第307話 アル、大丈夫だ。レイを信頼して
ふと、レイのセラ・サターンの画面に目をもどすと、イオージャが追いかけてきたのがわかった。まわりに魔法少女を
「レイ。まずいぞ。逃げろ!」
アルの口から、つい大声がついてでた。ろくな武器も持たせられなかったという良心の呵責か、自信をもって整備した超絶縁体がもろくも打ち破られたことへの責任感か——。
「アル、大丈夫だ。レイを信頼して」
ヤマトが腕組みした姿勢を崩すことなく、アルを叱責した。
そのとき、魔法少女たちがなにやら奇声を、超音波のような声をあげるのが聞こえた。
「いけぇ」とも「つぶせぇ」とも聞こえるような奇妙な音。
そのとたん、イオージャが一直線にセラ・サターンにむかって突進してきた。姿形に似合わない重量級の体躯が揺れ、路面をおおきくゆさぶる。あの身体でぶつかられたら、ビルとの間に挟まれて、セラ・サターンは甚大な損傷をこうむるであろうことは容易に想像できた。
「レイ!」
おもわずアルが口走る。
ビルに貼り付いていたセラ・サターンが手を離した。力が抜けた脚が上半身を支えきれずに、その場にドンと尻餅をついた。と同時に、手前に落ちている
イオージャが座り込んだセラ・サターンに飛びかかろうとした瞬間、レイは
その刃先にはすでにセラ・サターンの頭から送り込まれた青いパルスが充填され、白く光っていた。
『
勢いこんできたイオージャは、目の前にふいに跳ね上がってきた飛び刃をかわせなかった。その衝撃に備えて、セラ・サターンが
イオージャを真正面から捉えていたカメラがおおおきく揺れる——。
と、そのまま大画面モニタの映像がとぎれた。すぐさまAIが別のカメラに切り替えてちがう角度からの映像をモニタへと映し出す。
それはセラ・サターンのメインカメラだった。
レイが突き上げた
「ちっ、すこしずれたか」
ヤマトが噛みしめた歯のあいだから、口惜しさを絞り出した。
イオージャがうなり声をあげ、うしろにたたらを踏んだ。その頬から
周りを飛んでいる魔法少女たちは予想外の展開にうろたえたのか、「ちゅーー」という奇声をあげて、右往左往するように飛び回りはじめた。
レイは手をゆるめなかった。
「いいぞ、レイ。いいアイデアじゃねぇか」
アルはレイの好判断に思わず、快哉を叫んだ。だが、そのアルの興奮と安堵の気持ちにレイは、キンキンに冷えた冷や水を浴びせかけてきた。
「アル、これで万策尽きたわ。次のときには別の武器を用意しておいて」
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