らしてそう叫んだ。

 テトは目を輝かせ、地主と金髪男は驚いて固まっていた。


「貴様!王 モルドレッドになんということを!」

「まぁ待て、ランスロット。……アーサーくんと言ったね。君は自分の首が飛ぶ覚悟でそう言ってるのかい?これは国の存亡をかけた話だぞ?」


「いいか?そんなちっぽけな話よりも国民が先だろ!商談がなんだ!正直猫かぶってんのも疲れたわ!」


 言ってやれ!

 そう言わんばかりにテトは目を輝かせ頭を盛大に振っていた。


「もう許さん!おい、あのガキどもを殺れ!」


「へ!?………テト!後は頼む!」

「任せてよアーサー兄さん!……」


 テトは横笛を取り出して何かを唱え始めた。


 輝く全ては我の命 霊に宿りし命は我のもの


 その時、テトの周りからだんだんと風が起き始めて、サルタヒコも光り輝く。


『テト!汝は何を願う?』


「サルタヒコ!我を護ることを願う!」


 そう言ってテトは横笛を強く吹いた。

 サルタヒコ達は一気に増殖し、現れた地主の部下達を一掃していく。

 その出来事はほんの一瞬で、全員驚いていた。


「お、お前………精霊使いか?!」


「せいれい?サルさんは友達だよ!…それより、私たちの話、聞いてくれる?」


 地主はテトと目が合うと、腰を抜かしてしまった。


「ははは、お嬢さん。なかなか面白い能力を持ってるようだが…その角にその精霊を扱う力。なんの種族かい?」


「?人間だよ?」

「て、テト!その人がブリタニア大陸最強島国 "ヨロッパ"の王 モルドレッドさんだ! 」


「?モルさんも悪い人なの?」


「いいや、私は第一に国民だ。………先程はすまなかったねアーサーくん。あれは少し冗談を言ったんだ」


 アーサーはモルドレッドにそう言われてずっこけた。

 テトはある気配を感じて部屋を捜索していた。


「?テト、何してんだ?」


「この部屋、何かいるみたいなんだ。こう、なんかドロドロとして……気持ち悪い!」


 テトが気持ち悪いと叫んだ瞬間、地主の腹が真っ二つに割れる。


「ひぃ!?ど、どうなってんだ!」

『やっぱり、無限の胃は……ネメシスの仕業だったんだ!あいつはネメシスに何かを願ってたんだ!』


『見つけましたよ、お嬢様』


 ネメシスと呼ばれた 包帯ぐるぐるで黒いハット帽にマントを羽織った一つ目裂け口をした人 はテトに向かって歩いていく。


「??私のこと知ってるの?」

『テト!あいつはネメシス……デスの直属の部下でテトの監視をしてたやつだ!』


「!?」


 デス

 それは今のテトにとってはトラウマのひとつになっていた。


 彼女は外に出てわかったのだ。外は怖くなく、とても自由でとても優しい人がいることを。


「サルさん!お願い!」

『サルタヒコ、お前は排除要因になった。消えろ』


『御朱印!?やめて!消えちゃうよ!』


 ネメシスが御札を投げると、それはサルタヒコにくっつき、そのまま炎となって消え去ってしまった。


「サルさん!サルさーん!!」

「………ネメシスか、事情はわからないが、お嬢さんが困っている。消えろ」


「お前は、ヨロッパ王 モルドレッド。………ちっ、部が悪かったな。」


 ネメシスは力の差を感じとったのか、戦うことなく闇とともにあっさりと消え去った。


「お、おい………サルタヒコは大丈夫なのかよ」


「……うん。私の笛があるから大丈夫だけど」


 テトは横笛を吹くと、ボンッと音と共に現れた煙からサルタヒコが現れた。

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目指すは最果ての地"ユートピア" 白兎P @shirousaP

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