第343話 国際連邦軍内務課ジョージ・ブランドー
「ランカシャー警察のジョナサンとディオ……だったね」
ジョナサンはそう問われて、不信感をあらわにした顔のまま頷いた。
彼はなにもかもが気に入らなかった。『フリートウッド』の倉庫の一件でディオが病院送りとなり、事件のことでありとあらゆる部署から聞き取り調査を受けるはめになった。地元警察はもちろんのこと、イギリス内務省保安局のMI5、インターポール等々……。 それで済んだのならジョナサンも職務だから仕方がない、と納得するところだ。だが、あの倉庫で見つかった死体の身元が判明するにつれ、世界中の各警察から問い合わせが殺到しはじめた。あとからあとからおなじようなことを聞かれ、げんなりとしているのに、相手の警察署の担当は、まるでジョナサンのせいで余計な仕事が増えた、と言わんばかりの高圧な態度で接してくる。
ロボットやアンドロイドとしか仕事をせずに、生身の人間とのコミュニケーションがないがしろになっていて、どうしてもつっけんどんな対応になるのは、お互い様だというのはわかっていたが、それを毎日たてつづけに何人も受けていると、いい加減我慢の抑えがきかなくなる。
そして、今目の前にいるこの男、国際連邦軍から派遣されたという男——。
「国際連邦軍、内務課のブランドー。ジョージ・ブランドーだ。よろしく」
彼は自己紹介でそういいながら、とても信頼感に足るにこやかな笑顔を浮かべた。すこし細身の体躯、髪の毛をショートにまとめあげて、シャープにみえる演出をしている。今トレンドのトリプル・ブレストのスーツを着こなし、驚いたことにネクタイなどという古色めいたものをきりりと首元で締め上げている。
お堅い国家機関の、お堅い事務官というところだろうか——。
「ジョナサン、ディオ。忙しいところ時間を割いてもらってすまないね。それと『カバード』を使っての参加を許してくれたまえ。直接伺いたかったのだけど、わたしのほうの事情が許さなくてね」
そうなのだ——。
ジョナサンはそれも気に入らなかった。
この男は自分たちを呼び出しておきながら、自分は『素体』を使って遠隔からアンドロイドのからだでここに参加している。
だが、なによりも気に入らなかったのは——。
「ブランドーさん、どういうことです?。ここは病院の隔離ルームですよね。しかもご丁寧に『スペクトル遮幕』で、完全に電波や生体信号もシャットアウトしている。ふつうの聴取にここまで必要ですか?」
ジョナサンは喉元までこみあげていた不満をいきなりブランドーにむかって吐き出した。
「それに、ディオまで同席させているのは、おかしな話でしょう」
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