第378話 単純な作戦ですよ
「でももう過ぎたことはいいんですよ」
エドが急に晴れやかな声をあげた。おもわずリンと目があった。いつものエドらしくないことに、リンも戸惑っているのは明らかだった。
「ぼくの提案した作戦がウルスラ総司令に採用されれば、そんなちっぽけなミス、いや濡れ衣なんてどうでもよくなるからね」
「作戦?。それってなんのこと?」
リンが訊いた。草薙もアルもはじめて聞いたようで、リンとおなじようにエドに目をむけた。
「あれ、聞いてないんですか?。だからぼくは呼び出されたと思ってたンですけど……」
「ぼくは聞いてるよ。だからみんなに集まってもらった……」
「へー、さすがヤマト・タケルだね。だれがばらしたかは、薄々見当がつくけど、情報がはやい……。ただきみにはどうもこの作戦に、賛同してもらえてないようだね」
「危険すぎるからね。あまりにも……」
エドとヤマトだけのあいだでかわされる会話にリンが不満をぶつけてきた。
「ちょっと、エド。わたしたちはあなたがウルスラ総司令に進言した『作戦』とやらを、まったく知らないの。教えてくれる?」
「単純な作戦ですよ。草薙大佐の考案した大掛かりな作戦とちがって、いたってシンプルでもある……」
「魔法少女をこの基地へ誘い込んで叩く、それだけですから」
リンが目をおおきく見開いた。アルは口をぽかんとあけたまま呆然としていたし、あの草薙までが目を眇めてエドを睨みつけていた。
「どうやって!?」
春日リンが咎めるような口調で訊いた。
「おー、怖いなぁ。春日博士。落ち着いてください」
「落ち着いて聞けるわけないでしょう。どうやったらそんなことができるの!」
リンが苛立ちを抑えきれずに声を荒げた。
「エドは、ぼくを魔法少女の餌にするつもりだ」
ヤマトはもったいぶって、リンやエドたちをじらそうとしているエドの代わりに、先んじて答えを言った。
「あ——。タケルくん。ひどいな。もうネタばらしかい」
エドが残念そうな顔を装ってヤマトに言った。だがどうみても本気で残念だとは思っている顔には見えなかった。
「タケルくんを餌にするとはどういうことなの?」
今度は草薙が一切の妥協を許さない口調で尋ねた。
エドはおおきく手をひろげて、満足そうに笑って言った。
「草薙大佐。文字通りの意味だよ。魔法少女たちにタケルくんを襲わせるのさ」
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