第454話 ユウキはこころのなかで必死で自問自答した

 どうすれば……いい……。


 ユウキはこころのなかで必死で自問自答した。が、それと同時に、レイだったら、どうするか?。に頭を巡らせてみる。


 レイは論理的な思考で解決方法を探ろうとする。その契機はいつだって肌感覚の疑問がはじまりだ。そこから合理的疑いを導き出し、解決方法へ導くのだ。

 だが、その着目点はいつだって突拍子もない——。

 

 この出撃前、いくつかの攻撃プランをみんなで討論しているときも、レイはひとりだけ無茶苦茶な提案をしてきた。

「ユウキかアスカのどちらかがやって欲しいの」

「なぁーーんで、あたしがそんな危険な役を買ってでなくちゃなんないのさ」

「魔法少女のほんとうの能力を把握したいから」

「なに言ってンのぉ。あたしとタケルとで……、それとユウキとで、イオージャをやっつけちゃうから、そんなの関係なくなるわよ」

「うん。イオージャは倒してもらってかまわない。わたしが知りたいのは魔法少女のほう」

「レイくん、どういう意味なのかね?」

 ユウキはレイの言っている意味をはかりかねて尋ねた。

「簡単なこと。魔法少女のあきらかに能力差があるようなの。最初のフーディアムと武漢、そしてニューヨーク、ソーホーだけでもちがってる」

「ちがうってどういう風になのかい?}

 レイ自身もよくわかっていない漠然とした疑問にもかかわらず、ヤマトは興味を引かれたらしい。

「うん、力の差があるような気がするの。『移行領域』のベールのカバー率や、飛行スピードなんかがちがう。それだけじゃない。なぜ魔法少女はまず最初に電撃攻撃をしかけてくるのか。なんで最初からあの『分解光線』を出してこないのかも不思議……」

「は、そんなの個体差とかそういうルーチンなんでしょ。亜獣なりのね」

 アスカは一笑に付してやる勢いでレイを否定した。ここにいたって面倒を押しつけるなという見え見えの態度だった。

「そうかもしれない。でもその違いがほんとうに個体差なのか、意味のないルーチンなのか、どうなのかを切り分けたいだけ」

「魔法少女はイオージャを倒しゃあ、消えるわよ。たぶん……」

 アスカがあくまでもレイの提案を突っぱねようと、自分勝手な希望的な意見を口にした。それにクララが割って入った。

「アスカさん。イオージャを倒しても、魔法少女は残ったままだったらどうするつもりですか?。今までの経緯や考察から、その可能性が高いのですよ」

「まぁ、そりゃ、そんときはそんときよ。こんなのいつだってイレギュラーしか起きやしないんだからさ」

 アスカはわるびれることなく、すぐさまクララに反駁した。

 

 が、結局はレイに説き伏せられて、現場でぶっつけ本番で危険な実験をさせられるはめになった……。

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