第2話
眠い。とりあえず眠い。ここち良い余韻などこれっぽっちもない。
低血圧の私はとりあえず朝が大変だ。
それなのにまぁまぁの二日酔いもある。
もう最低な朝だ。
とりあえず頑張って起きて両親に二日酔いを悟られない様に、平常を装う。私は二日酔いの日は必ずそうしている。何故なら理由は簡単である。ただ単に呆れられるからである。女性が二日酔いになるほどお酒を飲むなんて私の両親からしたら低俗極まりないのである。そんな両親に育てられたので私は固定観念がひどいのかもしれない。
私はとりあえず"ぐびぐび"っと水道水を一気飲みした。
はぁー、しんど…。今日は山場を迎えるな…。山場かぁ…。とアホみたいな事ばかりを考えながらも、何とか手を動かし朝の支度を完了させた。
「いってきまーす。」
といつも通りの調子で家をでた。
私は美容師なので二日酔いの日はかなり悲惨な事になる。とりあえず立っている事すらままならない。気持ち悪くて気持ち悪くて立っていられない。仕事が暇な日はとりあえず何度もトイレに行き座る事ができるし、掃除しているフリをしてしゃがむ事もできる。だが忙しい日はそれが全くできず、ずっと立ちっぱなしだ。もう地獄でしかない。前日の自分の行いを悔いる事しかできない。いくら楽しい夜だったとしても天秤にかけたら必ず地獄が勝つ。楽しい夜が勝った事など一度もない。
そんな事は百も承知だがやっぱり同じ事の繰り返し。"今日"は必ず地獄が勝つが前日の時点では必ず楽しい夜、楽しいお酒が勝つからである。
そんなグダグダな状態のまま、なんとかお昼ご飯まで持ちこたえた。
ここまできたら私は強い。後は頑張って無理にでもご飯を食べたら1時間ほどしたらだいぶ楽になってくるはずだからだ。やっと気持ちの余裕ができてきた。スマホを見るとマキからLINEがきていた。
"昨日は楽しかったね!また飲み行こう。"
それだけか……。なんか少し期待をしてしまっている。トモくん情報が何かあるかと思ったのに。
で、そのトモくんからは?何でLINEこないの?いつくるのよー?
マキからLINEがきた事で、何故かトモくんからLINEがこない事が物凄く不安になってきた。
昨日のノリで連絡先交換しただけなのかな?酔ってただけ?私には興味ない?と、またまた一人相撲が始まってしまった。いつもそう。1人で自問自答して落ち込んでいく。
あっ!あー……、、、、。そっか…。
「ネガティヴ感半端ないな。」
ダイに言われた言葉が頭をよぎった。私、自分ではそんな事全く思っていなかった…。今やっと気付いた。そうだよね。そんな一人相撲やら固定観念やらが、私をネガティヴオーラで包み込んでいたんだよね。こんな簡単な事なのになかなか気付けないもんなんだよね。34歳まで気づかなかった自分の負の考え方。何で今のタイミングでダイの言葉で気付かされたんだろう。けどダイは嫌いだしこの先も変わらないであろう。まただ…。すぐにアイツは嫌い。アイツは気にくわない。って思ってしまう。自分自身たまに反省するがなかなか難しい。人の頭の中を変えていくのは本当に難しい。
あっという間にお昼ご飯も終わった。
トモさんからのLINEはまだだが気長に待とう。気長?私が気長に待てる訳がないが心の中でそう呟いてみた。
午後から仕事は忙しく運良くLINEの事はさほど思い出さずに済んだ。
今日は疲れているので早く寝たい。
急いで帰り早めにお布団に入った。
お布団の中でスマホをいじる至福のひと時。なんでかなー?なんでLINEこないのかなー?まさか2、3日経ってから?次の日にくるもんじゃないの?はぁー…。やっぱり私には気長に待つ事などできないな…。
私は居ても立っても居られなくなりマキにLINEした。だいたい不安になるとマキにすぐLINEをしてしまう。
"おつかれさま!トモくんからLINEない… 二度と会えないのかな?"
呆れられてもいい。そうゆう時の私は完全に自分の事しか考えていない。ただただ、大丈夫だよ!考えすぎだよ!となだめて欲しいだけである。
マキからLINEがきた!さすがレスポンスが早い!
"おつかれ〜。二日酔いで死んでるんちがうかな?(笑) かなり飲んで二軒目途中から爆睡してたよ!"
そうなの?本当にそれだけ?しんどすぎてLINEする余裕ないのかな?と私は前向き思考に少し変わった。
とりあえず待つしかない。今日LINEがこなかったら明日私からLINEしよう!気になりすぎてこのまま終わるのは絶対に嫌だ!とりあえず2人で会って話しがしたい。色々考えている内に私はどうやら寝落ちしたらしい。目を覚ますと5時すぎだった。私はすぐにベッド下に放ってあるスマホに手を伸ばした。キュンとした。LINEきた!
トモさんからLINEきた!ほんとに胸のあたりが締め付けられてドキドキする。私は昔から本当に感受性が強く、思い込みや少し自分自身を暗示にかけてる所がある。だからなのかすぐに身体に色々な異変が出やすい。
"昨日はありがとうね。酔っ払ってスマホ落として大変だった。"
トモさんそんなに酔ってたんだ…。LINEがきた嬉しさよりもなんだか急にトモさんが心配になってきた。いつもそんなに酔っ払ってるのかな?毎日お酒すごく飲むのかな?ただのたいした事のないLINEなのに、心配から不安になってきた。ほんとに私はおかしい。自分でも少しずつでも変わりたい。でなきゃいちいちしょうもない事に、自分には関係のない事に、まだ何も始まってない事に、一喜一憂して疲れてしまうからである。
とりあえず早朝すぎるし返信は後にしてまだ少し寝よう。疲れてるからかすぐに寝れた。
"カラン,カラン,カラーン,"
スマホの目覚めしが鳴った。7時だ。もう時間かぁ…。ねむ…。眠いけどちゃんと覚えてる。トモさんからLINEがきたこと。何て返信しようかな…。
"おはようございます。スマホ大変だったんですね!スマホもだけど身体は大丈夫でしたか?"
こんな感じでいいかな?ウザくないかな?ま、いっか。やばっ…。早く支度しないと!今日もいつもの日常が始まった。美容師になって14年。理不尽な事も多々あるし、自分自身の未熟さに落ち込む事も多々ある。だけど辞めたいと思った事は一度もない。この仕事が大好きだ。色んな事を乗り越えての今。ますます仕事が好きになっている。毎日あっと言う間ですぐに夜になる。もともと低血圧で疲れやすいのと立ち仕事で本当に疲れているのとで夜はぐっすりとすぐに寝れる。友達と飲みに行く日以外は夜更かしはしない。と言うかできない。私は本当に寝るのが好きなのだ。今日もあっと言う間に布団の中だ。てか、トモさんから返信遅すぎないか?朝にLINEしたのに今はもう夜だよ。既読にもならないし。私こーゆー人無理かもなぁ。あんなにトモさんと2人で話したい!って思っていたけれど何か違うかもなぁ。なんかショック…。1人で盛り上がってたのに。マキにLINEしてみようかな?どうしよっかなぁ。疲れてるのに返信こないし寝れないよ…。少しイライラするよ…。あー…。しんど…。
えっ、あっ…、きた。やっときた。嬉しさ半減だな。なんかちょっと冷静になってきたし。
"今日は一日バタバタしてたよ。良かったら今度ご飯でもどうかな?"
きた♡私の待ってた展開!ここからはテンポ良く進めていきたい。ウダウダなるのは絶対嫌だ。
"こんばんは。嬉しいです!ぜひ、行きたいです(笑)"
と返信。
"のんちゃん今週いつ空いてる?"
すぐにきた!
"仕事の都合で遅くなるかもですが、いつでも空いてます。"
"じゃあ土曜はどうかな?"
"大丈夫です!楽しみにしてます。"
やったー!土曜日にトモさんに会える!2人でゆっくり色んな話しができるー!めっちゃ楽しみ!
"俺も楽しみにしてるよ!"
レスポンス良いのは大好き!こうゆう展開がいいんだよね〜。これでぐっすり寝れる。今日は久しぶりに幸せな気分で寝れそう。ついついニコニコしてしまう。 色んな妄想をしながらこの先の幸せ感いっぱいの顔をしながら私は寝た。
それから毎日トモさんからLINEがくるようになった。
"今日は寒いね〜"
"今からご飯だよ〜"
など、ささいなやり取りを毎日するようになった。そしてますますトモさんの事を好きになっていく。ささいなやり取りの中にもトモさんの優しさや気遣いが感じ取れた。それと何より楽しかった。トモさんはきっと頭がいい。単純にそう感じた。一度しか会ってないがすごく癒されそう。居心地が良さそう。やり取りをする中でそう感じずにはいられなかった。そして金曜日。
"明日は20時に四条烏丸でいいかな?"
トモさんからだ。
"大丈夫だと思うんですが、もしかしたら仕事で少し遅れるかもしれないですがそれでもいいですか?すみません!!"
"全然大丈夫だよ!遅れるんなら連絡だけくれたら何時でも待ってるよ。"
優しい…。
"ありがとうございます。できるだけ時間通りに頑張ります!"
"無理はしなくていいからね。ゆっくり来てくれたらいいからね。"
癒される…。私がトモさんを好きだからこんなにも癒されるんだろうか…?
ふわぁ〜とココロの中でお花の香りが広がった様ななんとも言えない気持ちのいい気分になる。こんな感覚は初めてだな…。とりあえず明日に備えて早く寝よう。明日は少しだけ早起きして念入りにブローしないとなぁ。くせ毛頭でトモさんに会いたくないしなぁ。
ブローしても湿気ですぐにボサボサになるやっかいな髪質だから本当に困る。昔から本当に困っている。どうか明日はパーフェクトな私でトモさんに会えますように…。
牙を剥がされたライオン 京子 @yupyon
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。牙を剥がされたライオンの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます