第448話 魔法少女が下で待ち受けてる!

 魔法少女が下で待ち受けてるっつ!——。


 目的地の東京トンキン上空に到達して、イオージャが暴れている地区にむけセラ・ヴィーナスが下降をはじめると、中途の空域に魔法少女の群れがあることがわかった。

 覚悟していたことだが、実際に目の当たりにすると焦りが先にたつ。

「ユウキ!、気をつけて。アイツらあたしたちを待ち受けてるわよ」


 アスカはそう警告のことばを放ったが、ほとんど自分に言い聞かせているようなものだった。アスカはすぐさま司令部へ指示を仰いだ。

「ミサト、魔法少女の群れがいる。どうすればいい?」

「どうするも、なにも……」

 ミサトは反射的に誰かにその答えをなすりつけようとしているのがみてとれた。


 ちっ、役に立たない——。


「メイ、どうすればいいの?」

 アスカは質問先をすぐさま春日リンに切り替えた。

「アスカ、当初のプランA通りよ。『移行領域トランジショナル・ゾーン』のベールを全身に展開して。全身を覆うの!」

「プランAなら、あたしたちが囮になって、タケルがイオージャを倒すはずだったでしょ」

「あなたたちふたりともが囮になって、どちらかやれるほうがイオージャを倒すしかないでしょう」

「は、簡単に言ってくれるわね。でも、そもそもこのベールは完璧にからだを覆えるものなの?」

「大丈夫よ。どっちにしても戦えてあと5分。5分なら全開で使っても最後までもつわ。でも絶対に集中力を切らしちゃだめ。集中が解けたら全身のどこかにほころびができる。全身の防御がすこしでも解けたら、元に戻すのに最低10秒かかる。そこをつかれたらアウトよ」

「了解。絶対に解かないようにするわ」

 アスカは勇んで答えたが、別のモニタからヤマトが諌めるように言ってきた。

「アスカ、ユウキ、5分でやっつけてしまえるなんて考えはもつな。全身を防御膜で覆っている間は武器が使えない。まずは魔法少女の脅威を排除することを優先して」

「タケル!。そんなこと言われなくてもわかってる」

 さえぎるようにアスカはそう答えた。が、続けざまに嫌味のことばが漏れでそうになった。


 タケル。あんたがリタイアした時点で、そんなのはなっから無理でしょうがぁ——。


 かわりにアスカは口元をぎゅっとひきしめた。

「タケル、まかせて。慎重にやる」

「あぁ、タケルくん。5分間、魔法少女をできるだけ駆逐するし、次につなげられるように、なんとしてもイオージャの弱点をあぶり出してみせるよ」

 タケルの諫言を鼓舞と受け取ったらしく、ユウキが力強く宣言してみせた。

 

 ユウキ、それでいいわよ。


 タケルが直前でリタイアしたことに動揺をみせることもなく、前向きな姿勢で臨んでみせる。が、けっして無理をしない。

 おのれの立ち位置をよく理解している——。

 

 さすがだ。

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