第413話 アメリカ陸軍対魔法少女4

 その時ロギンズの思念が頭の中に広がった。

「クワトロ中佐、行き止まりになりました。今から内壁を破壊します」

 スージーは三方向から目的地に集結することが、第一優先順位ファースト・プライオリティだと考えていたので、集結を妨害する壁の爆破の許可を与えようとした。が、それより先にドーンというくぐもった音が漏れ聞こえ、あたりの壁がすこし揺れた。

「ロギンズ、早いわね」

「クワトロ中佐、あなたと思考は共有しているので、わざわざ許可は不要かと……」

「いいわ。で、何が見えてる?」

「どうもここは元素凍結エレメント・フリージングルームのようです。設計図のデータには、ここは壁となっているのですが……」

 スージーは自分の中隊の進行をとめると、中空に手を這わせてメニューを呼び出した。

「この博物館の見取り図と館内AIへのアクセスを出して」

 そう呟くと、目の前に見取図があらわれ、その両脇にガイダンスや収蔵点数、要覧などの館内の情報が表示された。

 スージーはすばやく現在位置からロギンスたちのいる場所を確認した。こちらからは二階上にいて、長い廊下を隔ててはいるが、直線距離では百メートルも離れていない。

「ロギンス、中にあるものを確認して。もしかしたらそれが目的物……」 

 そう指示しながら、スージーの視線は目の前の見取り図の変化に奪われていた。館内地図の右端にある数字が動きはじめている。先ほどまで15万いくつかの収蔵点数が示されていた数字が、ゆるやかに加算されていた。


 なにこれ……?


 スージーの脳内に、気持ちの悪い、鳥肌のたつような嫌な予感が疑問とともに湧いてでてきていた。ガイルが緊張感とともに思念を送ってきた。

「スージー、おかしいぞ。館内AIが目録が更新されていくぞ」

「えぇ、見てる。なぜか収蔵品がカウントされはじめた。ガイル、どういうこと?」

「わからねぇ。だが今まで棚卸しインベントリされてなかったなにかが、見つかったってことだろ」

 スージーはAIが読み取っている項目をみた。


 フライ、フィリップス「右腕」、カーン「頭」……。


 それは人の名前だった。

「人の名前が列記されてる。でも「頭」「右腕」ってどういう意味?」

「わからねぇ。だが、とりあえずオレたちも目的地に急降下する。スージー、あんたも急いでくれ」

 ガイルはいやに焦っていた。もしかしたら自分の感じた怖気立った気持ちは自分のものではなくガイルのものだったのかもしれない。

 思考を共有しているときによくある現象だ


 スージーは自分のひきいている隊に、駆け足を命じた。

「わたしたちも急ぐわよ」

 あわただしい軍靴の音が暗い館内を満たしはじめる。その音の隙間からスージーはガイルかロギンズのどちらかが耳にしているはずの声を聞いた。



 まじかるぅぅぅぅぅぅ……

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